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第1章
<45話>終業式と墓参り
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「それでは皆さん、
有意義な夏休みを過ごして下さいね!
それと、キャンプに参加する人は、
事前指導がありますから、
体育館に集合して下さい。
では、さようなら!」
期末テストを何とか乗り越え
(予想していたほど悪くはなかった。
最も、よくも無かったが)
あれよあれよという間に、
今日はもう終業式だ。
担任のその挨拶を皮切りに、
続々と生徒達が教室を出て行く。
僕もバックを背負うと、
早々と教室を後にした。
目指すは図書室、超常現象研のアジト。
「おいっす、義経!
ホームルーム終わったのか、
おつかれさん。」
途中の階段で、
本多先輩に声をかけられた。
僕は軽く会釈をし、
「こんにちは、先輩。
不審者騒動とか惨殺事件の噂とか
出てましたけど、
結局キャンプやるんですね。」と返す。
「ああ、あれか。
あれな、もう解決したらしいぜ。
何でも、
丸焦げの超巨大ナメクジが、
昨日見つかったらしいからな。
ニュースでやってただろ?
惨殺事件の方は、
元々半分噂すらみたーなもんだしな。
つーわけで、今日から部活も再開、
キャンプもやるんだとさ。
しっかし、
怪物を焼き殺す怪物がいるんじゃあ、
正直世も末だなぁ。」
「・・・。」
まさか焼き殺したのが、
ウチのメンバーの身内です、
なんていうわけにもいかず、
僕は苦笑いを返した。
「それに、ウチ的には
今日の集会の内容の方が、
大問題なんじゃねえのか?
いくら自宅療養中で不登校とはいえ、
自身の学校の生徒が
行方不明なんて、
えらいことになったよなあ。
まあ、アタシはアイツ、
世界で一番嫌いだったから、
別にどうでもいいけどな。」
「あれ?
先輩嫌いなんですか?
あんなにイケメンなのに?」
「皮肉かよ、当たり前だろ。
アタシの可愛い後輩に、
濡れ衣着せるようなやつなんだぞ。」
そう、天原中学校は、
怪物騒動がひと段落した瞬間、
また新たな問題にぶつかった。
小早川宅が何者かに襲撃されたのだ。
事件が発覚したのは
今朝だったそうだが、
小早川の父親は無残な遺体で発見され、
小早川は誘拐された。
父親の司法解剖から、
死後1ヶ月は
たっていたらしい(先輩調べ)ので、
アイツが誘拐されたのも、
おそらくそれくらいだろう。
というか、
「何で発覚しなかったんでしょうか?
死体の件もそうですし、
小早川が誘拐された件も。」
先輩は吐き捨てるように言った。
「それだけいなかったってことだろ。
アイツらのことを、心から、
心配してくれる人が。
あ、そういえば
惨殺事件がどーたらこーたら
言われ始めたのも、
確か1か月前だったな。
案外アイツの父親を殺したのは、
その殺人鬼だったりすんじゃねーの?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
図書室に入ると、
やっぱりもうみんな集まっていた。
「うし!お前ら、
話を聞く準備はいいか?」
「はい!」
「はい!」
「はい!」
「うん。」
本多先輩の気合いの入った掛け声に、
僕、新井、隼人君、武蔵先輩が、
それに負けない大きさの声を返す。
「よし、みんな!
連絡した通り、
家には遅くなるって言って来たな!?
ご飯はいらないって言ってきたな!?
今回は長丁場になるぞ!」
「「「「はい!!」」」」
僕達が叫ぶと、
本多先輩は満足そうに
ウンウンと頷いた。
そして全員分の資料を配ると、
「さて、
今回のキャンプについてだが・・・。」
そこで先輩は僕に視線を向け、一言。
「義経、お前、北畠に説明したか?」
「ああ、はい。
頼まれてた分はやりましたけど。」
「そっか。
そんなら各自、今配布した
資料を読んでおくように。
日付は去年と同じ、
8月の10日から12日だからな、
くれぐれも忘れるなよ。
じゃあ、解散。」
一瞬の沈黙の後、部室中に声が響いた。
「「「「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『・・・あの女、
何がしたかったんだい?』
「聞くな・・・。
そう言う人なんだよ、あの人は。」
僕達は不要になった弁当と、
キャンプのしおりを抱えて、
トボトボと下校していた。
やれやれ、
遅くなる連絡が無駄になっちゃった。
「仕方ない、帰るか。」
『せっかく遅くなるって
言ったんだったら、
なんかついでに用事でもこなせば?』
「そんなこと言われても、
財布にはお金殆ど入ってないし、
特にしたいことも・・・。」
・・・待てよ。
「・・・そういえば、
最近行ってなかったな・・・。
フセのことも報告してないし・・・。」
僕は周りを見渡し、
公園に設置されていた時計を見る。
時刻は今、午前11時半前。
時間は十分すぎるほどある。
「いい機会だし、ついでに寄っとくか。
フセ、行きたいところがあるから、
ちょっと付き合ってよ。」
そう言って僕は、学校方面へ踵を返す。
『いいけど、どこ行くの?』
僕は少し間を置いて、言った。
「じいちゃんの墓参り。」
その時の自分の顔は、
当然見えないのだけれど、
多分、複雑な顔をしていたんだと思う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
祖父の、というより正確には、
義経家の墓のある天原霊園までは、
20分ほど歩けば着いた。
何回も来ているので、
流石にもう場所は覚えた。
僕は数ある墓石の中の1つ、
『義経家之墓』と彫られたものの前に
水入りのバケツと柄杓を持って立つ。
「・・・久しぶり、じいちゃん。
暑いよね。
ごめん、線香もお供物も、
無いんだけどさ。」
僕は柄杓で水をすくい、
墓石にバシャバシャとかける。
続いて周りの雑草を抜いてから、
静かに手を合わせた。
「・・・僕は元気でやってるよ。
なんか、
今凄いことになっちゃっててさ。
まさか自分の孫が、
柴犬に取り憑かれて
異能力者になるなんて、
流石のじいちゃんも、
予想できなかっただろ?
でも、楽しいよ。
いい先輩と、友人と、後輩に、
恵まれたからね。
そうそう、
異能力者の知り合いも
いっぱいできたんだよ?
少女探偵とか、錬金術師の修理屋とか
騎士になる後輩とか、幽霊とかさ。
ああ、幽霊はうるさかったから、
取り憑いてる印籠を、
家に置いてきちゃって、
今はいないけど・・・。」
しばらく、沈黙。
セミの声が妙にうるさい。
・・・何やってんだろ、僕。
「・・・帰ろう、フセ。
家で、
甚右衛門と平五郎が待ってるしね。」
僕は立ち上がり、墓から離れる。
『え?もういいの!?』
フセは大慌てでついてくる。
「うん、もういいんだよ。
だって本当はじいちゃんは、
あそこにはいないんだから。」
僕はバケツと柄杓を直し、
きた道を戻り始めた。
帰る途中、
道に、甲虫の死骸が転がっていた。
そしてもう少し行ったところにあった
バス停の長椅子に、
今度は、おそらく誰かが
置き忘れていったらしき、
ウサギのぬいぐるみが
ちょこんと座っていた。
野良猫か何かに悪戯されたのか、
布でできたその身は
ズタズタに引き裂かれ、
中からは綿が飛び出していて、
無造作にもぎ取られた
右腕(右前足?)が、
その側に転がっていた。
(・・・縁起悪いな。)
兎と甲虫のシンジュウと
ベラベラ話したことがある身としては、
それらはどうにも嫌な光景だった。
「しっかし、暑いなぁ、
今年の夏は・・・。
じいちゃんが生きてた頃、
キンキンに冷えた特製ジュースとか、
飲ませてもらってたのが
懐かしい・・・。」
僕達はジリジリと照りつける太陽の下、
汗を拭いながら、帰宅を急いだ。
有意義な夏休みを過ごして下さいね!
それと、キャンプに参加する人は、
事前指導がありますから、
体育館に集合して下さい。
では、さようなら!」
期末テストを何とか乗り越え
(予想していたほど悪くはなかった。
最も、よくも無かったが)
あれよあれよという間に、
今日はもう終業式だ。
担任のその挨拶を皮切りに、
続々と生徒達が教室を出て行く。
僕もバックを背負うと、
早々と教室を後にした。
目指すは図書室、超常現象研のアジト。
「おいっす、義経!
ホームルーム終わったのか、
おつかれさん。」
途中の階段で、
本多先輩に声をかけられた。
僕は軽く会釈をし、
「こんにちは、先輩。
不審者騒動とか惨殺事件の噂とか
出てましたけど、
結局キャンプやるんですね。」と返す。
「ああ、あれか。
あれな、もう解決したらしいぜ。
何でも、
丸焦げの超巨大ナメクジが、
昨日見つかったらしいからな。
ニュースでやってただろ?
惨殺事件の方は、
元々半分噂すらみたーなもんだしな。
つーわけで、今日から部活も再開、
キャンプもやるんだとさ。
しっかし、
怪物を焼き殺す怪物がいるんじゃあ、
正直世も末だなぁ。」
「・・・。」
まさか焼き殺したのが、
ウチのメンバーの身内です、
なんていうわけにもいかず、
僕は苦笑いを返した。
「それに、ウチ的には
今日の集会の内容の方が、
大問題なんじゃねえのか?
いくら自宅療養中で不登校とはいえ、
自身の学校の生徒が
行方不明なんて、
えらいことになったよなあ。
まあ、アタシはアイツ、
世界で一番嫌いだったから、
別にどうでもいいけどな。」
「あれ?
先輩嫌いなんですか?
あんなにイケメンなのに?」
「皮肉かよ、当たり前だろ。
アタシの可愛い後輩に、
濡れ衣着せるようなやつなんだぞ。」
そう、天原中学校は、
怪物騒動がひと段落した瞬間、
また新たな問題にぶつかった。
小早川宅が何者かに襲撃されたのだ。
事件が発覚したのは
今朝だったそうだが、
小早川の父親は無残な遺体で発見され、
小早川は誘拐された。
父親の司法解剖から、
死後1ヶ月は
たっていたらしい(先輩調べ)ので、
アイツが誘拐されたのも、
おそらくそれくらいだろう。
というか、
「何で発覚しなかったんでしょうか?
死体の件もそうですし、
小早川が誘拐された件も。」
先輩は吐き捨てるように言った。
「それだけいなかったってことだろ。
アイツらのことを、心から、
心配してくれる人が。
あ、そういえば
惨殺事件がどーたらこーたら
言われ始めたのも、
確か1か月前だったな。
案外アイツの父親を殺したのは、
その殺人鬼だったりすんじゃねーの?」
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図書室に入ると、
やっぱりもうみんな集まっていた。
「うし!お前ら、
話を聞く準備はいいか?」
「はい!」
「はい!」
「はい!」
「うん。」
本多先輩の気合いの入った掛け声に、
僕、新井、隼人君、武蔵先輩が、
それに負けない大きさの声を返す。
「よし、みんな!
連絡した通り、
家には遅くなるって言って来たな!?
ご飯はいらないって言ってきたな!?
今回は長丁場になるぞ!」
「「「「はい!!」」」」
僕達が叫ぶと、
本多先輩は満足そうに
ウンウンと頷いた。
そして全員分の資料を配ると、
「さて、
今回のキャンプについてだが・・・。」
そこで先輩は僕に視線を向け、一言。
「義経、お前、北畠に説明したか?」
「ああ、はい。
頼まれてた分はやりましたけど。」
「そっか。
そんなら各自、今配布した
資料を読んでおくように。
日付は去年と同じ、
8月の10日から12日だからな、
くれぐれも忘れるなよ。
じゃあ、解散。」
一瞬の沈黙の後、部室中に声が響いた。
「「「「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」
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『・・・あの女、
何がしたかったんだい?』
「聞くな・・・。
そう言う人なんだよ、あの人は。」
僕達は不要になった弁当と、
キャンプのしおりを抱えて、
トボトボと下校していた。
やれやれ、
遅くなる連絡が無駄になっちゃった。
「仕方ない、帰るか。」
『せっかく遅くなるって
言ったんだったら、
なんかついでに用事でもこなせば?』
「そんなこと言われても、
財布にはお金殆ど入ってないし、
特にしたいことも・・・。」
・・・待てよ。
「・・・そういえば、
最近行ってなかったな・・・。
フセのことも報告してないし・・・。」
僕は周りを見渡し、
公園に設置されていた時計を見る。
時刻は今、午前11時半前。
時間は十分すぎるほどある。
「いい機会だし、ついでに寄っとくか。
フセ、行きたいところがあるから、
ちょっと付き合ってよ。」
そう言って僕は、学校方面へ踵を返す。
『いいけど、どこ行くの?』
僕は少し間を置いて、言った。
「じいちゃんの墓参り。」
その時の自分の顔は、
当然見えないのだけれど、
多分、複雑な顔をしていたんだと思う。
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祖父の、というより正確には、
義経家の墓のある天原霊園までは、
20分ほど歩けば着いた。
何回も来ているので、
流石にもう場所は覚えた。
僕は数ある墓石の中の1つ、
『義経家之墓』と彫られたものの前に
水入りのバケツと柄杓を持って立つ。
「・・・久しぶり、じいちゃん。
暑いよね。
ごめん、線香もお供物も、
無いんだけどさ。」
僕は柄杓で水をすくい、
墓石にバシャバシャとかける。
続いて周りの雑草を抜いてから、
静かに手を合わせた。
「・・・僕は元気でやってるよ。
なんか、
今凄いことになっちゃっててさ。
まさか自分の孫が、
柴犬に取り憑かれて
異能力者になるなんて、
流石のじいちゃんも、
予想できなかっただろ?
でも、楽しいよ。
いい先輩と、友人と、後輩に、
恵まれたからね。
そうそう、
異能力者の知り合いも
いっぱいできたんだよ?
少女探偵とか、錬金術師の修理屋とか
騎士になる後輩とか、幽霊とかさ。
ああ、幽霊はうるさかったから、
取り憑いてる印籠を、
家に置いてきちゃって、
今はいないけど・・・。」
しばらく、沈黙。
セミの声が妙にうるさい。
・・・何やってんだろ、僕。
「・・・帰ろう、フセ。
家で、
甚右衛門と平五郎が待ってるしね。」
僕は立ち上がり、墓から離れる。
『え?もういいの!?』
フセは大慌てでついてくる。
「うん、もういいんだよ。
だって本当はじいちゃんは、
あそこにはいないんだから。」
僕はバケツと柄杓を直し、
きた道を戻り始めた。
帰る途中、
道に、甲虫の死骸が転がっていた。
そしてもう少し行ったところにあった
バス停の長椅子に、
今度は、おそらく誰かが
置き忘れていったらしき、
ウサギのぬいぐるみが
ちょこんと座っていた。
野良猫か何かに悪戯されたのか、
布でできたその身は
ズタズタに引き裂かれ、
中からは綿が飛び出していて、
無造作にもぎ取られた
右腕(右前足?)が、
その側に転がっていた。
(・・・縁起悪いな。)
兎と甲虫のシンジュウと
ベラベラ話したことがある身としては、
それらはどうにも嫌な光景だった。
「しっかし、暑いなぁ、
今年の夏は・・・。
じいちゃんが生きてた頃、
キンキンに冷えた特製ジュースとか、
飲ませてもらってたのが
懐かしい・・・。」
僕達はジリジリと照りつける太陽の下、
汗を拭いながら、帰宅を急いだ。
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