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第1章
<55話>怒りの少年、そして『継承』
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片足の3分の1を失った夏さんを
覗き込むようにして見下ろしながら、
仮面はケラケラと笑う。
「おいオイ、どウシたよ。
俺をコロスんじゃないのか?
ほラ、立てよ、ほーラ。」
夏さんの形相が、
より怒りに満ちたものへと変わる。
「お前、殺す!殺す!
よくもあの子を!葉月を!
砕いて殺す引き裂いて殺す!
殺す殺す殺す!!」
夏さんは転がったままで
残った左足で地面を蹴り、
ヤツの前から消える。
「・・・奪っタのはホンの一部だケド、
読み通リ、手負イの今ノアンたなら、
充分対応デキルな。」
その言葉が僕の耳に届いたのは、
仮面の背中から出た何本もの触手が、
夏さんに食らいついた時だった。
「・・・が・・・!!」
骨を粉砕する音が響く。
「う・・・あっ・・・がぁぁぁ!!」
この世のものとは思えないほどの
叫び声を上げたあと、
夏さんはその場に崩れ落ちた。
「・・・命令さエなケリゃ、
全部喰イタいとコろナんだけどなァ。」
『まあ、仕方あるまいよ。
そんだけ奪えば、
とりあえず充分じゃろ。」
仮面と鼠がそう言って笑い合うのを、
僕は青ざめた顔で眺めていた。
かろうじて動いた手で、
電源を入れた携帯を眼前に持ってくる。
「宿舎側は全員生存!」
羽柴さんからのメッセージだった。
三好さんはまだ来る気配が無い。
ここでアイツを足止めしなければ、
確実に宿舎は血の海と化すだろう。
そんな時だった。
「・・・で、次ハ、
そコニ隠れテるお前カ?」
フセが舌打ちする。
『最初から気付かれてたのか。』
「広場と反対方向の道を使って、
下山してけださい。」
僕はメッセージに返信する。
手が震えて若干書き損じたが、
多分伝わるだろう。
危険な賭けだけど、
夏さんとの戦いで、
かなりの触手を戻していたから、
今なら網は手薄だろうし、
留まっていたら確実にみんな死ぬ。
・・・止めなきゃ。
ここで、
僕が命に代えてでも止めなければ、
斯波や夏さんを助けなければ、
確実に事態は悪化する。
足止めをしなければ、
みんな食い殺されるだろうし、
それに、専門家の夏さんは、
同じようなやつと、
何回も戦った、と言っていた。
多分、あの人の存在は、
シンジュウ犯罪の、
抑止力となっているのだろう。
もし今夏さんが殺されたら、
最悪こいつと同じように、
シンジュウの悪用を考える奴らが、
天敵がいなくなったことで、
水を得た魚の如く、
嬉々として活動を開始する恐れがある。
そうなったら、
もう天原市云々なんてもんじゃ無い。
それに斯波も強力な加護を持っている。
今後のこういう犯罪の対処に、
確実に一役買うに違いない。
今、死なせるわけにはいかない。
最悪でも、
斯波と夏さんだけは逃さなくては。
・・・だって、今この場で、
最も死んでいい人間は、
紛れもなく、僕なんだから。
僕は、
甚右衛門の印籠を木の影に隠して
震える足を、ゆっくりと前に進めた。
「・・・最初から、気付いてたのか。」
「あア。」
仮面は、夏さんに触手を伸ばす。
「・・・させない!」
鷹が悠然と立ちはだかるが焼け石に水、
あっさり吹き飛ばされて、
その口は夏さんをくわえあげた。
次に、斯波の入った触手の口を開ける。
「さあテ、取引とイコウか。
片方助ケてやるヨ。」
僕は、答えない。
沈黙が10秒程続く。
「アれ、選べナいノカぁ?
しょうガナいなァ。
じゃア選択肢追加。
もウ1つは・・・。」
「僕の命だろ。」
僕は吐き捨てた。
今までプラプラと
僕を嘲笑うように揺れていた、
触手の動きが止まる。
「もう気付いてるんだよ。
いい加減その悪趣味な仮面外せよ。
・・・小早川。」
顔はわからなくても、声でわかる。
聞くだけでも身体がすくむ、その声で。
仮面が素顔を露わにする。
不気味なその装飾品の下にあったのは、
僕が最も憎んだ相手、
小早川一馬の笑顔だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あの人カラ、
力ヲ貰っテカら、
ズッと、この日ヲ心待ちにシてた。」
小早川は仮面を踏み砕きながら、
狂気に満ちた目で言う。
「お前二、復讐デきる日をナ!」
「・・・お前のお父さんを殺したの、
お前か?」
ヤツは笑って頷く。
「アあ、ソウだけド。
それガどうシタ?」
僕は襲ってきた
1本の触手を切り飛ばす。
「・・・ふざけるなよ。
自分の父親だろ!?」
小早川は肩をすくめる。
「アイつ、議員クビにナッて、
工場勤務ダったんダゼ?
生きテたって、
何の役ニモタタねぇジャん。」
『・・・赤斗、何言ったって無駄だよ。
こいつと君とは、
根本的な考え方が違う。』
・・・その通りだ。
こいつは、人の生き死にとか、
悲しみ苦しみとかを、
何とも思っちゃいない。
自分の損得が、判断の全ての、
狂的合理主義者。
僕は無言で『世離』を引きずり出し、
抜刀した剣先を突きつける。
「斯波を返せ、夏さんを返せ。
そして、自首しろ。」
小早川は肩をすくめる。
「でナキャ?」
「お前の首を切り飛ばす!」
僕は猛然と小早川に突進する。
しかし、五歩ほど進んだところで、
超高速の触手の、
鞭のようにしなる打撃にぶっ飛ばされ、
木に叩きつけられた。
悲鳴を上げる。
ひょっとしたら折れたかもしれない。
でもそんなこと言ってられない。
「う、わぁぁぁぁ!!!」
僕は無理やり身体を起こして、
再度突進を開始する。
触手を1本避ける。2本切断する。
5本避ける。
9本目で僕とフセは捕まった。
脇腹に噛み付かれ、
刃物が食い込むような痛みが襲う。
「うううう、がぁ!!」
渾身の力で刀を振り下ろし、
触手に突き立てる。
非物質化し、透過したことで、
僕は地面に落ちた矢先、
再び地面を蹴り飛ばして前に進む。
小早川の周りにある触手が、
やおら僕に向けてその口を開けた。
と同時に、熱風と共に火炎が放たれる。
「『斬馬の型』!」
前に凛さんにされた時のように、
僕は刀を地面に突き刺して、
盾代わりにして炎を防ぐ。
しかし、
「ぎゃぁぁ!!」
腕からの尋常じゃない痛みに、
僕は悲鳴を上げる。
炎に紛れていた触手が、
僕の右腕に噛み付いたのだ。
僕は咄嗟に刀を左手に持ち替えて、
触手を切り落とすが、
それでもかなり深くもっていかれた。
不幸中の幸い、神経は
やられていないみたいだけれど、
刀を振り回すには深すぎる。
こんな状況じゃなけりゃ、
痛みでのたうちまわってるレベルだ。
『赤斗、よせ!
君が勝てる相手じゃない!』
「うるさい!黙ってろ!」
火炎の放射が止まる。
『世離』を元の形に戻して、
僕は渾身の力で地面を蹴り飛ばす。
自身の負担を一切考えないその行動で、
僕は小早川との距離を一気に詰め、
「おらぁぁぁ!!」
ヤツの首に向けて刀を振るう。
しかし、その時にはもう、
小早川は既にそこにはいなかった。
「読んでたシ、ツーかそれ以前二、
おっっっっっっソ。」
僕の斬撃が空を切ったのと同時に、
背後からそんな声が聞こえる。
そして脇腹に放たれる、強烈な蹴り。
僕は吹き飛ばされて、
キャンプ運営が運び込んだのであろう、
トラックに激突した。
重さ1tはあろうかというトラックは、
あっさりと横倒しになった。
「ゴミのくせに俺を
アンナめにアわせヤガって・・・。
ほら、起き上がれよ、
カカッテこいよ?
ただジャ殺サネぇ、
嬲って、嬲って、嬲って、嬲って嬲って嬲って嬲って嬲って嬲って嬲って!!
殺してヤル!」
僕はボロボロの身体を
無理やり引きずるようにして、
また突進する・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
似たようなことを、
3分ほどだろうか、繰り返したのは。
僕とフセは完全に地面に倒れ込んだ。
「おいおい、おいおいオイオイ、
まさカ、コレで終ワリとか、
言わネえよナア?」
小早川は、
ヘラヘラと笑いながら僕を見下す。
この3分間、
攻撃することはおろか、
半径5m以内に
入ることすらできなかった。
考えてみればわかることだ。
小早川の捕食能力。
凛さんの炎。
斯波の記憶読み。
夏さんの加速。
この4つの加護が合わさった、
キメラ状態の今の小早川に、
僕がかなうわけが無いのだ。
僕がまだ死んでいないのは、
アイツが僕を痛めつけるのを
楽しんでいるからで、
そうでなければ、
アイツは2秒もあれば、
僕を殺すことができるだろう。
焼かれたところが痛い。
木に叩きつけられたところが痛い。
噛み付かれたところが痛い。
殴打されたところが痛い。
全身で出血していない範囲の方が狭い。
でも、だからって、諦めたら人が死ぬ。
「・・・当たり、前、だろ。
僕は、まだ、やれる。」
血塗れの身体を起こす。
視界が霞む。
音がほとんど聞こえない。
触覚も弱くなってきた。
口の中の血の味が妙に強い。
だけど、立ち向かわなければ。
『赤斗・・・。
もういい、やめろ、やめてくれ。
今なら、まだ間に合う。
私に考えがある、だから・・・。』
「・・・引けって、いうの?」
僕はかすれる声を発する。
「引いたら、
きっと斯波や夏さんは死ぬ・・・。
僕は、誰も、殺したくない!」
僕がそう叫んだ、その時だった。
「・・・もういいよ。」
ポツリと、呟く声が聞こえた。
その声の主は、
「・・・斯波、意識・・・。」
触手に絡めとられている斯波は、
ピノの帽子を握りしめながら、
弱々しい声で話し出した。
「あ、ありがとう、義経君。
でも、もう・・・いいから。
お願い・・・だから、逃げて?
私は、大丈夫・・・だから。」
そう言って、無理やり笑顔を作る。
嘘だ、大丈夫なわけない。
声が震えて、目に涙を溜めて、
自分だって気が狂いそうな程怖いのに、
それなのに、それなのに、
・・・そんな顔、向けないでくれ。
「・・・大丈夫、必ず助けるから。」
「ダメだよ、逃げてよ。」
「・・・嫌だ、逃げない。」
「・・・逃げて。」
「絶対に・・・嫌だ。」
「逃げろって言ってんじゃん!」
突如として斯波の怒鳴り声が響いた。
僕やフセ、そして小早川や鼠も、
一瞬たじろぐ。
「勝てないのわかってるでしょ!?
だったらもう何やったって一緒じゃん!
捨てなくていい命を捨てるのを、
かっこいいとでも思ってるの!?
それで相手が喜ぶと思ってるの!?
ふざけるな!」
空気が震えるような
怒鳴り声を出した後、
斯波はまた顔を悲しみに歪ませて、
「・・・私、嫌だよ。
友達が死んでいくの見るの。」
・・・動け、動けよ、僕の身体。
目の前で、
知り合いの女の子が泣いてんだぞ。
ボロボロ泣きながら、
それでも僕を守ろうとしてんだぞ。
動け、動けよ。
動いてくれよ頼むから!
「ヘえ、そウカ、
お前ラそういう関係ナノか。」
不意に小早川がそう言った。
と同時に、触手の1つが、
斯波に近づいていく。
「コイツは傷つケンなって
言わレてルケど、
まあ、1本くらいならいいだろ。」
・・・まさか。
夏さんも感づいたらしく、
必死にもがくが、
直後に触手からの攻撃を受け、
また動かなくなった。
「よせ、やめろ。
僕を狙えばいいだろ、僕を!」
触手は僕の叫びを意に介することなく、
斯波の右手の人差し指を噛みちぎった。
この世のものとは思えない
悲鳴が響く。
「ホれ、起きロよ。
もう一本いくゼ?」
「貴様ぁぁぁぁぁ!!」
僕は身体の状態を忘れたように
小早川に突進する。
負担を一切考えないその行動で、
僕は自身の射程に
奴を入れることに成功した。
「ぁぁあぁあぁ!!!」
渾身の力で僕は『世離』を
小早川に向かって振り下ろし、
それは小早川の頭頂部に直撃した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・お前、ミテなかッタのか?
俺ノ再生回数は、
まだたっプリ残っテんだゼ?」
脳天がパックリと割れたまま、
小早川は笑う。
『馬鹿じゃのう。
あの子の忠告通り、
さっさと逃げればよかったものを。』
その瞬間、
刀に触手が食らいつき、
力が入ったのが伝わる。
そして、『世離』は、
粉々に噛み砕かれた。
「・・・そん、な・・・!」
僕の胸から、万年筆が滑り落ちる。
「ホラ、振り出シニ戻レ。」
触手が僕を吹き飛ばす。
しかしそれは、
さっきよりずっと強い力だった。
僕は飛ぶ、飛ぶ、飛ぶ、そして、
突出した木の枝に、突き刺さった。
幸か不幸か、
心臓とは逆の位置の胸だったけれど、
これだけ出血していれば、
死ぬのは時間の問題だろう。
今まで経験したことのない痛みが、
僕の身体を駆け巡り、
その魂の消滅を予告する。
「嫌ぁぁぁぁぁぁ!!」
斯波の悲鳴も、
「あリャ、やっチマった。
もう少シ、
楽しミタカッタンだけどナぁ。」
小早川のそんな声も、
次第に聞こえなくなる。
これ、死ぬよな・・・僕。
ああ、フセが何かしてる。
けど、
それももうはっきりとはわからない。
こんなところで
助けるって言ったのに、
結局手も足も出ずに
嫌だ
死にたくない
せめて、アイツを、倒してから
斯波を、夏さんを、天原市を
守ってから
意識が薄れていく
そして、消える。
『行け!<真打>!』
突然、
僕の胸に何かが刺さったのがわかる。
その瞬間、風前の灯だった僕の意識は、
急に明瞭になった。
『おい赤斗!
まだ大丈夫だな!
しっかりしろ!おい!』
微かにしか聞こえなかった
フセの声が、
突然はっきりと聞こえ出した。
ただ、妙なのは、
その声が外からではなく、
身体の中から聞こえていること。
『おい!赤斗!
返事しろ!おい!』
「い、一体、
何がどうなってるんだ!?
僕に何をしたんだ!?」
『手っ取り早く説明する!
質問は受け付けない!
後でもう少し詳しくやってやるから!』
フセが内側から怒鳴り、話し出す。
『1つ!
この万年筆、『世離・真打』は、
本来は人間に扱えないような
シンジュウの憑依を可能にする、
強制憑依補助装置だ!
2つ!
私の本当の加護は、
憑依することで発揮される!
3つ!
私の憑依は、慣れるまでは、
宿り主の意識が極限まで薄れた状態、
それこそ死にかけでもなければ
することはできない!』
頭の中の声が、
どんどん大きくなる。
自分でもおかしなことだと思うけれど、
感覚で、
フセと混ざり合っていくのがわかる。
『とりあえずは成功、<継承>だ!
私の真髄は剣士じゃない!
身体を借りるぜ、赤斗!
今から、君が新たな『旅人』だ!
目を覚ませ、君は死なない!
アイツを倒して、みんなを救うよ!
私の力を、君にくれてやる!』
薄れていた意識が、覚醒する。
身体中に力が溢れる。
ダメになったはずの右腕は、
みるみるうちに治っていく。
身体中についた傷が、
塞がっていくのがわかる。
体が勝手に動き始める。
刺さった木の枝をへし折って、
身体から引っこ抜く。
傷は、あっという間に塞がった。
『僕』は、
その燃えるように赤く染まった長髪
をなびかせながら、
小早川の方を睨む。
「『さあ、
第2ラウンドと行こうか。』」
覗き込むようにして見下ろしながら、
仮面はケラケラと笑う。
「おいオイ、どウシたよ。
俺をコロスんじゃないのか?
ほラ、立てよ、ほーラ。」
夏さんの形相が、
より怒りに満ちたものへと変わる。
「お前、殺す!殺す!
よくもあの子を!葉月を!
砕いて殺す引き裂いて殺す!
殺す殺す殺す!!」
夏さんは転がったままで
残った左足で地面を蹴り、
ヤツの前から消える。
「・・・奪っタのはホンの一部だケド、
読み通リ、手負イの今ノアンたなら、
充分対応デキルな。」
その言葉が僕の耳に届いたのは、
仮面の背中から出た何本もの触手が、
夏さんに食らいついた時だった。
「・・・が・・・!!」
骨を粉砕する音が響く。
「う・・・あっ・・・がぁぁぁ!!」
この世のものとは思えないほどの
叫び声を上げたあと、
夏さんはその場に崩れ落ちた。
「・・・命令さエなケリゃ、
全部喰イタいとコろナんだけどなァ。」
『まあ、仕方あるまいよ。
そんだけ奪えば、
とりあえず充分じゃろ。」
仮面と鼠がそう言って笑い合うのを、
僕は青ざめた顔で眺めていた。
かろうじて動いた手で、
電源を入れた携帯を眼前に持ってくる。
「宿舎側は全員生存!」
羽柴さんからのメッセージだった。
三好さんはまだ来る気配が無い。
ここでアイツを足止めしなければ、
確実に宿舎は血の海と化すだろう。
そんな時だった。
「・・・で、次ハ、
そコニ隠れテるお前カ?」
フセが舌打ちする。
『最初から気付かれてたのか。』
「広場と反対方向の道を使って、
下山してけださい。」
僕はメッセージに返信する。
手が震えて若干書き損じたが、
多分伝わるだろう。
危険な賭けだけど、
夏さんとの戦いで、
かなりの触手を戻していたから、
今なら網は手薄だろうし、
留まっていたら確実にみんな死ぬ。
・・・止めなきゃ。
ここで、
僕が命に代えてでも止めなければ、
斯波や夏さんを助けなければ、
確実に事態は悪化する。
足止めをしなければ、
みんな食い殺されるだろうし、
それに、専門家の夏さんは、
同じようなやつと、
何回も戦った、と言っていた。
多分、あの人の存在は、
シンジュウ犯罪の、
抑止力となっているのだろう。
もし今夏さんが殺されたら、
最悪こいつと同じように、
シンジュウの悪用を考える奴らが、
天敵がいなくなったことで、
水を得た魚の如く、
嬉々として活動を開始する恐れがある。
そうなったら、
もう天原市云々なんてもんじゃ無い。
それに斯波も強力な加護を持っている。
今後のこういう犯罪の対処に、
確実に一役買うに違いない。
今、死なせるわけにはいかない。
最悪でも、
斯波と夏さんだけは逃さなくては。
・・・だって、今この場で、
最も死んでいい人間は、
紛れもなく、僕なんだから。
僕は、
甚右衛門の印籠を木の影に隠して
震える足を、ゆっくりと前に進めた。
「・・・最初から、気付いてたのか。」
「あア。」
仮面は、夏さんに触手を伸ばす。
「・・・させない!」
鷹が悠然と立ちはだかるが焼け石に水、
あっさり吹き飛ばされて、
その口は夏さんをくわえあげた。
次に、斯波の入った触手の口を開ける。
「さあテ、取引とイコウか。
片方助ケてやるヨ。」
僕は、答えない。
沈黙が10秒程続く。
「アれ、選べナいノカぁ?
しょうガナいなァ。
じゃア選択肢追加。
もウ1つは・・・。」
「僕の命だろ。」
僕は吐き捨てた。
今までプラプラと
僕を嘲笑うように揺れていた、
触手の動きが止まる。
「もう気付いてるんだよ。
いい加減その悪趣味な仮面外せよ。
・・・小早川。」
顔はわからなくても、声でわかる。
聞くだけでも身体がすくむ、その声で。
仮面が素顔を露わにする。
不気味なその装飾品の下にあったのは、
僕が最も憎んだ相手、
小早川一馬の笑顔だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あの人カラ、
力ヲ貰っテカら、
ズッと、この日ヲ心待ちにシてた。」
小早川は仮面を踏み砕きながら、
狂気に満ちた目で言う。
「お前二、復讐デきる日をナ!」
「・・・お前のお父さんを殺したの、
お前か?」
ヤツは笑って頷く。
「アあ、ソウだけド。
それガどうシタ?」
僕は襲ってきた
1本の触手を切り飛ばす。
「・・・ふざけるなよ。
自分の父親だろ!?」
小早川は肩をすくめる。
「アイつ、議員クビにナッて、
工場勤務ダったんダゼ?
生きテたって、
何の役ニモタタねぇジャん。」
『・・・赤斗、何言ったって無駄だよ。
こいつと君とは、
根本的な考え方が違う。』
・・・その通りだ。
こいつは、人の生き死にとか、
悲しみ苦しみとかを、
何とも思っちゃいない。
自分の損得が、判断の全ての、
狂的合理主義者。
僕は無言で『世離』を引きずり出し、
抜刀した剣先を突きつける。
「斯波を返せ、夏さんを返せ。
そして、自首しろ。」
小早川は肩をすくめる。
「でナキャ?」
「お前の首を切り飛ばす!」
僕は猛然と小早川に突進する。
しかし、五歩ほど進んだところで、
超高速の触手の、
鞭のようにしなる打撃にぶっ飛ばされ、
木に叩きつけられた。
悲鳴を上げる。
ひょっとしたら折れたかもしれない。
でもそんなこと言ってられない。
「う、わぁぁぁぁ!!!」
僕は無理やり身体を起こして、
再度突進を開始する。
触手を1本避ける。2本切断する。
5本避ける。
9本目で僕とフセは捕まった。
脇腹に噛み付かれ、
刃物が食い込むような痛みが襲う。
「うううう、がぁ!!」
渾身の力で刀を振り下ろし、
触手に突き立てる。
非物質化し、透過したことで、
僕は地面に落ちた矢先、
再び地面を蹴り飛ばして前に進む。
小早川の周りにある触手が、
やおら僕に向けてその口を開けた。
と同時に、熱風と共に火炎が放たれる。
「『斬馬の型』!」
前に凛さんにされた時のように、
僕は刀を地面に突き刺して、
盾代わりにして炎を防ぐ。
しかし、
「ぎゃぁぁ!!」
腕からの尋常じゃない痛みに、
僕は悲鳴を上げる。
炎に紛れていた触手が、
僕の右腕に噛み付いたのだ。
僕は咄嗟に刀を左手に持ち替えて、
触手を切り落とすが、
それでもかなり深くもっていかれた。
不幸中の幸い、神経は
やられていないみたいだけれど、
刀を振り回すには深すぎる。
こんな状況じゃなけりゃ、
痛みでのたうちまわってるレベルだ。
『赤斗、よせ!
君が勝てる相手じゃない!』
「うるさい!黙ってろ!」
火炎の放射が止まる。
『世離』を元の形に戻して、
僕は渾身の力で地面を蹴り飛ばす。
自身の負担を一切考えないその行動で、
僕は小早川との距離を一気に詰め、
「おらぁぁぁ!!」
ヤツの首に向けて刀を振るう。
しかし、その時にはもう、
小早川は既にそこにはいなかった。
「読んでたシ、ツーかそれ以前二、
おっっっっっっソ。」
僕の斬撃が空を切ったのと同時に、
背後からそんな声が聞こえる。
そして脇腹に放たれる、強烈な蹴り。
僕は吹き飛ばされて、
キャンプ運営が運び込んだのであろう、
トラックに激突した。
重さ1tはあろうかというトラックは、
あっさりと横倒しになった。
「ゴミのくせに俺を
アンナめにアわせヤガって・・・。
ほら、起き上がれよ、
カカッテこいよ?
ただジャ殺サネぇ、
嬲って、嬲って、嬲って、嬲って嬲って嬲って嬲って嬲って嬲って嬲って!!
殺してヤル!」
僕はボロボロの身体を
無理やり引きずるようにして、
また突進する・・・。
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似たようなことを、
3分ほどだろうか、繰り返したのは。
僕とフセは完全に地面に倒れ込んだ。
「おいおい、おいおいオイオイ、
まさカ、コレで終ワリとか、
言わネえよナア?」
小早川は、
ヘラヘラと笑いながら僕を見下す。
この3分間、
攻撃することはおろか、
半径5m以内に
入ることすらできなかった。
考えてみればわかることだ。
小早川の捕食能力。
凛さんの炎。
斯波の記憶読み。
夏さんの加速。
この4つの加護が合わさった、
キメラ状態の今の小早川に、
僕がかなうわけが無いのだ。
僕がまだ死んでいないのは、
アイツが僕を痛めつけるのを
楽しんでいるからで、
そうでなければ、
アイツは2秒もあれば、
僕を殺すことができるだろう。
焼かれたところが痛い。
木に叩きつけられたところが痛い。
噛み付かれたところが痛い。
殴打されたところが痛い。
全身で出血していない範囲の方が狭い。
でも、だからって、諦めたら人が死ぬ。
「・・・当たり、前、だろ。
僕は、まだ、やれる。」
血塗れの身体を起こす。
視界が霞む。
音がほとんど聞こえない。
触覚も弱くなってきた。
口の中の血の味が妙に強い。
だけど、立ち向かわなければ。
『赤斗・・・。
もういい、やめろ、やめてくれ。
今なら、まだ間に合う。
私に考えがある、だから・・・。』
「・・・引けって、いうの?」
僕はかすれる声を発する。
「引いたら、
きっと斯波や夏さんは死ぬ・・・。
僕は、誰も、殺したくない!」
僕がそう叫んだ、その時だった。
「・・・もういいよ。」
ポツリと、呟く声が聞こえた。
その声の主は、
「・・・斯波、意識・・・。」
触手に絡めとられている斯波は、
ピノの帽子を握りしめながら、
弱々しい声で話し出した。
「あ、ありがとう、義経君。
でも、もう・・・いいから。
お願い・・・だから、逃げて?
私は、大丈夫・・・だから。」
そう言って、無理やり笑顔を作る。
嘘だ、大丈夫なわけない。
声が震えて、目に涙を溜めて、
自分だって気が狂いそうな程怖いのに、
それなのに、それなのに、
・・・そんな顔、向けないでくれ。
「・・・大丈夫、必ず助けるから。」
「ダメだよ、逃げてよ。」
「・・・嫌だ、逃げない。」
「・・・逃げて。」
「絶対に・・・嫌だ。」
「逃げろって言ってんじゃん!」
突如として斯波の怒鳴り声が響いた。
僕やフセ、そして小早川や鼠も、
一瞬たじろぐ。
「勝てないのわかってるでしょ!?
だったらもう何やったって一緒じゃん!
捨てなくていい命を捨てるのを、
かっこいいとでも思ってるの!?
それで相手が喜ぶと思ってるの!?
ふざけるな!」
空気が震えるような
怒鳴り声を出した後、
斯波はまた顔を悲しみに歪ませて、
「・・・私、嫌だよ。
友達が死んでいくの見るの。」
・・・動け、動けよ、僕の身体。
目の前で、
知り合いの女の子が泣いてんだぞ。
ボロボロ泣きながら、
それでも僕を守ろうとしてんだぞ。
動け、動けよ。
動いてくれよ頼むから!
「ヘえ、そウカ、
お前ラそういう関係ナノか。」
不意に小早川がそう言った。
と同時に、触手の1つが、
斯波に近づいていく。
「コイツは傷つケンなって
言わレてルケど、
まあ、1本くらいならいいだろ。」
・・・まさか。
夏さんも感づいたらしく、
必死にもがくが、
直後に触手からの攻撃を受け、
また動かなくなった。
「よせ、やめろ。
僕を狙えばいいだろ、僕を!」
触手は僕の叫びを意に介することなく、
斯波の右手の人差し指を噛みちぎった。
この世のものとは思えない
悲鳴が響く。
「ホれ、起きロよ。
もう一本いくゼ?」
「貴様ぁぁぁぁぁ!!」
僕は身体の状態を忘れたように
小早川に突進する。
負担を一切考えないその行動で、
僕は自身の射程に
奴を入れることに成功した。
「ぁぁあぁあぁ!!!」
渾身の力で僕は『世離』を
小早川に向かって振り下ろし、
それは小早川の頭頂部に直撃した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・お前、ミテなかッタのか?
俺ノ再生回数は、
まだたっプリ残っテんだゼ?」
脳天がパックリと割れたまま、
小早川は笑う。
『馬鹿じゃのう。
あの子の忠告通り、
さっさと逃げればよかったものを。』
その瞬間、
刀に触手が食らいつき、
力が入ったのが伝わる。
そして、『世離』は、
粉々に噛み砕かれた。
「・・・そん、な・・・!」
僕の胸から、万年筆が滑り落ちる。
「ホラ、振り出シニ戻レ。」
触手が僕を吹き飛ばす。
しかしそれは、
さっきよりずっと強い力だった。
僕は飛ぶ、飛ぶ、飛ぶ、そして、
突出した木の枝に、突き刺さった。
幸か不幸か、
心臓とは逆の位置の胸だったけれど、
これだけ出血していれば、
死ぬのは時間の問題だろう。
今まで経験したことのない痛みが、
僕の身体を駆け巡り、
その魂の消滅を予告する。
「嫌ぁぁぁぁぁぁ!!」
斯波の悲鳴も、
「あリャ、やっチマった。
もう少シ、
楽しミタカッタンだけどナぁ。」
小早川のそんな声も、
次第に聞こえなくなる。
これ、死ぬよな・・・僕。
ああ、フセが何かしてる。
けど、
それももうはっきりとはわからない。
こんなところで
助けるって言ったのに、
結局手も足も出ずに
嫌だ
死にたくない
せめて、アイツを、倒してから
斯波を、夏さんを、天原市を
守ってから
意識が薄れていく
そして、消える。
『行け!<真打>!』
突然、
僕の胸に何かが刺さったのがわかる。
その瞬間、風前の灯だった僕の意識は、
急に明瞭になった。
『おい赤斗!
まだ大丈夫だな!
しっかりしろ!おい!』
微かにしか聞こえなかった
フセの声が、
突然はっきりと聞こえ出した。
ただ、妙なのは、
その声が外からではなく、
身体の中から聞こえていること。
『おい!赤斗!
返事しろ!おい!』
「い、一体、
何がどうなってるんだ!?
僕に何をしたんだ!?」
『手っ取り早く説明する!
質問は受け付けない!
後でもう少し詳しくやってやるから!』
フセが内側から怒鳴り、話し出す。
『1つ!
この万年筆、『世離・真打』は、
本来は人間に扱えないような
シンジュウの憑依を可能にする、
強制憑依補助装置だ!
2つ!
私の本当の加護は、
憑依することで発揮される!
3つ!
私の憑依は、慣れるまでは、
宿り主の意識が極限まで薄れた状態、
それこそ死にかけでもなければ
することはできない!』
頭の中の声が、
どんどん大きくなる。
自分でもおかしなことだと思うけれど、
感覚で、
フセと混ざり合っていくのがわかる。
『とりあえずは成功、<継承>だ!
私の真髄は剣士じゃない!
身体を借りるぜ、赤斗!
今から、君が新たな『旅人』だ!
目を覚ませ、君は死なない!
アイツを倒して、みんなを救うよ!
私の力を、君にくれてやる!』
薄れていた意識が、覚醒する。
身体中に力が溢れる。
ダメになったはずの右腕は、
みるみるうちに治っていく。
身体中についた傷が、
塞がっていくのがわかる。
体が勝手に動き始める。
刺さった木の枝をへし折って、
身体から引っこ抜く。
傷は、あっという間に塞がった。
『僕』は、
その燃えるように赤く染まった長髪
をなびかせながら、
小早川の方を睨む。
「『さあ、
第2ラウンドと行こうか。』」
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