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第1章
<56話>『旅人』VS『捕食者』
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「こんの!
バケモノがぁぁぁぁ!!」
最後の傭兵の1人が、俺に向かって
狂ったように銃を撃ちまくる。
俺はそれを軽々と避け、
傭兵に接近する。
「・・・知ってるよ。」
俺の突きが鳩尾に炸裂し、
男は床に崩れ落ちた。
「・・・さてと。」
俺は後ろを振り返り、
床に伏す他の傭兵達をみながら
ふっ、と息を吐く。
「ここは俺に任せて、
お前は先に行け!」
なんて言って夏を先に行かせて、
死亡フラグが立った状態で
大暴れを始めたのがつい1時間ほど前、
フラグを回避したのはいいものの、
思ったより手間取ってしまった。
まさかこの日本において、
ここまでの武装兵を
潜伏させていたとは・・・。
もう終わっているころだろうか、
あるいは・・・
「・・・いやいやいや、
ありえないって。
アイツが負けるなんて。」
俺は首をふり、
出口へと身体を向けたその時、
俺の携帯から、
不意に着信音が鳴り始めた。
画面をみると非通知。
これでかけてくる奴は1人しかいない。
俺はため息をついて電話に出る。
「おい唯野、ニュース見てねえのか!
今お前の手伝いどころじゃ・・・。」
「誰と勘違いしてるのか知らんが、
緊急事態を伝えにきた師匠に、
随分な言い草じゃな、善坊。」
しゃがれたその声を聞いて、
俺は思わず携帯を落としそうになった。
「い、生きてたのか・・・!?
ジジ・・・師匠!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
たしか、騎士の一件を
報告した時だったと思うけど、
ふと、斯波に聞いてみたことがある。
「憑依されるってどんな感じ?」
斯波は少し唸ってから、
「あんまり例え話は上手くないけど。」
そこで一旦区切ってこう言った。
「操られてる、って感じかな。
身体が勝手に
考えて、話して、動くのを、
見てるだけって感じ。」
成る程、今の僕も、
まさにそんな感想しか出てこなかった。
(こ、これは一体・・・!?)
(あ、赤斗、言っとくけど、
憑依状態は、考えるだけで
相手に全部筒抜けになるからね。)
(先に言え!)
悪態をつける程度には
冷静になれたので、今の僕の状態は、
おそらく初めて会った時の
斯波の状態だろうと推測できた。
フセも身体を借りる、と言っていたし、
この推測は間違ってはいなさそうだ。
ここは大人しくしておくが吉だ。
しかし、
『ほう、お前があの『旅人』かい。
あの時は前の宿り主が油断したせいで、
あのクソ刀に
一刀両断されてしまったが・・・。
じゃが、今回は違う!
ワシはあの時よりも、
何倍もの数の、人を、
シンジュウ使いを食っておる!
最早貴様如き、
ワシの敵ではない!』
猛スピードの触手が、
『僕』に向かって伸びてくる。
そして直撃・・・
したはずのその触手は、
僕の身体を透過して
後ろの木に激突した。
僕達は特に驚きもしなかった。
フセがこの前言っていた通りの、
『触れたものを非物質化する』力が、
発動したのだろう。
だけど、直接的な攻撃力は、
どう考えてもこの力には無い。
「うっワ、マジかよ。
面倒くサイ加護だナァ。」
小早川が顔をしかめるが、
鼠は、
『ふん、触れたものの非物質化か。
それがどうしたと言うんじゃ?
おい、あれを使うんじゃ。』
触手がまた伸びてくる。
しかし今度は、
『僕』は不意に避ける動きをした。
幸いにも牙では無かったが、
非物質化している『僕』の体に、
触手がかする。
『お前ら覚えとらんのか?
俺達はお前らの加護を、
『世離』を既に食っとるんじゃぞ?
非物質と非物質は、
当然干渉できるよなぁ?』
勝ち誇った顔で鼠がそう言うと、
小早川も気持ちの悪い笑みを浮かべて、
「ああ、そうダッタな。
ほら、終わリだ。」
全方位から触手が襲いかかる。
しかし、
『僕』はゆっくりと微笑んで、言った。
「『おめでたいなぁ。
非物質化ってのがどういうことか、
考えたことはないのかい?』」
その言葉と共に、僕の視界は暗転し、
次の瞬間、
『僕』の目の前には、
小早川の驚愕の表情があった。
そしていつのまにか
顔についた血。
視界の端にうつるのは、
どす黒い切断面を覗かせて
のたうちまわる触手。
あの一瞬で、『僕』は、
触手を全て切断し、小早川の目の前まで移動したのだということに気づくのに、1秒。
「『よっ、と!』」
『僕』がそのまま奴の顔に拳を入れ、
渾身の力で殴り飛ばす。
小早川の頭はスイカの如く炸裂する。
残念ながらすぐに再生するも、
その表情は驚愕に染まっていた。
「なっ、ハッ・・・、ガ・・・!?」
「『やれやれ、
やっぱり、
頭潰したくらいじゃダメか・・・。』」
その呆れたようなトーンは、
小早川の怒りの琴線に触れたらしく、
「ふ、ふざケンナァぁぁぁぁ!!」
小早川は顔を歪めて、
新たに何十本もの触手を
『僕』にむけて突撃させる。
フセはそれに少しも動じず、呟いた。
「『・・・ねじれろ』」
次の瞬間、
触手は一つ残らず切断された。
しかしその後ろでは、
炎を口に蓄えた、
何本もの触手が待機している。
炎が放たれ、
一直線に『僕』に向かってくる。
しかしその炎は、
数十センチ手前で、
見えない壁のようなものに阻まれ、
全て散ってしまった。
鼠が吠える。
『どう言うことじゃ、貴様!
どうやって触手を切断した!?
お前の刀は、『世離』は、
たしかに粉々に噛み砕いたんじゃ!』
「『『世離』?
ああ、これのことかい?』」
そう言うとなんと『僕』は虚空から、
『世離』を引きずり出した。
「『いやぁ、実に滑稽だったよ。
量産刀一本砕いたくらいで、
あんなに勝ち誇ってる君達がさ。』」
僕は唖然とする。
あの刀が、量産されている!?
一体どういうことだ!?
そう思ったのは向こうも同じだろうけど
僕との違いは、
そんなこと考えている余裕は無い、
ということだ。
「『さて、小早川君、とかいったっけ。
降参するっていうのなら、
君の命は助けてあげても・・・。』」
「ふ、フん!まだダ!」
小早川は、
ぶら下げられた夏さんと斯波を、
盾にするように前にする。
「コイつらの命が惜しかッタら、
大人しク・・・。」
しかしそう話す小早川の前からは、
まず夏さんが消えていた。
『僕』は、
上から降ってきた夏さんをキャッチする。
「う、うう・・・。」
「『やあ、なっちゃん、大きくなったね。
私に乗っかって遊んでたの、
覚えてない?』」
『僕』がにこやかに声をかけ、
夏さんを地面に寝かせる。
その夏さんを狙って、
触手が猛スピードで伸びてきて、
そして直前で、止まった。
またあの、見えない壁に阻まれたのだ。
『夏!』
すぐに鷹が夏さんのそばに飛んできて、
心配そうに寄り添う。
「大丈夫よ。
再起不能ってわけじゃ無いわ・・・。」
夏さんは鷹を撫でながら弱々しく呟く。
鷹は安堵したように息を吐くと、
こちらを見て、呟いた。
『で、でも、どういうことなの・・・?
非物質化はわかるけれど、
一切触れてもいないのに、
あの触手を一瞬で切断したり、
空間に壁を作ったり、
それに、貴方のさっきのあれは、
『加速』じゃない。
純然たる、瞬間移動だった!』
『僕』は肩をすくめる。
「『そこは、善坊に聞いてくれるかい?
さて次は・・・。』」
そう『僕』が呟き、斯波を見た瞬間、
凄まじい動揺が、
僕の体に伝わってきた。
(・・・フセ?)
「『ヤバイ。』」
何故か少し笑みを浮かべた
小早川の前から、
同じく斯波が消え、上から降ってくる。
『僕』は、それを受け止める。
幸い指の出血は止まっていたけれど、
その瞬間、妙な感触が、手に伝わった。
『僕』は斯波の背中を見て、
そして、
「ーーーッッ!」
声にならない嗚咽を漏らした。
『捕食者』によって
斯波は力を奪われていたということは、
当然斯波も、
あの牙にかかったことになる。
僕や夏さんが、来るより前に。
人質のために捕まえた斯波を
殺すわけない。
僕はそう考えていたけれど、違う。
要は死ななければいいのだから、
アイツの性格から考えて、
出来るだけ『加護』を奪うに違いない。
小早川は、僕のこない間、
斯波を『死ぬ寸前まで』喰らい、
力を奪っていたのだ。
だけど、そんなに傷つけて続ければ、
いくらシンジュウ使いとはいえ、
傷では死ななくても、
失血死は避けられないだろう。
道具が一切ない場所で、
出血している人間をもたせるには、
どうしたらいいか?
決まってる、焼けばいい。
服が破けているために見えたのは、
焼け爛れた、背中だった。
もうこの火傷は、
一生消えないだろうということは、
僕にも容易に想像できた。
斯波はあの時、
尋常ではない痛みに耐えながら、
僕に「逃げろ」と言ったのだ。
どんなに熱かったろう。
どんなに痛かったろう。
どんなに怖かったろう。
僕の中で、どす黒い感情が、
ふつふつと渦巻く。
(・・・殺してやる。)
殺してやる、殺してやる、殺してやる!
あいつらだけは、絶対に殺してやる!
その時、一瞬、
フセとの癒着が緩んだ気がした。
フセが舌打ちをする。
(まずいな。
もうすぐ時間切れだ。
やっぱり、足りないか。)
はぁ!?
変な言葉だけれど、
僕は心の中で怒鳴る。
(ふざけんな!
アイツを倒すまでは・・・!)
(無理だよ、
アイツまだまだ再生回数残してるもん。
周りの人間に被害がでないように、
それ全部削り切るほどの時間は、
今の私たちには無いよ。
もともと私の『力』は、
防衛戦には結構不向きなんだよ、
巻き込んじゃうからね。)
ここでまた、触手が飛んでくる。
『僕』が指を鳴らすと、
またあっさりと切断されてしまうが、
これじゃ消耗戦だ。
「『ああ、もう、鬱陶しいなぁ。』」
『僕』がまた消え、
小早川の眼前に出現するが、
「読んデンだヨ!」
加速の力を使ったらしき小早川は、
既に『僕』の背後に回り込んでいた。
「もう喰ラオうなンて思ワねえ!
このママ頭をツブしてやる!」
小早川の手が伸びてくる。
「『ああもう、
ゆっくり話もできやしない!
しばらく寝てろ!』」
その瞬間、
『世離』を握る『僕』の手に、
力がこもる。
「『花鳥流・桐!』」
その掛け声と共に放たれた突きの連打は
小早川の、鼠の身体を、
数えきれない数の肉片へと変えた。
だけど、既にその肉片は、
集合を開始している。
(これで、暫くは稼げる。
さて、続きだ。
だから、
君にこれから2つの選択肢を提示する。
好きなのを一つ選びな。
私もそれに付き合ってやる。
ただし絶対後悔するなよ。)
そして一呼吸おいて、
(1つ目。
このままなっちゃん達を連れて逃げ、
善坊達と合流して再戦。
これなら、君は100%生き延びられる。
ただ、仕留められる可能性も低い。
2つ目。
私の『力』で、アイツを攻撃する。
これだとアイツを100%仕留められる。
但し、99%君も死ぬ。
さあどうする?
決定権は君にある。)
(2つ目。)
僕は即答した。
(生存率が1%でもありゃ、
それで十分だ。)
(・・・言うと思った。
似てるなあ君は、アイツと。)
そんなことを思った時、
「夏!葉月!
どうしたんだ!?おい!」
その声で、『僕』は後ろを振り向く。
いつのまにか到着した三好さんが、
夏さんと斯波に声をかけていた。
「『善坊。』」
『僕』が三好さんに声をかける。
三好さんはハッとして『僕』を見て、
固まった。
「・・・お前、赤斗か?
クソッ、間に合わなかったか!」
「『うん、まあ、そういうこと。
その2人を頼むよ。
あと悪いけど、
その辺に置いてある印籠、
回収しといてくれるかい?
私は、コイツを仕留めるから。』」
「・・・仕留めるって、
まさか・・・お前・・・!?」
三好さんが動揺しているのが、
目に見えてわかる。
「『もともとコイツがこうなったのは、
あの時私が仕留め損ねたからだ。
責任は取らなきゃいけない。
それに、100%死ぬわけじゃない。
君の師匠を信じるとするよ。
話したんだろ?』」
三好さんは少しうなだれて、
それから、頷いた。
「『・・・さて。』」
『僕』は、
もう殆ど再生した小早川を振り返る。
「『そろそろ、終わりにしようか。』」
「終わリぃ?」
小早川が不敵な笑みを浮かべる。
「そのペースナら、
お前の時間ギレの方が
早イんジャねえの?」
「『・・・お前、
変なこと教えたな?』」
鼠がまた笑う。
『ああ、お前の力なんて、
所詮瞬間移動やら空間断裂じゃろ?
命が1つの常人ならいざ知らず、
今のワシらを削り切る程の時間は、
お前らには無い。
じゃろ?』
『僕』は笑う。
「『うん、確かにそんな時間無い。
でも私は最初から、
君達を殺そうなんて思って無い。』」
『僕』は、小早川の近くに瞬間移動し、
ヤツの襟首を掴んだ。
その瞬間、目の前の空間に、
穴が出現する。
吸引力は無いとはいえ、
同じだ、あの、決闘の時と。
「『さあ、連れてってやるよ、
『私達』の世界にな!』」
そう言って『僕』は、
掴んだ小早川や鼠ごと、
虚空に開いた穴に飛び込んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
飛び込んだ先は、
白い空間だった。
何もない、どこまでも、
果てしない、白の世界。
ここの所在は
皆目見当がつかなかったけれど、
ただ一つ言えるのは、
先刻フセが使ったのは、
非物質化なんて生温い力じゃない、
ということだった。
入り口が閉じた瞬間、
『僕』は、小早川達を、
思い切り放り投げる。
小早川はスタンと着地し、
「どこダか知ラねえが、
こンナとこに連れてキテ、
どうしよウってンダぁ!?
俺は、不死身ナンだぜ!?」
強がる小早川とは裏腹に、
鼠は、見るからに動揺している。
『こ、ここは・・・!?
まさか、あの時、
いきなり出現できたのは!
ワシらがどんなに血眼で探しても、
1度も見つからなかったのは!』
『僕』は小早川から目を離さず、
言った。
「『不死身?
そんなもん、もうなんでも無いさ。
ここに連れてこられた時点で、
君の負けは、
もう確定しているんだから。』」
『僕』は彼らを指差してそう言った。
指先から粒子レベルで分解されていく、
小早川と鼠を指差して。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
『ギャァァァァ!!』
気づいた小早川と鼠が悲鳴を上げる。
僕は呆然とする。
人が光の粒子と化していること、
彼らが、再生しないこと。
そして、
シンジュウにまで同じ作用が現れていることに。
「ナ、なんで再生シナいんだ!?
何をシた!?
早く能力ヲ解除シヤがれ!」
小早川の身体から触手が伸びる。
が、次の瞬間には、
触手は光の粒子へと変わり、霧散する。
小早川は必死に触手を使い、
『僕』を襲おうとするけれど、
その触手も片っ端から消滅していく。
そしてその間も、
彼らの身体は、
どんどん光の粒子へと変わっていく。
身体が消滅していくことで
悲鳴を上げる彼らを見つめながら、
『僕』は口を開く。
「『言ったろ?
この世界に来た時点で、
君らの負けは確定しているのさ。
君らの再生能力はあくまで外傷、
『破壊』に対する力だろう?
残念ながら、
今の君達に起こっているのは、
物理的な『破壊』じゃない。
単純な、『消滅』さ。
ほら、神隠しってあるだろ?
人間が忽然と消えるって奴。
あれの解釈の1つに、
『異世界に迷い込んだ』ってのが
あるんだけどさ、
結論から言うと、
そう言う体験をした人間は、
全員死んでるよ。
『異世界』に入った時点で、
粉々に分解されてね。
死ぬとか生きるとか云々以前に、
この世界は君達の存在を許さない。』」
殆どの身体を失った小早川が、
最後に叫ぶ。
「い、一体、
お前ノ力はなんなんだ!?」
『僕』は、少し寂しそうに笑って、
「『教えてやるよ、
私の加護は・・・。』」
バケモノがぁぁぁぁ!!」
最後の傭兵の1人が、俺に向かって
狂ったように銃を撃ちまくる。
俺はそれを軽々と避け、
傭兵に接近する。
「・・・知ってるよ。」
俺の突きが鳩尾に炸裂し、
男は床に崩れ落ちた。
「・・・さてと。」
俺は後ろを振り返り、
床に伏す他の傭兵達をみながら
ふっ、と息を吐く。
「ここは俺に任せて、
お前は先に行け!」
なんて言って夏を先に行かせて、
死亡フラグが立った状態で
大暴れを始めたのがつい1時間ほど前、
フラグを回避したのはいいものの、
思ったより手間取ってしまった。
まさかこの日本において、
ここまでの武装兵を
潜伏させていたとは・・・。
もう終わっているころだろうか、
あるいは・・・
「・・・いやいやいや、
ありえないって。
アイツが負けるなんて。」
俺は首をふり、
出口へと身体を向けたその時、
俺の携帯から、
不意に着信音が鳴り始めた。
画面をみると非通知。
これでかけてくる奴は1人しかいない。
俺はため息をついて電話に出る。
「おい唯野、ニュース見てねえのか!
今お前の手伝いどころじゃ・・・。」
「誰と勘違いしてるのか知らんが、
緊急事態を伝えにきた師匠に、
随分な言い草じゃな、善坊。」
しゃがれたその声を聞いて、
俺は思わず携帯を落としそうになった。
「い、生きてたのか・・・!?
ジジ・・・師匠!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
たしか、騎士の一件を
報告した時だったと思うけど、
ふと、斯波に聞いてみたことがある。
「憑依されるってどんな感じ?」
斯波は少し唸ってから、
「あんまり例え話は上手くないけど。」
そこで一旦区切ってこう言った。
「操られてる、って感じかな。
身体が勝手に
考えて、話して、動くのを、
見てるだけって感じ。」
成る程、今の僕も、
まさにそんな感想しか出てこなかった。
(こ、これは一体・・・!?)
(あ、赤斗、言っとくけど、
憑依状態は、考えるだけで
相手に全部筒抜けになるからね。)
(先に言え!)
悪態をつける程度には
冷静になれたので、今の僕の状態は、
おそらく初めて会った時の
斯波の状態だろうと推測できた。
フセも身体を借りる、と言っていたし、
この推測は間違ってはいなさそうだ。
ここは大人しくしておくが吉だ。
しかし、
『ほう、お前があの『旅人』かい。
あの時は前の宿り主が油断したせいで、
あのクソ刀に
一刀両断されてしまったが・・・。
じゃが、今回は違う!
ワシはあの時よりも、
何倍もの数の、人を、
シンジュウ使いを食っておる!
最早貴様如き、
ワシの敵ではない!』
猛スピードの触手が、
『僕』に向かって伸びてくる。
そして直撃・・・
したはずのその触手は、
僕の身体を透過して
後ろの木に激突した。
僕達は特に驚きもしなかった。
フセがこの前言っていた通りの、
『触れたものを非物質化する』力が、
発動したのだろう。
だけど、直接的な攻撃力は、
どう考えてもこの力には無い。
「うっワ、マジかよ。
面倒くサイ加護だナァ。」
小早川が顔をしかめるが、
鼠は、
『ふん、触れたものの非物質化か。
それがどうしたと言うんじゃ?
おい、あれを使うんじゃ。』
触手がまた伸びてくる。
しかし今度は、
『僕』は不意に避ける動きをした。
幸いにも牙では無かったが、
非物質化している『僕』の体に、
触手がかする。
『お前ら覚えとらんのか?
俺達はお前らの加護を、
『世離』を既に食っとるんじゃぞ?
非物質と非物質は、
当然干渉できるよなぁ?』
勝ち誇った顔で鼠がそう言うと、
小早川も気持ちの悪い笑みを浮かべて、
「ああ、そうダッタな。
ほら、終わリだ。」
全方位から触手が襲いかかる。
しかし、
『僕』はゆっくりと微笑んで、言った。
「『おめでたいなぁ。
非物質化ってのがどういうことか、
考えたことはないのかい?』」
その言葉と共に、僕の視界は暗転し、
次の瞬間、
『僕』の目の前には、
小早川の驚愕の表情があった。
そしていつのまにか
顔についた血。
視界の端にうつるのは、
どす黒い切断面を覗かせて
のたうちまわる触手。
あの一瞬で、『僕』は、
触手を全て切断し、小早川の目の前まで移動したのだということに気づくのに、1秒。
「『よっ、と!』」
『僕』がそのまま奴の顔に拳を入れ、
渾身の力で殴り飛ばす。
小早川の頭はスイカの如く炸裂する。
残念ながらすぐに再生するも、
その表情は驚愕に染まっていた。
「なっ、ハッ・・・、ガ・・・!?」
「『やれやれ、
やっぱり、
頭潰したくらいじゃダメか・・・。』」
その呆れたようなトーンは、
小早川の怒りの琴線に触れたらしく、
「ふ、ふざケンナァぁぁぁぁ!!」
小早川は顔を歪めて、
新たに何十本もの触手を
『僕』にむけて突撃させる。
フセはそれに少しも動じず、呟いた。
「『・・・ねじれろ』」
次の瞬間、
触手は一つ残らず切断された。
しかしその後ろでは、
炎を口に蓄えた、
何本もの触手が待機している。
炎が放たれ、
一直線に『僕』に向かってくる。
しかしその炎は、
数十センチ手前で、
見えない壁のようなものに阻まれ、
全て散ってしまった。
鼠が吠える。
『どう言うことじゃ、貴様!
どうやって触手を切断した!?
お前の刀は、『世離』は、
たしかに粉々に噛み砕いたんじゃ!』
「『『世離』?
ああ、これのことかい?』」
そう言うとなんと『僕』は虚空から、
『世離』を引きずり出した。
「『いやぁ、実に滑稽だったよ。
量産刀一本砕いたくらいで、
あんなに勝ち誇ってる君達がさ。』」
僕は唖然とする。
あの刀が、量産されている!?
一体どういうことだ!?
そう思ったのは向こうも同じだろうけど
僕との違いは、
そんなこと考えている余裕は無い、
ということだ。
「『さて、小早川君、とかいったっけ。
降参するっていうのなら、
君の命は助けてあげても・・・。』」
「ふ、フん!まだダ!」
小早川は、
ぶら下げられた夏さんと斯波を、
盾にするように前にする。
「コイつらの命が惜しかッタら、
大人しク・・・。」
しかしそう話す小早川の前からは、
まず夏さんが消えていた。
『僕』は、
上から降ってきた夏さんをキャッチする。
「う、うう・・・。」
「『やあ、なっちゃん、大きくなったね。
私に乗っかって遊んでたの、
覚えてない?』」
『僕』がにこやかに声をかけ、
夏さんを地面に寝かせる。
その夏さんを狙って、
触手が猛スピードで伸びてきて、
そして直前で、止まった。
またあの、見えない壁に阻まれたのだ。
『夏!』
すぐに鷹が夏さんのそばに飛んできて、
心配そうに寄り添う。
「大丈夫よ。
再起不能ってわけじゃ無いわ・・・。」
夏さんは鷹を撫でながら弱々しく呟く。
鷹は安堵したように息を吐くと、
こちらを見て、呟いた。
『で、でも、どういうことなの・・・?
非物質化はわかるけれど、
一切触れてもいないのに、
あの触手を一瞬で切断したり、
空間に壁を作ったり、
それに、貴方のさっきのあれは、
『加速』じゃない。
純然たる、瞬間移動だった!』
『僕』は肩をすくめる。
「『そこは、善坊に聞いてくれるかい?
さて次は・・・。』」
そう『僕』が呟き、斯波を見た瞬間、
凄まじい動揺が、
僕の体に伝わってきた。
(・・・フセ?)
「『ヤバイ。』」
何故か少し笑みを浮かべた
小早川の前から、
同じく斯波が消え、上から降ってくる。
『僕』は、それを受け止める。
幸い指の出血は止まっていたけれど、
その瞬間、妙な感触が、手に伝わった。
『僕』は斯波の背中を見て、
そして、
「ーーーッッ!」
声にならない嗚咽を漏らした。
『捕食者』によって
斯波は力を奪われていたということは、
当然斯波も、
あの牙にかかったことになる。
僕や夏さんが、来るより前に。
人質のために捕まえた斯波を
殺すわけない。
僕はそう考えていたけれど、違う。
要は死ななければいいのだから、
アイツの性格から考えて、
出来るだけ『加護』を奪うに違いない。
小早川は、僕のこない間、
斯波を『死ぬ寸前まで』喰らい、
力を奪っていたのだ。
だけど、そんなに傷つけて続ければ、
いくらシンジュウ使いとはいえ、
傷では死ななくても、
失血死は避けられないだろう。
道具が一切ない場所で、
出血している人間をもたせるには、
どうしたらいいか?
決まってる、焼けばいい。
服が破けているために見えたのは、
焼け爛れた、背中だった。
もうこの火傷は、
一生消えないだろうということは、
僕にも容易に想像できた。
斯波はあの時、
尋常ではない痛みに耐えながら、
僕に「逃げろ」と言ったのだ。
どんなに熱かったろう。
どんなに痛かったろう。
どんなに怖かったろう。
僕の中で、どす黒い感情が、
ふつふつと渦巻く。
(・・・殺してやる。)
殺してやる、殺してやる、殺してやる!
あいつらだけは、絶対に殺してやる!
その時、一瞬、
フセとの癒着が緩んだ気がした。
フセが舌打ちをする。
(まずいな。
もうすぐ時間切れだ。
やっぱり、足りないか。)
はぁ!?
変な言葉だけれど、
僕は心の中で怒鳴る。
(ふざけんな!
アイツを倒すまでは・・・!)
(無理だよ、
アイツまだまだ再生回数残してるもん。
周りの人間に被害がでないように、
それ全部削り切るほどの時間は、
今の私たちには無いよ。
もともと私の『力』は、
防衛戦には結構不向きなんだよ、
巻き込んじゃうからね。)
ここでまた、触手が飛んでくる。
『僕』が指を鳴らすと、
またあっさりと切断されてしまうが、
これじゃ消耗戦だ。
「『ああ、もう、鬱陶しいなぁ。』」
『僕』がまた消え、
小早川の眼前に出現するが、
「読んデンだヨ!」
加速の力を使ったらしき小早川は、
既に『僕』の背後に回り込んでいた。
「もう喰ラオうなンて思ワねえ!
このママ頭をツブしてやる!」
小早川の手が伸びてくる。
「『ああもう、
ゆっくり話もできやしない!
しばらく寝てろ!』」
その瞬間、
『世離』を握る『僕』の手に、
力がこもる。
「『花鳥流・桐!』」
その掛け声と共に放たれた突きの連打は
小早川の、鼠の身体を、
数えきれない数の肉片へと変えた。
だけど、既にその肉片は、
集合を開始している。
(これで、暫くは稼げる。
さて、続きだ。
だから、
君にこれから2つの選択肢を提示する。
好きなのを一つ選びな。
私もそれに付き合ってやる。
ただし絶対後悔するなよ。)
そして一呼吸おいて、
(1つ目。
このままなっちゃん達を連れて逃げ、
善坊達と合流して再戦。
これなら、君は100%生き延びられる。
ただ、仕留められる可能性も低い。
2つ目。
私の『力』で、アイツを攻撃する。
これだとアイツを100%仕留められる。
但し、99%君も死ぬ。
さあどうする?
決定権は君にある。)
(2つ目。)
僕は即答した。
(生存率が1%でもありゃ、
それで十分だ。)
(・・・言うと思った。
似てるなあ君は、アイツと。)
そんなことを思った時、
「夏!葉月!
どうしたんだ!?おい!」
その声で、『僕』は後ろを振り向く。
いつのまにか到着した三好さんが、
夏さんと斯波に声をかけていた。
「『善坊。』」
『僕』が三好さんに声をかける。
三好さんはハッとして『僕』を見て、
固まった。
「・・・お前、赤斗か?
クソッ、間に合わなかったか!」
「『うん、まあ、そういうこと。
その2人を頼むよ。
あと悪いけど、
その辺に置いてある印籠、
回収しといてくれるかい?
私は、コイツを仕留めるから。』」
「・・・仕留めるって、
まさか・・・お前・・・!?」
三好さんが動揺しているのが、
目に見えてわかる。
「『もともとコイツがこうなったのは、
あの時私が仕留め損ねたからだ。
責任は取らなきゃいけない。
それに、100%死ぬわけじゃない。
君の師匠を信じるとするよ。
話したんだろ?』」
三好さんは少しうなだれて、
それから、頷いた。
「『・・・さて。』」
『僕』は、
もう殆ど再生した小早川を振り返る。
「『そろそろ、終わりにしようか。』」
「終わリぃ?」
小早川が不敵な笑みを浮かべる。
「そのペースナら、
お前の時間ギレの方が
早イんジャねえの?」
「『・・・お前、
変なこと教えたな?』」
鼠がまた笑う。
『ああ、お前の力なんて、
所詮瞬間移動やら空間断裂じゃろ?
命が1つの常人ならいざ知らず、
今のワシらを削り切る程の時間は、
お前らには無い。
じゃろ?』
『僕』は笑う。
「『うん、確かにそんな時間無い。
でも私は最初から、
君達を殺そうなんて思って無い。』」
『僕』は、小早川の近くに瞬間移動し、
ヤツの襟首を掴んだ。
その瞬間、目の前の空間に、
穴が出現する。
吸引力は無いとはいえ、
同じだ、あの、決闘の時と。
「『さあ、連れてってやるよ、
『私達』の世界にな!』」
そう言って『僕』は、
掴んだ小早川や鼠ごと、
虚空に開いた穴に飛び込んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
飛び込んだ先は、
白い空間だった。
何もない、どこまでも、
果てしない、白の世界。
ここの所在は
皆目見当がつかなかったけれど、
ただ一つ言えるのは、
先刻フセが使ったのは、
非物質化なんて生温い力じゃない、
ということだった。
入り口が閉じた瞬間、
『僕』は、小早川達を、
思い切り放り投げる。
小早川はスタンと着地し、
「どこダか知ラねえが、
こンナとこに連れてキテ、
どうしよウってンダぁ!?
俺は、不死身ナンだぜ!?」
強がる小早川とは裏腹に、
鼠は、見るからに動揺している。
『こ、ここは・・・!?
まさか、あの時、
いきなり出現できたのは!
ワシらがどんなに血眼で探しても、
1度も見つからなかったのは!』
『僕』は小早川から目を離さず、
言った。
「『不死身?
そんなもん、もうなんでも無いさ。
ここに連れてこられた時点で、
君の負けは、
もう確定しているんだから。』」
『僕』は彼らを指差してそう言った。
指先から粒子レベルで分解されていく、
小早川と鼠を指差して。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
『ギャァァァァ!!』
気づいた小早川と鼠が悲鳴を上げる。
僕は呆然とする。
人が光の粒子と化していること、
彼らが、再生しないこと。
そして、
シンジュウにまで同じ作用が現れていることに。
「ナ、なんで再生シナいんだ!?
何をシた!?
早く能力ヲ解除シヤがれ!」
小早川の身体から触手が伸びる。
が、次の瞬間には、
触手は光の粒子へと変わり、霧散する。
小早川は必死に触手を使い、
『僕』を襲おうとするけれど、
その触手も片っ端から消滅していく。
そしてその間も、
彼らの身体は、
どんどん光の粒子へと変わっていく。
身体が消滅していくことで
悲鳴を上げる彼らを見つめながら、
『僕』は口を開く。
「『言ったろ?
この世界に来た時点で、
君らの負けは確定しているのさ。
君らの再生能力はあくまで外傷、
『破壊』に対する力だろう?
残念ながら、
今の君達に起こっているのは、
物理的な『破壊』じゃない。
単純な、『消滅』さ。
ほら、神隠しってあるだろ?
人間が忽然と消えるって奴。
あれの解釈の1つに、
『異世界に迷い込んだ』ってのが
あるんだけどさ、
結論から言うと、
そう言う体験をした人間は、
全員死んでるよ。
『異世界』に入った時点で、
粉々に分解されてね。
死ぬとか生きるとか云々以前に、
この世界は君達の存在を許さない。』」
殆どの身体を失った小早川が、
最後に叫ぶ。
「い、一体、
お前ノ力はなんなんだ!?」
『僕』は、少し寂しそうに笑って、
「『教えてやるよ、
私の加護は・・・。』」
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