我が家と異世界がつながり、獣耳幼女たちのお世話をすることになった件【書籍化決定!】

木ノ花

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第二章

第80話 魔法の薬の検証と小悪党スクワッド

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しまった。すっかり忘れていた……女神ミレイシュへの捧げ物を買ってくる予定だったのに。

 ドーナツショップから帰宅し、我が家の居間で獣耳幼女たちを部屋着に着替えさせたところで、はたと俺はうっかりミスに気がつく。

 せっかくだから、いくつかドーナツを買ってくるんだったな。
 しかし幸い、コタツの上にはお土産のバラエティポップが置かれている。一口サイズとはいえ、二十四個入り。思いもよらぬおねだりをしてくれたリリのおかげだね。

 みんなにも事情を説明し、半分をミレイシュ様へ捧げることに決まった。ビールやレモンサワー、チョコ系の菓子もいくつかセットでつける。どうか今回はこれでご満足ください。

 お供え自体は、サリアさんとフィーナさんが請け負ってくれた。ささっと女神像の足元に置いて戻ってきて、コタツでお茶を飲みながらまったりしている。

 廃聖堂の方では、ガンドールさんとグレンディルさんのドワーフ兄弟が修繕作業中だったらしい。後ほど、彼らにもお酒を差し入れよう。仕事終わりの冷えたビールは命の水だからね。

 これで諸々のストックが心もとなくなってきた……なので晩に、獣耳幼女たちのお世話をしながら大量にネットで注文した。

 他にもジェンガやツイスターゲームをはじめ、簡単なパーティーゲーム類をいくつかポチる。サナちゃんを我が家へお招きした際に楽しく遊んでほしい。

 そうそう。ドーナツショップから帰ってきて以降、うちの子たちはシールに興味津々だ。

 そこでフェアリープリンセスのシール手帳セット、すみっこ生活のキャラクターシールシリーズ、流行中らしいぷっくりとした立体的なシール、などなどを多めにカートへ入れる。歓喜して飛び跳ねるみんなの姿が目に浮かぶ。

 その流れで、よく利用するファッション専門の通販サイトを覗き、フィーナさんに似合いそうな衣服やサリアさんのアウターなどを吟味した。

 続けて、犬・狐・猫を中心にたくさんの動物の絵柄が刺繍されたマフラーを見つけ、ウッキウキで全員分を確保。獣耳幼女たちにピッタリすぎる。もちろんサリアさんとフィーナさんの分もね。

 ふと思いつき、寝る前に暖房器具を購入した。電源不要の大型石油ストーブを三台ほど。天板でお湯を沸かせるタイプで、廃聖堂に設置する。あっちも寒いからね。

 ネットショッピングに満足して目を閉じると、不意にクレジットカードの請求が恐ろしくなってくる……セイちゃんから頂戴した毛髪薬の代金も目減りしてきているし、もうちょっとやる気を出さないとなあ。

 ああ、ゴルドさんにもいろいろ注文しないと。迷宮産の魔法の薬各種はあるだけ欲しい。ぼちぼち生命薬や浄瘴薬の効能チェックを始めるつもりだ。サナちゃんの喘息対策である。

 明日にでも、サリアさんにひとっ走りお使いを頼もう。ついでに、日本の品で欲しいものはないか聞いてきてもらう。こちらの資金も稼ぎたい。

 それからの数日は、必要な用事を済ませたりしつつ我が家でのんびり過ごした。外出は、灯油の買い出しくらいだ。

 トランプやウノのルールを覚えて楽しみ、みかんや干し柿をおやつに食べてみんなニッコリ。庭で遊んで、ちゃんと体を動かすのも忘れない。

 獣耳幼女たちは、一緒にいられるのが嬉しくて堪らないといった様子で、俺に甘えてべったり。あまりに可愛いものだから、構い倒す勢いでお世話させてもらった。

 サリアさんとフィーナさんにせがまれ、夜更けに三人でお酒を楽しんだりもした。
 晩酌とは別枠で、我が家の新たな習慣となりそう。話の流れで、近いうちに日本酒を飲ませると約束もした。冬だから熱燗がいいかな。それと、フグの鰭を取り寄せておこう。

 さらに数晩を経て――居間のカレンダーが最後の一枚になり、テレビから寒波の便りが届き始めたその日。

 賑やかに朝ごはんを済ませた俺たちは、防寒対策万全の服装に着替えを行う。今日は異世界サイドでの活動がメインなのだ。

 獣耳幼女たちには、揃ってボアフリースを着せた。いつもよりもこもこでチャーミングだね。
 仕上げに、先日届いた動物の絵柄が刺繍されたマフラーを巻いてあげれば、弾けるような歓声が居間に響く。

「わぁっ、おくびあったかい! リリ、ルル、すっごくかわいいよ!」

「これでさむくないね! エマもかわいい!」

「ん、ルルちゃんもかわいいでしょっ!」

 手触りが気に入ったらしく、それぞれ服やマフラーを交互に撫でて大はしゃぎ。
 予想以上に似合っており、俺も一気にハイテンション。もちろん絶賛しながらスマホで写真を撮りまくった。

「エマ、リリ、ルル。三人とも、とっても可愛いよ! まるで妖精さんみたいだね! ほら、こっち向いて!」

 テレテレとはにかみながらも、エマとリリは体をこちらへ向けてくれる。ルルだけは、横向きにしたダブルピースで両目を挟んだ謎ポーズだ。アニメで覚えたやつだね、最高にいい感じ。

 動画も交えて撮影し、スマホのストレージを驚異的な速度で埋めていく。

「おお、本当に暖かいなこの服は。しかも軽くて動きやすい」

「ええ、触れ心地も素晴らしいです。こちらの世界の服は、驚くほどに上質ですね」

 洗面所でお着替えを済ませたフィーナさんとサリアさんが戻ってくる。
 こちらの二人も、セットでボアフリース系のコーデ。マフラーも含めてお気に召したご様子だし、大変よくお似合いです。やはり写真と動画に撮っておいた。

  俺も暖かいアウターを羽織り、準備完了。
 獣耳幼女たちの遊び道具や必要な物を詰めたトートバッグを両肩に下げ、元気よく異世界へ出発。サリアさんとフィーナさんには、お茶を淹れるためのセットや大量のお菓子類を運んでもらった。

 地下通路に入り、虹色に揺らめく神の抜け道を通過して廃聖堂へ到着すると、まず新たな光源――左右の壁にかかる複数のランプに目を引かれる。レトロなデザインで統一されており、異世界の街ではお馴染みの魔石で作動するタイプだ。付属のボタンでオンオフできる。

 先日、修繕ついでにドワーフ兄弟が設置してくれた。天井の穴が埋まって以降、わりと暗かったので非常に助かる。お代は真珠の件の契約範囲に含まれる。
 
 いい具合に光が灯るフロアには、どこか浮かない顔をした男性四人組が佇んでいた。揃って小汚く、くたびれた革の衣服を着用している。いずれも洋風の顔立ちをした普通の人間で、丸腰である。

「あ、兄貴! お久しぶりです……!」

「あの、本日はいったいどんなご要件で? いきなりサリアのヤツに呼び出されたもんで……」

 俺と目が合うなり、もみ手をしながら『兄貴』と呼んでくる男性四人組。笑顔がちょっと引きつっている。

 そんな彼らが誰かと言えば、前に異世界の街(ラクスジット)の観光中に絡んできたガラの悪い探索者たちだ。新人だった頃のサリアさんに因縁をつけて叩きのめされたうえ、食事をたかられ続ける羽目になった経歴を持つ。弱い者いびりを繰り返す小悪党でもある。

 獣耳幼女たちを設置済みのガーデンチェアセットに座らせながら、俺は「今日はよろしくお願いします」と挨拶を返す。

 実は、色々と協力してもらうためにお越し願った。そのためにサリアさんは先日、ラクスジットを駆け回ってコンタクトを取ってきてくれたのである。
 ちなみに俺は、彼らのことを『小悪党スクワッド』と心の中で密かに呼んでいる。

「その汚い口を閉じろ、小悪党ども。これから、貴様らの腕を切り刻む」

「ひえっ!?」

「なんでそんなヒドいことを!?」

 あんまりすぎるサリアさんの物言いに、すかさず震え上がる小悪党スクワッド。
 俺は空きテーブルの上にお菓子などを並べつつ苦笑いを浮かべ、「そんな物騒なことしませんよ」とフォローする。

 切り刻むなんて大げさな。少し腕に傷をつけ、生命薬と浄瘴薬が光らないギリギリの分量を検証させてもらうだけだ。そのうえで治癒の効果の有無を確認できればベスト。

 浄瘴薬に関しては、フィーナさんから『お酒の飲み過ぎにも効果あり』との情報を得たので、別口で追加検証を行う。
 
 言うまでもなく、サナちゃんの喘息を治療する目的での実験である。
 現状のプランでは、『週に一回ほど我が家へお招きして、その度に両方の魔法の薬をこっそり少量服用。トータルで一・二ヶ月かけて完治』というのが理想だ。

 初めての来訪にもかかわらず完治しては、周囲に不信感を抱かせかねない。相手のお母さんに気味悪がられて交流を断たれでもしたら、うちの獣耳幼女たちだけでなくサナちゃんも悲しむだろうからね。ないとは思うけど、念の為。

 もし複数回に分けて効果が薄いようなら、結局はまるまる一本飲んでもらうことになる。それでも、分量に関して知っておいて損はない。今後も使い道があるはず。

「というわけで、ご協力お願いします。それが終わったら、こちらの記念品をお持ち帰りくださいね」

 荷物置き用のテーブルの上に並べた菓子類を手のひらで指し、ニッコリ微笑む。
 実験のお礼として、日本の献血バリに用意した。人体実験が終わったら好きなのをお持ちください。もちろん俺も加わるが、サンプルは多い方がいいからね。

 肝心の魔法の薬類の在庫もたっぷりある。サリアさんにお使いを頼み、数日前にゴルドさんからたくさん仕入れてきた。殺菌消毒薬も、日本の製品を持参しているのでご安心ください。

 ついでに、毛髪薬が発光現象を伴わない分量の検証や、擬態薬の効果時間内における追加服用の効力確認なども行う予定だ。

 今日は他にも予定が立て込んでいるから、お茶を淹れて一息ついたらさっそく実験を開始しよう。

 小悪党スクワッドの皆さん、どうかご協力よろしくお願いします。
 はい、腕出して。サクサク切っていきましょうね。
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