40 / 90
第一章
第40話 塗り絵の天才と廃聖堂の掃除(加筆修正あり:7月28日9:00)
しおりを挟む
サリアさんとのマヨネーズ談義に一区切りつく。
するとそこで、ルルが自分の塗り絵帳とクレヨンを持って、俺の膝の上に滑り込んできた。
どうやら遊べといいたいみたい。この様子を見たエマとリリが、『ズルい!』と抗議しながら自分たちの分を急いで用意していた。この流れだと、昨晩と同じく交代で膝に乗せながら塗り絵をやることになりそうだ。
今日はジグナール魔法具工房の店主さんが来訪する予定だったけど、ゴルドさんに代行を頼んだので延期となっている。
だから、このあと廃聖堂内の掃除でもしようと思っていたんだけど。拠点とするには荒れ過ぎているものな……まあ、少しだったらいいか。
ここ最近はバタバタ気味だったし、ちょっとのんびりしよう。
そんなわけで、さっそくルルの塗り絵帳のページを捲る。
「うーん……何度見ても、個性的でとっても素晴らしいね!」
そう言ってルルの頭をなでなですれば、くすぐったげに黒い猫耳が揺れる。
俺の感想はお世辞でもなんでもない。キャラクターの輪郭が青く塗られていたりして色使いは自由奔放だが、不思議と全体は調和しているのだ。
この子の感性は本当に素晴らしい。きっと天才に違いない。そのまま、まっすぐ伸ばしていってほしい。
「つぎはリリのばん!」
「はい、おいで。ルルはお隣ね」
しばらくすると、リリが強引に割り込んできたので交代してもらう。
この子の塗り絵は、細かいところまでよく見て書き込んである。観察力が鋭いのだろう。配色も見本に忠実で、記憶力も相当しっかりしていそうだ。
この感性は本当に素晴らしい。おそらく、天才だな。このまま、まっすぐ伸びていってほしい。その黄金色の頭を撫でて褒めちぎるのも忘れない。狐っぽい獣耳が嬉しそうに揺れている。
「あの、つぎは……」
「もちろんエマの番ね。ほら、おいで」
リリが場所をあけると、すかさずエマが懐へ潜り込んでくる。
この子の塗り絵は、本当に丁寧だ。線からのはみ出しがほとんどなく、多彩な塗り方が目立つ。特に色を重ねた濃淡の作り方が見事で、子どもらしからぬ確かな意図を感じさせた。色彩感覚が豊かだからこその技法だろう。
この感性は本当に素晴らしい。間違いなく天才だ。このまま伸ばしていかないと、美術界にとって取り返しがつかない損失が生じるな。頭を撫で回すと、亜麻色の髪と同色の犬っぽい獣耳がフリフリ揺れる。
「ふむ。では、次は私だな」
「サリアさんは無理でしょ」
なんで立派なレディのアナタが順番待ちしているんですかね……当然、エマとリリにも『サリアはもう大きいでしょ!』とツッコミを入れられていた。ルルも、次はまた自分の番だとばかりに懐へ潜り込もうとしている。
「はいはい、みんな落ち着いて。自分の席に座って塗り絵しようね。俺は順番に見て回るね」
みんな一斉に騒ぎ出したので、いったん自分の席に戻るよう促す。
ちょっと可哀想だし、次はサリアさんの塗り絵帳も見せてもらおうかな。
彼女もしっかり夢中で、余分に買っておいた甲斐があるというもの。それに、昨晩はゆっくり見られなかったし……おお、すごいな。剣やら鎧やらが書き足してある。自由で素晴らしい。
こうして、しばらくは塗り絵タイムを楽しむことになった。
そこで俺はふと音が欲しくなり、BGM代わりにテレビをつける。ワイドショーでも横目で眺めようと思ったのだ。
すると、いきなり見過ごせない話題が飛び込んでくる――『有名ITベンチャー企業の若手経営者が、手術のため再入院する』という報道が流れていた。ネットへの露出が多いだけに、世間の注目も大きいようだ。
というか、この経営者の方と昔からの知り合いだったりする……実は、年上の幼馴染なんだよね。ここ数年は疎遠になっていたものの、かなり心配だ。
たしか以前、エマたちに初めてテレビを見せた際に緊急入院したって聞いたんだっけ。あのときは『初期検査で異常なし』と報じられていた。しかし後の精密検査で、手術が必要と判明したのだとか。
不意に『生命薬』のことが頭をよぎったが、それは流石にマズいよな。でも、最悪は隠して……とにかく、どうにかして一度連絡を取ってみよう。
「サクタローさん……?」
「ん? ああ、ごめんね。それにしても、エマは本当に塗り絵が上手だね。将来は絵描きさんになるのかな」
いつの間にかエマが隣にやってきて、ヘーゼルの瞳を揺らしながらこちらを覗き込んでいた。どうやら心配が顔に出ていたようだ。
俺はすぐに笑みを浮かべ、塗り途中のページを絶賛する。この年齢でこれだけの完成度なら、異世界で歴史に名を刻む画家に……そんな未来もあるかもしれない。
「ねぇねぇ、リリは?」
「もちろん上手だよ。おっと、ルルもね。三人とも、将来が楽しみだね!」
エマに続き、リリとルルも自分の席を離れてこちらへ寄ってきた。ついでにサリアさんも加わり、結局は全員でくっついてわいわい過ごす。
その後、フェアリープリンセスのアニメ鑑賞タイムを挟み、気づけば時計の短針は『10時』を指し示していた。
結構のんびりできたな。そろそろ廃聖堂の掃除に取り掛かろう。正午過ぎには、幼女たちを昼寝させなきゃならない。
そして、安全が確認された廃聖堂へ幼女たちを連れて移動した俺は、これぞファンタジーと思わず唸ってしまうような光景を目にする。
「残骸が多いな。まあ、力仕事は私に任せろ。身体強化の魔法を使って、ざっと端に寄せてしまおう」
そう言うなり、サリアさんの全身が淡く輝き始めた。
するとそこで、ルルが自分の塗り絵帳とクレヨンを持って、俺の膝の上に滑り込んできた。
どうやら遊べといいたいみたい。この様子を見たエマとリリが、『ズルい!』と抗議しながら自分たちの分を急いで用意していた。この流れだと、昨晩と同じく交代で膝に乗せながら塗り絵をやることになりそうだ。
今日はジグナール魔法具工房の店主さんが来訪する予定だったけど、ゴルドさんに代行を頼んだので延期となっている。
だから、このあと廃聖堂内の掃除でもしようと思っていたんだけど。拠点とするには荒れ過ぎているものな……まあ、少しだったらいいか。
ここ最近はバタバタ気味だったし、ちょっとのんびりしよう。
そんなわけで、さっそくルルの塗り絵帳のページを捲る。
「うーん……何度見ても、個性的でとっても素晴らしいね!」
そう言ってルルの頭をなでなですれば、くすぐったげに黒い猫耳が揺れる。
俺の感想はお世辞でもなんでもない。キャラクターの輪郭が青く塗られていたりして色使いは自由奔放だが、不思議と全体は調和しているのだ。
この子の感性は本当に素晴らしい。きっと天才に違いない。そのまま、まっすぐ伸ばしていってほしい。
「つぎはリリのばん!」
「はい、おいで。ルルはお隣ね」
しばらくすると、リリが強引に割り込んできたので交代してもらう。
この子の塗り絵は、細かいところまでよく見て書き込んである。観察力が鋭いのだろう。配色も見本に忠実で、記憶力も相当しっかりしていそうだ。
この感性は本当に素晴らしい。おそらく、天才だな。このまま、まっすぐ伸びていってほしい。その黄金色の頭を撫でて褒めちぎるのも忘れない。狐っぽい獣耳が嬉しそうに揺れている。
「あの、つぎは……」
「もちろんエマの番ね。ほら、おいで」
リリが場所をあけると、すかさずエマが懐へ潜り込んでくる。
この子の塗り絵は、本当に丁寧だ。線からのはみ出しがほとんどなく、多彩な塗り方が目立つ。特に色を重ねた濃淡の作り方が見事で、子どもらしからぬ確かな意図を感じさせた。色彩感覚が豊かだからこその技法だろう。
この感性は本当に素晴らしい。間違いなく天才だ。このまま伸ばしていかないと、美術界にとって取り返しがつかない損失が生じるな。頭を撫で回すと、亜麻色の髪と同色の犬っぽい獣耳がフリフリ揺れる。
「ふむ。では、次は私だな」
「サリアさんは無理でしょ」
なんで立派なレディのアナタが順番待ちしているんですかね……当然、エマとリリにも『サリアはもう大きいでしょ!』とツッコミを入れられていた。ルルも、次はまた自分の番だとばかりに懐へ潜り込もうとしている。
「はいはい、みんな落ち着いて。自分の席に座って塗り絵しようね。俺は順番に見て回るね」
みんな一斉に騒ぎ出したので、いったん自分の席に戻るよう促す。
ちょっと可哀想だし、次はサリアさんの塗り絵帳も見せてもらおうかな。
彼女もしっかり夢中で、余分に買っておいた甲斐があるというもの。それに、昨晩はゆっくり見られなかったし……おお、すごいな。剣やら鎧やらが書き足してある。自由で素晴らしい。
こうして、しばらくは塗り絵タイムを楽しむことになった。
そこで俺はふと音が欲しくなり、BGM代わりにテレビをつける。ワイドショーでも横目で眺めようと思ったのだ。
すると、いきなり見過ごせない話題が飛び込んでくる――『有名ITベンチャー企業の若手経営者が、手術のため再入院する』という報道が流れていた。ネットへの露出が多いだけに、世間の注目も大きいようだ。
というか、この経営者の方と昔からの知り合いだったりする……実は、年上の幼馴染なんだよね。ここ数年は疎遠になっていたものの、かなり心配だ。
たしか以前、エマたちに初めてテレビを見せた際に緊急入院したって聞いたんだっけ。あのときは『初期検査で異常なし』と報じられていた。しかし後の精密検査で、手術が必要と判明したのだとか。
不意に『生命薬』のことが頭をよぎったが、それは流石にマズいよな。でも、最悪は隠して……とにかく、どうにかして一度連絡を取ってみよう。
「サクタローさん……?」
「ん? ああ、ごめんね。それにしても、エマは本当に塗り絵が上手だね。将来は絵描きさんになるのかな」
いつの間にかエマが隣にやってきて、ヘーゼルの瞳を揺らしながらこちらを覗き込んでいた。どうやら心配が顔に出ていたようだ。
俺はすぐに笑みを浮かべ、塗り途中のページを絶賛する。この年齢でこれだけの完成度なら、異世界で歴史に名を刻む画家に……そんな未来もあるかもしれない。
「ねぇねぇ、リリは?」
「もちろん上手だよ。おっと、ルルもね。三人とも、将来が楽しみだね!」
エマに続き、リリとルルも自分の席を離れてこちらへ寄ってきた。ついでにサリアさんも加わり、結局は全員でくっついてわいわい過ごす。
その後、フェアリープリンセスのアニメ鑑賞タイムを挟み、気づけば時計の短針は『10時』を指し示していた。
結構のんびりできたな。そろそろ廃聖堂の掃除に取り掛かろう。正午過ぎには、幼女たちを昼寝させなきゃならない。
そして、安全が確認された廃聖堂へ幼女たちを連れて移動した俺は、これぞファンタジーと思わず唸ってしまうような光景を目にする。
「残骸が多いな。まあ、力仕事は私に任せろ。身体強化の魔法を使って、ざっと端に寄せてしまおう」
そう言うなり、サリアさんの全身が淡く輝き始めた。
289
あなたにおすすめの小説
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています
ゆっこ
恋愛
「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」
王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。
「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」
本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。
王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。
「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」
もうすぐ帰って来る勇者様と私の結婚式が3日後ですが、プロポーズされていないといくら言っても誰も信じてくれません
まつめ
恋愛
3日後に村をあげての盛大な結婚式がある。それはもうすぐやって来る勇者様と自分の結婚式。けれど勇者様は王都の聖女様と結婚すると決まっている。私は聖女様の代わりに癒し手として勇者様を治療してきた、だから見事魔王を打ち破って帰って来た時、村人達は私が本物の聖女だと勘違い。私がいくら否定しても誰も聞いてはくれない。王様との謁見を終えてもうすぐ勇者様が村に帰って来る。私は一度も好きだと言われてないし、ましてや結婚しようとプロポーズも受けていない。村人達はお祭り騒ぎで結婚式の準備は加速していく。どうしようと困っているのに、心の奥底で「もしかしたら……」と大好きな勇者様が自分を選んでくれる未来を淡く期待して流されてしまう私なのだった。どうしよう……でもひょっとして私と結婚してくれる?
「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」
イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。
ある日、夢をみた。
この国の未来を。
それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。
彼は言う。
愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?
夫が「未亡人を我が家で保護する」と言ってきました【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
伯爵夫人カタリナの前に、夫が“行くあてのない未亡人”を連れて帰ってきた。
夫は「保護だ」と言い張り、未亡人を家に住まわせようとするが──その素性には不審な点が多すぎた。
問いただしても夫は曖昧な説明ばかり。
挙げ句の果てには「ずっと家にいればいい」「家族になればいいだろう」と、未亡人を第2夫人にする気満々。
家を守るため、カタリナは未亡人の身元を調査する。
そして判明するのは……?
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。
最安もふもふ三匹に名前をつける変な冒険者ですが、この子たちの力を引き出せるのは私だけです ~精霊偏愛録~
Lihito
ファンタジー
精霊に名前をつける冒険者は、たぶん私だけだ。
うさぎのノル、狐のルゥ、モモンガのピノ。三匹とも最安の契約で、手のひらに乗るサイズ。周りからは「手乗り精霊で何ができる」と笑われている。
でも、この子たちへの聞き方を変えるだけで、返ってくる答えはまるで違う。三匹の情報を重ねれば、上位の精霊一体では見えないものが見える。
上位パーティが三度失敗した大型討伐。私は戦わない。ノルに地中を、ピノに上空を、ルゥに地上を調べさせて、答えを組み上げる。
——この世界の精霊の使い方、みんな間違ってませんか?
【完結】嫌われ公女が継母になった結果
三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。
わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる