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引退試合 1
しおりを挟む俺は朝早く起きて、出かける準備をする。
「あら、光。どこに行くの?」
「颯斗の引退試合に行ってくるよ。」
「…脚は平気なの?」
「走らないしそんなに心配しないで平気だよ。それにいいリハビリになるよ。」
「気をつけて行ってきてね。」
「うん!行ってきます!」
♢♢♢
俺は電車を乗り継ぎ、颯斗の試合会場に到着する。
既に中心のサッカーコートで他のチームの試合が行われている。
「…懐かしいな。」
ここは俺が陸上をやっていた際、何度も来たところだ。
以前来たのはそれほど前ではないが、何故か懐かしい気持ちだ。
「よぉ!光!来てくれたのか!」
「颯斗!久しぶり!」
俺が感慨にふけっていると後ろから颯斗に声をかけられる。
ユニフォームも着用し、準備万端のようだ。
「颯斗、今日はがんばってね!」
「もちろん。全力で頑張るぜ!」
颯斗が俺に向かって親指を立てにっこりと笑う。何と頼もしいやつなんだろうか。
「集合ッ!」
少し離れたところからサッカー部の顧問、小野寺監督の集合の合図が聞こえる。
「やべっ、じゃあ行ってくる!」
「うん!頑張れ!」
「おぅ!」
颯斗が走って集合場所に向かう。
俺も観客席へ向かい観戦の準備をしようと思う。
「あれ?光くん?」
「有栖さん!?」
俺が観客席へ向かい、席へ着くとクラスのマドンナ、木樽 有栖に声をかけられる。
有栖はなんの抵抗もなく俺の隣へスッと座る。以前のカラオケの時と同じ状態だ。
「久しぶりだね。颯斗くんの応援?」
「うん。有栖さんは?」
「私は家がここから近いし暇だったから応援に行こうかなって思って。」
有栖さんのことだから彼氏とかいて、そいつがサッカー部とかなのかと思ったがどうやら違うようだ。
そして何故か安心している自分がいる。
「そうなんだ。夏休みはどう?充実してる?」
「ううん、あんまり。」
「そか。俺は意外と充実してるかな、ゲームしかしてないニート生活だけどね。」
俺がはははと笑う。しかし有栖はにこりともせず暗い雰囲気を醸し出している。
「その、光くん、あの…」
「…脚のこと?」
有栖が思っていたことを俺に当てられたため、驚いて俺の方をみる。
さっきから俺の脚をチラチラと見ていたためすぐに気づいた。
「うん…調子はどう?」
「今は全然痛くないし、大丈夫だよ!走るのは止められてるけどね。」
「…そっか。」
「…うん。大会を応援しに来てくれる約束してたのにごめん。」
「ううん!そういう意味で聞いたんじゃないの。」
「心配してくれてありがとう。ほら、試合始まるよ、応援しよう。」
「うん!」
応援ありがとうございます!
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