この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~

仮実谷 望

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第57話 アリスの出会い

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 アリスとロウガは雨がヒタヒタと降る中、テントを張っていた。
 今日はここで食事をして暖を取って寝ようということになっていた。

 アリスは最近戦闘ばかりになっていた。
 それで調子が少し悪いと言った感じだ。
 ロウガは少しだけ心配していた。

「アリス様大丈夫ですか? 顔色が悪いと思うのですが……」

「大丈夫よ少しだけ眠い……だけよ…………」
 そう言ってアリスがバタンと膝から崩れ落ちた。

 ロウガが咄嗟に抱きうけた。
 見るとアリスが動悸が激しくなっていて、呼吸がたどたどしい。
 顔色も悪くなっていて顔が赤くなっている。

 体を抱きしめているだけでわかるが物凄い高熱が出ていた。

「あれっ……なんだろう周りが真っ赤に染まっているように見えるけど……」


「アリス様ーーー!! お気を確かにしてください」

 ロウガはこうしてはいられないと何か栄養になる物を取ってくるとアリスを寝かしたら出て行ってしまった。

 アリスが基本的に全ての物を出していた。
 収納空間も高熱が出ている状態では出せなかった。
 いつもの何でも出せる召喚能力も使えなかった。

 ロウガは走った、駆けた、命がけで。
 薬とかも手に入らないかと思い病院に襲撃をかけるかとまで考えた。
 だが、力ずくで暴力で手に入れるとか言うことをアリスは許すのだろうか。
 ロウガには人間界での常識はあまりない。
 だがそれでも魔族でも人間から力ずくで物を奪ってよいという考え方は無かった。
 人間は確かに自分がいた世界でも敵対対象だった。
 だがそれでも略奪や強奪や殺人とかは禁忌だった。
 人間との戦闘で生じた殺し合いは出来る限り少なくすると言う考え方があった。
 先代の魔王様はとても人間思いだった。
 だから人間とはいえ殺し合いをするなんてもってのほかと考えていたらしい。
 だが今の魔王様は少し強権的で人間とは出来る限り殺し合いをしないが、それでも相手がこちらを襲うなら正当防衛で殺してもいいという政策だった。
 大臣とかはさらに強権的で人間など骨までしゃぶりつくしてもいいと考えていた者もいた。

 とまあそんな元の世界の魔族の政策を話しても今は仕方ない。
 薬を手に入れる方法はある。
 ダンジョンに潜ればモンスターから状態異常治療薬やポーションなどの回復薬を手に入れることが出来るかもしれない。
 生憎今は持ち合わせがない。
 だからロウガはダンジョンを探していた。
 魔族特有の嗅覚と気配察知で野良ダンジョンを探していた。
 そして野良ダンジョンを見つけたロウガはそこに跳びこんだ。



 アリスは一人テントの中で寝込んでいた。
 体が熱い凄く熱い。
 燃えさかる大火のように体が燃えるように燃焼している。
 太陽が物凄く近くにあるかのように熱い。
 今は6月梅雨。
 雨が静かに降っていたかと思えば、もう土砂降りのように勢いよく雨が滝のように流れ落ちていた。
 
 雨が槍のように降っている。
 こんな雨の中に出てしまえば一気に病状が悪化してしまう。
 アリスは孤独には慣れているつもりだった。
 だが最近まで両親と共に一緒に住んでいて一緒にいたのに。
 今はその両親も居ない。
 ロウガが居なかったら寂しくて悲しいと思う。
 そのロウガも今はいない。
 
 なんだろう、この孤独感。
 アリスは死ぬほど寂しかった。
 ウサギは寂しいと死んじゃうのだと言ってしまうほど絶望していた。

 だが本当に苦しい。
 喉がカラカラだ。
 水が欲しい。
 収納空間から水を出そうとする。
 だが出せない。
 何故だ高熱ぐらいで出せないなんてどんな欠陥スキルだ。
 そして気合で出そうとしたらなんとかペットボトルの水が出せた。
 なおこの水はその辺の公園から汲んだ水道水だ。
 いちいち水まで能力で出していたら魔力の無駄だからだ。

 水をごくごくと飲み干す。
 少しむせる。
 なんとか持ち直す。
 
 だがそれでも死ぬほど喉が渇く。
 もう一本出そうとする。
 何とか出せた。
 飲み干す。
 まだ喉が渇くがこれ以上は飲めそうにない。
 それより体が怠い。
 関節が軋むほど痛い。
 縄で締め付けられているかのように体中が痛む。

 少し這い出そうとする。
 だが動かない。
 体が拘束されているかのように動かない。

 そして何者かの気配を感じる。
 何かが近づいてくる。

 なんだろう結構デカい存在だ。
 そしてその何かの正体が判明した。
 オークだ。
 アリスは絶句した。
 こんな時にモンスターに出会うなんて。
 こんな状態じゃなければ簡単に倒せる相手なのに。

 オークはつぶらな瞳をしていた。
 まるでモンスターとは思えない優しそうな顔だった。

「どうしたんだ……お前凄く苦しそうだな……そうだこっちに来るだ……」

「あんた人語を喋れるの……ちょっと何するのよ!」
 
 人語を喋るオークはアリスをひょいっと持ち上げて連れ去ってしまった。
 そして20分ほど走っていたオークが突然立止った。
 何もない草むらで何やら言葉を唱えている。

「オーク戻った」

 すると草むらが晴れて何やら道みたいなものが出てきた。
 そしてそこは少しだけ広がった空間だった。

 オークの集落だった。
 だが実際にいるオークの数は7体だけだった。

「なんだその人間のむすめんこは?」

「おままさかオークの娘に相手されないからって童のむすめんこに手を出そうと……」

「まあ仕方ないのぅ」

「坊主はやりたいさかりだからな」

「そうだな確かにおらはこのむすめんこを可愛いと思うだ。お嫁さんにしたと思うだ」

「嫌よ、なんで私がこんな醜いオークのお嫁さんにならないといけないのよ」

「おやおやさっそく断れてやんの坊主や」

「ありゃりゃ駄目かねやっぱ」

「この娘になにか栄養のある物を食わせやってけろ」

 みなが外に出て何かを探してくる。
 するとリンゴや八朔や魚を取ってくる。
 でもアリスは今は何も食べる気がしない。
 それより自分がオークに太らせて食べられるんじゃないかと思っていたが。
 どうもそう言う気もないらしい。
 ならばこのまま苗床にされて犯されるのかと思ったら無理やりはしないらしい。

 アリスは何故オーク達がモンスターのような化け物のような理性が無く狂った存在じゃないのかと思った。
 アリスはこんなオークども達が何故こんな異空間の場所で生活しているのかと疑問に思っていたが。
 たぶん人間達の迫害を逃れてここにいるのだろうと思う。

 暫くしているとロウガがやって来た。

「探しましたよアリス様……オークの集落に居たんですね」

「お前さんは狼魔族の……」

「アリス様を攫ったのかお前たちは!!」

「確かに攫ったが……死にそうだったので栄養のある物を食わしてあげようとしただ」

「とにかくポーションだ」
 ロウガはアリスにポーションを使う。
 すると高熱が引いた。

 だがまだ病み上がりなのでまだフラフラだ。
 アリスはだが直ぐに元気になろうとオーク達に出された食事をとった。

 ロウガも取りあえずオーク達に対する警戒を解いた。

 ロウガからしたらオーク種はモンスターだが配下の魔族とも言える。
 モンスターと魔族の扱いは曖昧だ。
 狼魔族や吸血鬼族や鬼魔族などもいるが、鬼魔族の中にはモンスターだったオーガ種のようなものもいる。
 だがそこから種族進化して鬼魔人と呼ばれる鬼魔族が存在する。
 だがオーガの中にも理性のある者も存在する。

 アリスは今まで狩り続けていたオークと言う化け物の存在がいる中、この集落のオークのような理性のあるオークの存在に頭が悩み歩いた。

 アリスの中でモンスターとはどういう存在なのか揺らいだ瞬間だった。
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