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第十三話 太陽の塩を求めて
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陽だまり亭の料理の味を支えているのは森の豊かな恵みとそして上質な調味料だ。特にリザードマンが時々持ってきてくれる岩塩はミネラル豊富でどんな料理も味わい深くしてくれる。しかしその岩塩もついに底をついてしまった。
「ハナさん、塩がもうありません」
湊が報告するとハナさんは顎に手を当てて、ううむ、と考え込んだ。
「困ったねえ。あの塩は森の奥深くにある『陽光の断崖』でしか採れない代物でね。そう簡単には行けない場所なんだよ」
『陽光の断崖』。その名の通り一日のうちの僅かな時間だけ朝日がまっすぐに差し込み、岩肌に染み込んだ塩分が太陽の光を浴びて結晶化するのだという。そこは足場も悪く危険な場所らしい。
「俺様が行ってきてやろう!」
その話を聞いていたのはコボルトのギルだった。彼はいつものようにカウンターでふんぞり返りながら槍を掲げて叫んだ。
「その『太陽の塩』とやらを手に入れ俺様の偉大さを示してやる! ついでにお前も連れて行ってやろう、ミナト!」
どうやらついでなのは湊の方らしい。しかし一人で行くよりは心強い。湊はギルの申し出を受けることにした。
翌朝湊とギルはハナさんから聞いた道を頼りに陽光の断崖を目指した。ギルは「俺様についてこい!」と意気揚々と先頭を歩くが、時々道に迷っては湊が持っていた地図でこっそり方角を確かめている。その姿がなんだか微笑ましかった。
森の奥深くへ進むにつれ道は険しくなっていく。やがて目の前に天を突くような巨大な崖が現れた。ここが陽光の断崖だ。崖の中腹、僅かな岩棚にキラキラと光るものが点在しているのが見える。あれが太陽の塩に違いない。
しかしそこに至る道は人が一人ようやく通れるほどの狭い獣道だけだった。
「ひ、怯んだかミナト! 俺様が先に行って安全を確かめてきてやる!」
ギルは強がりを言いながらもその足は少し震えている。それでも彼は一歩を踏み出した。湊も彼の後に続く。
足元はごろごろとした石くれで滑りやすい。一歩間違えれば崖の下へ真っ逆さまだ。湊は慎重に慎重に足を運ぶ。
その時ギルの足元の岩がぐらりと崩れた。
「うわっ!」
ギルはバランスを崩し崖から滑り落ちそうになる。その瞬間湊はとっさに彼の腕を掴んだ。
「ギル、しっかり!」
「み、ミナト……!」
湊は全体重をかけてギルを引き上げる。なんとか二人とも獣道へと戻ることができた。
「……すまん。助かった」
ギルはぜえぜえと息を切らしながらぽつりと言った。初めて聞く彼の素直な感謝の言葉だった。
二人は互いに助け合いながらなんとか塩の結晶がある岩棚までたどり着いた。岩肌には太陽の光を浴びて蜂蜜色に輝く美しい塩の結晶がびっしりと付着している。これが太陽の塩。
湊は持ってきたハンマーで慎重に塩を採取した。
帰り道ギルはすっかり大人しくなっていた。
「なあミナト。お前なんであんなに必死に助けてくれたんだ?」
「なんでって……仲間だろ?」
湊が当たり前のように言うとギルは顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
「な、仲間なんかじゃないぞ! 俺様は偉大なる狩人で、お前はただの料理人だ!」
憎まれ口を叩きながらもその歩調はいつの間にか湊の隣にそろっていた。
小さな冒険を終えて二人は陽だまり亭へと帰還した。
手に入れた太陽の塩はどんな料理もきっと特別な味にしてくれるだろう。
そしてこの冒険は湊と見栄っ張りなコボルトの間に、塩味のしょっぱいけれど確かな絆を結んでくれたのだった。
「ハナさん、塩がもうありません」
湊が報告するとハナさんは顎に手を当てて、ううむ、と考え込んだ。
「困ったねえ。あの塩は森の奥深くにある『陽光の断崖』でしか採れない代物でね。そう簡単には行けない場所なんだよ」
『陽光の断崖』。その名の通り一日のうちの僅かな時間だけ朝日がまっすぐに差し込み、岩肌に染み込んだ塩分が太陽の光を浴びて結晶化するのだという。そこは足場も悪く危険な場所らしい。
「俺様が行ってきてやろう!」
その話を聞いていたのはコボルトのギルだった。彼はいつものようにカウンターでふんぞり返りながら槍を掲げて叫んだ。
「その『太陽の塩』とやらを手に入れ俺様の偉大さを示してやる! ついでにお前も連れて行ってやろう、ミナト!」
どうやらついでなのは湊の方らしい。しかし一人で行くよりは心強い。湊はギルの申し出を受けることにした。
翌朝湊とギルはハナさんから聞いた道を頼りに陽光の断崖を目指した。ギルは「俺様についてこい!」と意気揚々と先頭を歩くが、時々道に迷っては湊が持っていた地図でこっそり方角を確かめている。その姿がなんだか微笑ましかった。
森の奥深くへ進むにつれ道は険しくなっていく。やがて目の前に天を突くような巨大な崖が現れた。ここが陽光の断崖だ。崖の中腹、僅かな岩棚にキラキラと光るものが点在しているのが見える。あれが太陽の塩に違いない。
しかしそこに至る道は人が一人ようやく通れるほどの狭い獣道だけだった。
「ひ、怯んだかミナト! 俺様が先に行って安全を確かめてきてやる!」
ギルは強がりを言いながらもその足は少し震えている。それでも彼は一歩を踏み出した。湊も彼の後に続く。
足元はごろごろとした石くれで滑りやすい。一歩間違えれば崖の下へ真っ逆さまだ。湊は慎重に慎重に足を運ぶ。
その時ギルの足元の岩がぐらりと崩れた。
「うわっ!」
ギルはバランスを崩し崖から滑り落ちそうになる。その瞬間湊はとっさに彼の腕を掴んだ。
「ギル、しっかり!」
「み、ミナト……!」
湊は全体重をかけてギルを引き上げる。なんとか二人とも獣道へと戻ることができた。
「……すまん。助かった」
ギルはぜえぜえと息を切らしながらぽつりと言った。初めて聞く彼の素直な感謝の言葉だった。
二人は互いに助け合いながらなんとか塩の結晶がある岩棚までたどり着いた。岩肌には太陽の光を浴びて蜂蜜色に輝く美しい塩の結晶がびっしりと付着している。これが太陽の塩。
湊は持ってきたハンマーで慎重に塩を採取した。
帰り道ギルはすっかり大人しくなっていた。
「なあミナト。お前なんであんなに必死に助けてくれたんだ?」
「なんでって……仲間だろ?」
湊が当たり前のように言うとギルは顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
「な、仲間なんかじゃないぞ! 俺様は偉大なる狩人で、お前はただの料理人だ!」
憎まれ口を叩きながらもその歩調はいつの間にか湊の隣にそろっていた。
小さな冒険を終えて二人は陽だまり亭へと帰還した。
手に入れた太陽の塩はどんな料理もきっと特別な味にしてくれるだろう。
そしてこの冒険は湊と見栄っ張りなコボルトの間に、塩味のしょっぱいけれど確かな絆を結んでくれたのだった。
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