この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜

氷雨そら

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瑠璃色の宝石と魔力

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 黒い生地を取り囲むような、金色の蔦の意匠と揺れるチェーン。
 黒いローブ風のコートを肩からかけて、瑠璃色の瞳をこちらに向けた男性がルナシェに微笑みかける。
 目の前にいるのは、服装こそ違うが、間違いなくルナシェの兄、アベルだ。

「お兄様……」
「急に呼び出してすまない」
「……っ、ご無事でよかったです!!」

 ルナシェは、思わずアベルに抱きついた。
 ふんわりと、ルナシェを抱き留めたアベルは、そのまま強く抱きしめ返してくる。

「攫われるように連れてこられたんだ。……少しは、疑いなさい」
「私が、お兄様を疑うことなどありません」

 断頭台に消えたルナシェは、本当はもっと人を疑うべきなのかもしれない。

(でも、大切な人たちを疑わなくては生きられないというのなら、私はもう一度同じ未来を迎えても構わない)

 やり直した世界で、ルナシェの世界は広がった。
 家族以外では、ベリアスくらいしかいなかったルナシェには、今、信じるべき大切な人たちがいる。

「……変わらないな。俺の妹は」
「お兄様こそ、これはどういうことなのですか?」
「見ての通り、魔塔の主になった」

 ルナシェは、アベルを見上げる。
 ルナシェにまっすぐ向けられた瑠璃色の瞳は、真実を告げている。

「……ミンティア辺境伯領に、帰りましょう?」
「それは、できない」
「お兄様は、ミンティア辺境伯家を継ぐお方なのですよ?」

 ルナシェを抱きしめていた力が、不意に緩む。

「初めてなんだ、妹が無事なのは」
「何を言っているのですか」
「ルナシェ、あの時も思い出して、助けようとしたのに、間に合わなかった」

 あの時というのは、やり直す前のことだろうか。
 やはり、ルナシェがやり直しているのは、アベルの魔法だったというのだろうか。

「お兄様」

 握りしめた瑠璃色の宝石。
 ベリアスの手を経て、ルナシェの元に届いた宝石には、魔法が込められていた。

「この宝石に込められていた魔力は、お兄様のものだったのですか?」
「……いや、魔法が使えるのは、この場所に立ったときだけだ。それが、大きな魔法を使うための、俺にとっての制約だ。その宝石、グレインの魔法が込められているな……。だが、今ならもう一度」

 ルナシェは、とっさにネックレスを握りしめて、アベルから遠ざける。

「では、この宝石に込められていたのは、誰の」
「……魔塔の初代主が、妹を救うために込めたものだ」

 キーンッと、どこか硬質な音が、瑠璃色の宝石から響く。
 その音は、まるで、このときを待ちわびていたようだった。
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