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建国祭と離宮の妃 1
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まもなく春が訪れる季節。
春を待ちわびるように執り行われる建国祭。
それは、この帝国最大級の催しであると同時に、併合された各国、そして国内の貴族すべてが一堂に会する日でもある。
王都は、お祭り騒ぎと同時に、厳しい警備体制が敷かれ、非日常の空気を醸し出す。
それも含めて楽しむのが、建国祭なのだ。
「……ビオラ、本当に、このドレスで行くの?」
「これ以外にはあり得ません」
「そう……」
建国祭の夜会には、普段は離宮にある意味では閉じ込められるように過ごしている十三の離宮の妃たちも一堂に会する。
妃たちにとっては、遠く離れた、あるいは王都にいても滅多に会えない家族と会う数少ない機会だ。
(家族や親族に、エスコートして貰うのが習わし)
妃である以上、家族や親族以外の男性にエスコートされるのは望ましくない。
だからこそ、父や兄、弟、従兄弟など近しい家族や親族のエスコートを妃たちは受けるのだ。
「……でも、私には」
ギュッと目を瞑る。
民を虐げて、自分たちだけが利益を享受していたレイウィル王家。
城門に下げられた彼らの無残な姿も、民たちの怒りを宥めるためだった。
私には、家族と呼べる人はいない。
母を亡くしてから、私を虐げた人たちを家族と呼べるかはわからないけれど、誰もいない。
「一人で行くしかないのよね」
幸い、デライト卿は護衛のためにすぐ後ろについてきてくれる。
完全に一人というわけではない。
◇◇◇
(そう思っていたときもあったわ……?)
建国祭の夜会の会場は、帝国中の贅をこらしたように華やかだ。
北から南、東方まで領土を拡大したガディアス帝国。西側の国々も、迎えられた妃たちと皇帝陛下への贈り物を山と積み上げる。
そんな中、一月の離宮の妃、シェーリス・シルベリア様を筆頭に、順番に妃たちが会場へ入場していく。
南方の姫君であり、十二月の離宮の妃であるレイラン様が、ほんの少しだけ気の毒そうな顔を私に向けて入場していった。
たった一人の護衛のみを連れて、一人きりで入場する月日に忘れられた十三月の離宮の妃。
さぞや、注目を浴びるだろうと覚悟して足を踏み出そうとしたそのときだった。
「遠縁とはいえ、親族を置いて入場しようなど、ずいぶんと薄情であらせられる。十三月の妃殿下」
「えっ?」
振り返った先には、真っ黒な髪と瞳をした男性がいた。少し白髪が交じった髪すら渋くて色気ある男性だ。
男性が着ているのは、ガディアス帝国の盛装だけれど、施された意匠は、東方のものだ。
姿を消していたはずの子猫姿のラーティスが、勢いよく男性に飛び込んでいく。
男性が微笑んで、一撫でした途端、ラーティスは、満足げに消えてしまった。
「……さあ、参りましょう」
「えっと?」
幻獣は、未来を視る力を持つ。
だから、ラーティスが喜んで駆け寄ったその人は、私の未来にとって悪い人ではないのだろう。
性急で強引なエスコートを受け、理解及ばないままに私は夜会の会場に、少しばかり遅れて入場したのだった。
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