消えた幼なじみが騎士団長になっていた

氷雨そら

文字の大きさ
2 / 96
異世界で幼なじみともう一度

目が覚めたらそこは異世界


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 気が付くと七瀬は柔らかいベッドらしきものに仰向けに眠っていた。パチリと目を開けた七瀬のことを、茶色の髪に青い目の女性と薄茶色の髪と瞳の男性が覗き込んだ。二人は穏やかな表情で微笑んでいる。

(外国の方たち?この人たちに助けられたのかな?)

「ジーナ。ほら、目を開けたよ。君の瞳と同じ、青色だ」
「可愛いわね、アベル。髪の毛はブロンドだわ。リリアの髪は、お義母さまと同じね」

 七瀬は起き上がってお礼を言おうとしたが、体が思うように動かず声もうまく出すことができない。

(頭がひどく痛んだから、後遺症が出ているのかもしれない)

 七瀬はとっさに看護師の知識からそう判断し、強い絶望感に支配されそうになった。

(おかしい。さっきから手を動かすたびにちらちら見えるのは……私の手?)

 身動きを取ろうとするたびにパタパタ動く手がとても小さいのだ。

 それから6年の月日がたった。



 ――――どうも、異世界に転生していたみたい。



 七瀬は、自分の目の前で起きている出来事を他人事のように分析していた。

 今日は、いつも一緒に遊んでいたカイルが転んでひざにひどい怪我をしてしまった。カイルのひどい泣き声に驚いた大人たちが集まる中、怪我は前世で見慣れているリリアは手早く処置し始める。

(まず、水で洗って清潔な布で止血しよう。それにしてもこれは痛そうね。すぐに治ればいいのに)

 その時、リリアがかざしていた手からキラキラと金色の光があふれた。すると大人たちの目の前で、カイルの膝の怪我が綺麗さっぱり消えてしまった。

 ーーそして現在に至る。

 リリアの手から出てきたのは、光魔法かもしれないと大人たちが口々に話している。青ざめた父と母がリリアを迎えに来た。

(そういえば、小さなころから周りで不思議なことがたくさん起こっていたわ)

 たとえば、怪我をした小さな小鳥が庭に迷い込んできた時の事。かわいそうに思ったが、助かりそうにない。悲しくなったリリアが泣いていると、不思議なことに傷ついた小鳥は元気よく飛び立っていった。

(この世界には魔法がある)

 父と母は魔法が使えなかったため、七瀬の記憶を持つがまだ幼いリリアは、魔法があることに気づかなかったのだ。

 その数日後、物々しい迎えが来て、父と母と共にリリアは神殿に連れていかれた。

 神殿には、優しそうな神官がいた。水晶玉のような、弱い虹色の光を放っているものに手をかざすように促され、かざしてみると水晶玉がまばゆい金に輝いた。

「間違いない。この子には光魔法が宿っています。それもとても強力な」

 その言葉を聞いた両親は、喜ぶどころか青ざめていた。母親のジーナに至っては、涙を流して泣き出してしまっている。

(……喜ぶべきことではないの?)

「さて、リリアといったかな。光魔法の使い手はとても貴重で国の定めた決まりがある。16歳までは、家から神殿に通い光魔法を学んでもらう。その後は、神殿か騎士団の癒し手になるんだよ」

 神官の話によると、貴族であれば高額な寄付金を支払うことで、神殿に所属しながら普通の生活ができるそうだ。

 しかし、庶民にそんな大金が払えるはずもない。ほとんどの子どもたちが、16歳になるとその進路を、窮屈でも安全な神殿へと決める。

(それでお母さんは泣いていたのね)

 でも、ここが異世界というのが現実なら……。リリアには一つの確信にも似た予感があった。

(木下くんはこの世界にいるのではないかしら。そして彼が進むのはきっと…)

 リリアは、神殿ではなく騎士団の癒し手になるのだと心に決めた。
 もしも木下くんへの思いがなかったとしても、救急や集中治療室で働いていた七瀬にとって、神殿よりも騎士団の癒し手のほうが魅力的に感じた。

 その日から、リリアは休息日も毎日神殿へと足を運んだ。光魔法の能力は、神官たちが舌を巻くほど高く、しかも努力家。
 それに加えて、七瀬として過ごしてきた現代医療の知識と怪我や病に対する心構え。

 包帯を巻くのも、誰よりも早くきれいだとリリアは自負している。

 すべてがかみ合って、リリアは16歳になる頃には同世代の中でも抜きんでた存在になっていた。
感想 8

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

全力でお手伝いするので、筆頭聖女の役目と婚約者様をセットで引継ぎお願いします!

水無月あん
恋愛
6歳から筆頭聖女として働いてきたルシェルも今や16歳。このままいけば、大聖女様のあとを継ぐことになる。が、それだけは阻止したい。だって、自由にお菓子が食べられないから! ということで、筆頭聖女の役目と婚約者をまるっとお譲りいたします。6歳から神殿で、世間から隔離され、大事に育てられたため、世間知らずで天然のヒロイン。ちなみに、聖女の力はバケモノ級。まわりの溺愛から逃れ、自由になれるのか…。 ゆるっとした設定のお話ですので、お気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。

巻き込まれではなかった、その先で…

みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。 懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………?? ❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。 ❋主人公以外の他視点のお話もあります。 ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。 ❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し

有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。 30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。 1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。 だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。 そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。 史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。 世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。 全くのフィクションですので、歴史考察はありません。 *あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。

花言葉は「私のものになって」

岬 空弥
恋愛
(婚約者様との会話など必要ありません。) そうして今日もまた、見目麗しい婚約者様を前に、まるで人形のように微笑み、私は自分の世界に入ってゆくのでした。 その理由は、彼が私を利用して、私の姉を狙っているからなのです。 美しい姉を持つ思い込みの激しいユニーナと、少し考えの足りない美男子アレイドの拗れた恋愛。 青春ならではのちょっぴり恥ずかしい二人の言動を「気持ち悪い!」と吐き捨てる姉の婚約者にもご注目ください。