消えた幼なじみが騎士団長になっていた

氷雨そら

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異世界で幼なじみともう一度

騎士団での日々


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


「リリア殿、あなたほどの能力があれば、聖女どころか上級聖女にも成れるでしょう。なにも、命の危険を冒してまで騎士団に入らなくてもいいのではないですか」

 リリアの能力を調べてくれた神官が心配そうに引き留めてくる。それでも、リリアの心が揺らぐことはなかった。

「幼いころから決めていたことですから」

(騎士団に入ればいつかきっと木下くんに会える)

 それは、リリアを支える大きな道しるべだった。そう思えば、辛いことも多かった日々でも頑張ることができた。

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 ーーーーとうとう来てしまった。

 騎士団の女子寮はこぢんまりとして、白い壁に赤い屋根のかわいらしい建物だった。

(もっと、物々しいかと思ったのに意外にも可愛らしい)

「もしかして、あなたがリリア?」

 女子寮の玄関に立っていた、背の高いスミレ色の髪と瞳をした女性が声をかけてきた。少し長めのショートカットでリリアより背が高いが、とても優しそうだ。

「はい。今日からこちらでお世話になります。リリアです。よろしくお願いします」
「そう。思っていた以上にかわいらしい子が来て驚いたわ。ふふ。私はパール。一昨年から騎士団に配属されたのよ。癒し手ではないけど、どうぞよろしくね」

 パール先輩は親切に女子寮の中を案内してくれた。

「ここがリリアの部屋よ」

 そこには二つのベッドと棚があった。

「騎士寮は基本的には相部屋になるんだけど、騎士団の女子は少ないから。今、女子寮を使っているのは3人だけなの。だから、相部屋じゃなくて全部個室。2人部屋をリリア一人で使うことになるわ」

(なるほど)

 七瀬だった時にずっと一人暮らしをしていたリリアにとっては、ある意味ありがたいことだった。

「もう一人の住人は、今遠征に行ってるの。帰ってきたら紹介してあげるわ」
「パール先輩。ありがとうございます」
「先輩……。リリアは本当にかわいいわね。騎士団に置いておくのが心配になるわ」


 後半は何を言っているのか聞き取れなかったが、パール先輩とは上手く付き合っていけそうだとリリアは内心ほっとした。

 その後、騎士団の食堂を案内してもらう。

「すごい。お肉に野菜においしそう。しかも量が多いですね。デザートまで」
「ここの料理はおいしいのよ。力仕事でしょ?みんなよく食べるからね」

(意外といいところなのかも?)

 そう思ったリリアだったが、その考えをすぐに改めることになった。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


(そう、甘かった)

 癒し手とはいえ過酷な騎士団の基礎練習には参加義務がある。最低限の体力がなければ、戦うことを専門にしないとはいえ、生き延びることが難しいからだ。

(少しは鍛えてきたつもりだったけど)

 現在、リリアはひたすら走っている。どんどん騎士たちに追い抜かれ、何周も遅れてしまった。3回目にリリアを追い抜いたパール先輩が、心配そうに声をかけてくる。

「初めはついていけなくて当たり前だから。無理しすぎなくていいよ」
「うぅん。戦場でそれは言えないから」

 リリアは、大幅に遅れながらもなんとか指示された距離を走り切った。ほかの団員は、ほかにもたくさんあるトレーニングをすでに終えている。

(こ……これは早々に何とかしなくては。でも、結構科学的なトレーニングメニューだったわ?)

 このトレーニングは、今は遠征でいない騎士団長の考案らしい。騎士たちの間では、時々鬼団長と揶揄されているそうだ。

 次の日から、リリアは光魔法の身体強化を弱い出力で使う練習を始めた。はじめのうちは逆に疲れてしまい走り切っては倒れこむような毎日だった。

 騎士たちに比べてひ弱だが、けして弱音を吐かないリリアは、だんだんと騎士団員たちに認められていった。

 それから1か月。リリアは騎士団の仲間たちには遠く及ばないまでも、身体強化の魔法を駆使して何とか基礎訓練のメニューをすべてこなすことができるようになっていた。
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