消えた幼なじみが騎士団長になっていた

氷雨そら

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異世界で幼なじみともう一度

再会

✳︎ ✳︎ ✳︎

 そして、その日はやってくる。

 ドラゴンが街を襲っていたため遠征していた騎士団長直属部隊が帰還した。ドラゴンが相手では、並の団員では太刀打ちできないため団長直属の部隊が派遣されていたらしい。

「リリアはまだ、騎士団長に会っていなかったよね」
「そうだね。どんな方なのかな?緊張する」
「ふふ。訓練のときは厳しくて鬼団長なんて呼ばれてるけど、団員思いで優しいところもあるんだよ。あ、ほら」

 ほかの団員達も背が高い人が多いが、それよりも大きな男性が向こうから歩いてくる。190cmくらいはありそうだ。

(思っていたより若いわ。20代後半かしら?)

 その男性はどんどんリリアの方に近づいてくる。パール先輩が「団長だよ」と教えてくれた。

「はじめまして。新入団員のリリアです。よろしくお願いいたします」
「ああ、期待の新人だってな?副団長があのメニューについてくると感心していた。リリア、期待している。俺は団長のレオンだ。よろしくな」

 黒髪にピーコックブルーの瞳。リリアよりずっと大人だし、見た目は全然違うのに。少し眉を寄せたその不器用な笑顔が妙に気になってしまう。

「あれ……?」

 リリアはつい考え事をするときの癖で、作った握りこぶしの人差し指の部分を口に当てて眉を寄せたまま首をかしげてしまった。

 ピーコックブルーの瞳が、見る間に大きく開いて、大きな剣だこのあるゴツゴツとした手が、リリアの握りこぶしをつかんだ。

「な……なせ?」

 その懐かしい音を聞いた瞬間、リリアの瞳から大粒の涙がとめどなく流れた。パール先輩や他の団員たちが唖然としている中、リリアは団長に抱きしめられる。

「きのした……くん」
「本当に……。七瀬なのか。なんで、ここに」
「光魔法の適性があったの。神殿か騎士団か進路を選ぶとき、きっと木下くんならこっちの道に進むんじゃないかと思ったから」
「そうか……」

 二人はしばらく抱き合っていた。しばらくして、少し暗い目をした木下くん改めレオン団長が呟いた。

「寄付金か……。もうすでに騎士団に配属されているが、まぁ通常の3倍も積めば神殿側も頷くだろう」
「レオン団長……?」
「いや、完璧を目指すなら5倍か」

 レオン団長は、何を言っているのか?リリアは目を瞬いた。

「こんなところにリリアを置いておいたら、誰に目をつけられるか……。いや、リリアには安全な場所にいてもらいたい」
「レオン団長?私は、騎士団を辞めるつもりなんてないですよ?」
「だって、光魔法があるがために、国に縛られてしまっただろう?いや、いっそこの国を……」

 そうだった。そういえば、木下くんは、思い込むと突っ走るところがあった、と思い出すのは懐かしく嬉しい。でも、今回リリアは少し怒っていた。

「勝手に決めたらダメだよ。初めの動機はともかく、ここまで努力してきた。今はここで働くのが、私の夢なんだから」
「分かった。……ごめんな」

 最終的には怒ったリリアに、団長が謝り決着がついた。あの鬼団長を新人が謝らせている!と、周囲からの驚愕の視線は痛かったけど、ダメなものはダメなのだ。

 ――――しかし騎士団長の暴走はそれだけでは止まらなかった。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


(完全に、職権濫用だよ…)

 その次の日、出勤したリリアは、自分が団長直属の部隊に配属されたことを知った。

「大丈夫。リリアの努力はみんな認めている。どちらにしろ、団長の直属部隊に癒し手は必要だったんだ。ただ、団長についていける人材がなかなかいなくてね」

(ルード先輩。いいヒトだ)

「ルード副団長。リリアと話すな」

 ガルルル…って聞こえそうな勢いの声が耳元から聞こえる。レオン団長の手は、私の手をしっかり掴んで離す様子がない。

「みんな見てますよ。…それに、幼なじみのノリのままだと、婚約者さんや奥さんに勘違いされちゃうよ?」

 後半は小さな声で、リリアは言った。この世界では、殆どの人間が18歳前後で結婚する。もちろん団長まで上り詰めている上に11歳も年上になっているのだから、当然だと思いつつもズキンと胸が痛んだ。

「いない!……リリアは、俺がこんなことをしたら怒る相手が、勘違いされたくない誰かがいるのか?」
「えっ、いないけど?!再会した日、話したでしょ?前の世界でも恋人いない歴29年の看護師してたって」

 レオン団長は、それでも私の手を離さず、ますます力を込めてくる。

「見たかったな。ずっと、会いたくて。あの日、伝えたいことあるって言っただろ。伝えることもできないままに、誰か他の人間なんて考えられない」

 レオン団長の言葉は、少し重い。でも、純粋に嬉しかった。

「そっか。でもね、団長。今は仕事中ですので、職務に戻ってください!」

 ルード副団長に引きずられていく姿は、私と帰りたいがため、部活をサボろうとして失敗した遠い青春の幼なじみの姿に重なった。
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