消えた幼なじみが騎士団長になっていた

氷雨そら

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異世界で幼なじみともう一度

王宮への招待とドレス選び


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 翌日女子寮にレオン団長が現れた。眉をひそめたまま髪の毛をかきあげている姿から、不機嫌なのが見てとれる。

(……珍しい)

 幼なじみだったから、木下くんのことは小さい頃から見てきた。
 不機嫌なことはあっても、それを表に出すことはほとんどなかった。

 いつも朗らかで、仲間に囲まれた七瀬の自慢の幼なじみ。

「なにがあったんですか?」
「ああ、悪い。顔に出ていたか」
「……珍しいですね」
「ん。実は今夜、王宮に俺と一緒にリリアも招かれた」

 驚いた表情をしたリリアを見て、レオン団長が幾分か表情を和らげる。

「説明不足だな。すまない。今回のリリアの働きを裏で握りつぶそうとしたんだが失敗してな。タヌ…いや将軍閣下の耳に入ってしまったようなんだ」
「え?私、飛竜討伐で何も活躍してないよ?!」

 なんだか不穏な単語がいくつも聞こえてきた気がした。でも、自分がなぜ王宮に呼ばれることになってしまったのか、リリアには心当たりがない。

 はっきり言って騎士団の仲間が活躍する中、守られるばかりで役に立たなかったと自覚している。

「はぁ。リリアはそういうところあるよな」
「で、でも」
「今回の飛竜討伐では、民間人も含め死者が一人も出なかったんだよ。そんなこと前代未聞だ」
「あ。まさか……」

 トリアージを行って重傷者を優先に治療した。そして、応急処置が功を奏して死者が一人も出なかったのだ。でも、戦場で活躍していないのにそれほどの事なのだろうかとリリアは疑問に思う。

「あの時、助けた人々からうわさが広がって、リリアはちょっとした話題になっている。戦場の聖女だと」
「そんな大げさな」

 レオン団長は、長い溜息をついてその長い指でリリアの顎を持ち上げた。

「あのな。だからリリアが騎士団に所属するのに反対っていうのもあるんだよ。七瀬もそうだった。いつも周りへの影響力はむちゃくちゃ強いのに、本人にはその自覚がない。そんなの…」
「あ、う……」

 リリアの顔が真っ赤に染まっているのを見て、レオン団長が慌てたようにその指を離した。

「いや、俺の勝手なわがままだな。悪かったよ」
「いえ。あの、心配してくれてるのわかってるから」
「は。心配……か。それだけじゃないんだけどな」

 レオン団長が、リリアの手をつかんだ。

「さ、いくぞ」
「え?」
「王宮に招かれたのに、その恰好で行く気か?」
「え?騎士服じゃダメなの?」

 まじまじとレオン団長がリリアを見つめる。

「俺としてはそうしてほしいんだけど。国王陛下や将軍閣下は、癒し手のリリアが盛装で参上しないのを良しとしないだろう。ま、俺に任せてくれ」
「え、おごられるのはもう嫌だよ?」

 口の端をあげたレオン団長が、朗らかな声で言った。

「いくらでも買ってあげたいけど、残念ながら今回は騎士団の経費だから」

 ――――職権乱用の次は経費の使い込み?!

 それについては、後日ルード副団長から王宮に招かれたときの衣服については経費として計上できることを聞かされ誤解と分かったのだが……。

 2人は再び、あのデートで行った高級な洋服店に足を踏み入れた。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


「あら、この間のかわいらしいお嬢様。ドレスですの?腕が鳴りますわ!」
「ああ。王宮へ行く。ふさわしいものを見繕ってくれ」

 やたらと気合が入ったオーナーらしき女性に、あれよあれよと着替えさせられるリリア。10着目を着せられてぐったりしていると、レオン団長が爆弾発言をした。

「どれも似合う。1着だけ騎士団につけてくれ。あとは会計を頼む」
「いやいやいや!1着でいいでしょう?」

 リリアはどうしても全部買いたいと粘るレオン団長を、叱ってみたりなだめてみたりしたが、今回はなかなかあきらめない。最後に「今度また一緒に選ぶ楽しみがなくなる」という一言にレオン団長が納得をして事なきを得たが。 

 結局リリアが今夜着るドレスはオーナーとレオン団長に強く勧められ、全体的に淡い水色でパニエが入ってふんわりとしたスカート、所々にピーコックブルーと銀色の刺繍がされたものに決定した。

 なぜかサイズがぴったりなのが不思議で仕方がない。

「王宮へ行く2時間前にいらしていただければ、着付けもメイクもお任せください」

 そう言ってくれたオーナーに感謝しつつ、2人は店を出た。

「次回も買いに来る約束だからな!」
「う、うぅ」
「返事は?」
「……はい」

 そしてリリアはなぜかやたらと何かを買い与えたがる騎士団長に、次回の約束をさせられてしまった。
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