消えた幼なじみが騎士団長になっていた

氷雨そら

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異世界で幼なじみともう一度

王宮から離れた2人の時間


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


「なんで陛下にあんなこと言っちゃうの?寿命が縮んだよ!」

 リリアは今、レオン団長に詰め寄っている。正座でうなだれるレオン団長、同じく正座で詰めよるリリア。その光景はもう、恒例になってしまった感がある。

「ごめん。リリアに何かあったらと思うと」
「だからって国王陛下を敵に回したら、もっと大変なことになるでしょ?」
「……たとえ世界中すべてを敵に回しても守るよ」

 リリアの心臓がドクンと強く波打った。そんなことをたぶんレオン団長はわかっていない。

「ごめんって。ただ、今回の事でリリアは王族、そして貴族社会が注目する存在になってしまったことは理解してほしい」
「レオン団長……」
「絶対守りたいって思っているけど。もしかしたらって不安に思っているのも事実なんだ」
「……私こそ、ごめんなさい」

 七瀬と木下くんがいた世界が、平和だったのだとリリアは改めて感じた。魔獣に気を抜くことができない上に、貴族社会も戦わなくてはならない。

 その世界を一人で生きてきたレオン団長の気持ちをリリアは理解できていると言えるのだろうか。

「レオン団長は不安なんですね」
「リリア?」
「私もあなたの事、守りたいって思っていいですか?」
「え……それ、俺の台詞じゃないか?……そういえば」

 正座していたレオン団長が、リリアのそばに近づいてくる。

「飛竜討伐が終わったら伝えたいことがあるって、言ってなかった?」
「ふぁっ」
「俺さ。リリアが言ったことも、七瀬が言ったことも一つ残らず覚えている自信があるんだよ?」
「あ、あわわわ」

 リリアは確かに飛竜討伐が終わったら伝えたいことがあると言った。でも、まだ心の準備ができていないことも事実だった。

「う……あの。たぶん憧れです」
「憧れ?」
「木下くんは身近だったのに、レオン団長は私の憧れなんです」
「ふーん。そっか。俺も大人になった七瀬を見られたら良かったのにな」

 リリアはレオン団長の瞳を直視した。ずるい言い方だったという自覚がリリアにもある。それでも、レオン団長は笑って許してくれる。

「今はそれでもいいよ。俺は必ず、リリアの憧れの存在でい続けるから」

 笑顔のレオン団長には、大人の持つ余裕が見える。でもその一方リリアにだけ見えてしまうのは。

「……好きなのは間違いないです」
「は……えっ??」
「私がレオン団長の事、好きなのは間違いないんです」
「……ほんとに?」

 レオン団長がくどいほどリリアに確認してくる。大人に見えるレオン団長の陰に、見えかくれするまだ高校生の木下くん。

 彼の瞳は不安に揺れている。これは依存なのかもしれない。

 でも、それでも気持ちに応えたいと思うのなら。

「好きですよ。レオン団長が。少しかっこよすぎますけどね」

 素直な自分でいたい。レオン団長の不安が少しでも減ってくれるなら。

「じゃあ。俺と今すぐ結婚してくれる?」
「それはちょっと。まだ答えられません」
「……その答え知ってた」

 レオン団長は目に見えて落胆している。でも、いつかはそうなれたらいいな。とリリアが思うのもまた事実なのだった。


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「王宮はどうだった?」

 今、リリアはルード副団長とともにいる。
 いつもなら何としてもリリアの訓練を自分で行いたいレオン団長と、隙あらば自分もというアイリーンのせいで、ルード副団長とリリアが関わる機会はそれほど多くない。

「あの、ひやひやしました」
「……と、言うのは?」

 なんだか、ルード副団長を前にするとなんでも答えてしまいそうになる。それはたぶんリリアだけが持つ感想ではないのだろう。

 思わずリリアは洗いざらい王宮での出来事を話してしまった。話を全部聞いたルード副団長が、こめかみを押さえて呟いた。

「騎士学校の頃から、そういう無鉄砲な部分があったが、さすがに国王陛下にまで不敬を働くとは度が過ぎるな。今回はリリアのおかげで目を瞑ってもらえたとはいえ」
「あの……別に私のおかげというわけでは」
「いや。少し俺にも考えることがある。」

 黒すぎる笑顔で笑うルード副団長を見て、リリアはこの人だけは敵に回してはいけないという直感を得た。

(……どうしよう。たぶんそれが真実だわ)

 ルード副団長と、レオン団長の関係には他者が入ることができそうもない。リリアはレオン団長の未来が明るいことを祈るしかなかった。
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