23 / 96
異世界で幼なじみともう一度
団長の魔力が消えた謎
✳︎ ✳︎ ✳︎
「さて、どういうことか説明してもらおうか」
「……そういわれても」
テオドールが、レオン団長に詰め寄られている。
「あの紫色の信じられないくらい不味いポーションを飲んで、俺の魔力は消えた。それ以外考えようがない」
「普通に考えたら、そんなはずないんだけど?」
魔力はこの世界では当たり前の存在。当たり前すぎたせいか使い方は研究されても、その本質についてはそれほど深く研究されているわけではない。
(でも、結局魔力を利用しない限りこの世界に医療を広めるのも難しいわ)
「ポーションはどうやって効くんでしょうか」
―――作用機序
(たぶん、ポーションを飲んだ時の作用機序という概念が抜けている)
七瀬のいた世界でも効果は確認できてもどのような仕組みでその薬が効くのかという作用機序はわかっていない薬もかなりの数あった。しかし、新たな薬を作るうえで欠かせない概念だ。
「うーん。それについては、ポーションの材料が関係しているのかもね。ポーションの作用は光魔法の応用だと僕は考えている」
「光……魔法?」
もしそうならば、闇の魔力を持つレオン団長には効き目がないはず。
「闇の魔力は光の魔力を打ち消す。わかっていることとしては、闇魔法を持つものには回復魔法が効かない。でも、実はその逆もあるとしたら…?」
「それなら、仮説として成り立つかもね。あのポーションは僕の自信作で、ほかの物よりだいぶ効き目があるはずだから」
(光の魔力を含んでいるポーションを飲んだことでレオン団長の闇の魔力が打ち消された?)
「そうなると、レオン団長にはポーションも効かないかもしれないんですね」
「そんな仮説も成り立つね?ふふ。君と話すのは楽しいなぁ」
「……」
「はぁ、心の狭い男は嫌われるよ?レオン」
振り返ると、レオン団長が腰に下げた剣に手を置いていた。
「ああ、無意識だ。すまん」
「無意識なんて余計怖いよ?!もっと君、余裕もった方が良いよ」
2人は、なんだかんだ言っても馬が合うのかどこか楽しそうだ。しかし、リリアには気になることがあった。
「そろそろ帰るか」
「そうですね」
「リリア……少しだけ2人で話してもいいかな」
軽く食い下がってきたレオン団長を置いて、テオドールとリリアは研究室の奥に戻った。
「これ、この間のポーションの残り。ものすごく手間がかかる上に試作品だからほんの少ししか残ってなくて」
前回の紫よりも少し薄い液体が、針のようなものがついた容器に収められている。
「これは……」
「前回の話をもとに、浄化の魔法をかけて血管に注入する前提で作ってみた」
「この容器は、いったい?」
「うん、もともと毒を注入するための武器はあったから、その応用」
(テオドールさまは、本当の天才なのね)
少しだけ、しかめ面になったテオドールがリリアに説明を続ける。
「少し実験したけど、特に影響はなさそうだった。たしかに、リリアの言う通り少量でも即効性があってしかも強力だったよ。作用時間は短かったようだけど」
「まさか、ご自分で使ったんですか?」
「ま、その前に魔獣を使って実験したけどね?一刻も早く完成させたいから」
テオドールは当たり前のように言うが、今までなかった方法でどんな副作用が出るかわからない。リリアの周りは、目的や大切なものの為なら、己を顧みない人間が多すぎる。
「これからは、いきなり自分で試すなんてやめてほしいです」
「ふふ。リリアは心配性だね?でも、レオンのためでもあるんだよ?」
「……テオドールさまも、気づいていたんですか」
「ああ、闇の魔法が打ち消せるなら、レオンに回復魔法が使えるかもしれない」
でも、あのレオン団長が重傷をおっているのだとしたら、たぶんそれは騎士団員にとって、リリアにとっても絶体絶命のピンチだ。その場面で、レオン団長の魔力が失われる。
(たぶん、レオン団長は最後まで命を懸けて戦おうとする。その場面で力が減ることを望まない)
「……リリアも、同じ考えか」
「たぶん、使わせてくれないでしょうね」
「これは、リリアに預けるよ。使わないで済むことを祈ってるけどね」
「――――感謝します。テオドールさま」
リリアは、いつも持ち歩いているポシェットにハンカチで包んだポーションをしまい込んだ。
それから2人がレオン団長のもとに戻ると、レオン団長はそわそわとした様子で待っていた。
「じゃあ、リリア。僕は君を気に入った。また、2人で話そうね?」
「……2人は何の話をしていたんだ?」
「え?2人の秘密だよ。あんまりのんびりしているとリリアのこと誰かにとられちゃうかもね?」
「……」
「テオドールさま?!」
レオン団長の目が暗い感じになったのが気にはなったが、この件についてそれ以上追及されることはなかった。
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
全力でお手伝いするので、筆頭聖女の役目と婚約者様をセットで引継ぎお願いします!
水無月あん
恋愛
6歳から筆頭聖女として働いてきたルシェルも今や16歳。このままいけば、大聖女様のあとを継ぐことになる。が、それだけは阻止したい。だって、自由にお菓子が食べられないから! ということで、筆頭聖女の役目と婚約者をまるっとお譲りいたします。6歳から神殿で、世間から隔離され、大事に育てられたため、世間知らずで天然のヒロイン。ちなみに、聖女の力はバケモノ級。まわりの溺愛から逃れ、自由になれるのか…。
ゆるっとした設定のお話ですので、お気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
巻き込まれではなかった、その先で…
みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。
懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………??
❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。
❋主人公以外の他視点のお話もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。
❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
花言葉は「私のものになって」
岬 空弥
恋愛
(婚約者様との会話など必要ありません。)
そうして今日もまた、見目麗しい婚約者様を前に、まるで人形のように微笑み、私は自分の世界に入ってゆくのでした。
その理由は、彼が私を利用して、私の姉を狙っているからなのです。
美しい姉を持つ思い込みの激しいユニーナと、少し考えの足りない美男子アレイドの拗れた恋愛。
青春ならではのちょっぴり恥ずかしい二人の言動を「気持ち悪い!」と吐き捨てる姉の婚約者にもご注目ください。