26 / 96
異世界で幼なじみともう一度
いつも背中を押してくれるから
✳︎ ✳︎ ✳︎
ふわりふわり。歩くたびにドレスのスカートが揺れ、すれ違った人たちが思わず振り返る。
「やっぱり目立ちすぎじゃない?このドレス??」
「まずい、リリアが可愛すぎて今回も王宮中の人間が恋に落ちる」
リリアは、別に騎士服でも良かった。あんなに贈り物をもらっては、逆に気が引けてしまう。
「あ、今回は受け取ったけど次あんなに贈ってきたら、もう一緒に買い物行かないからね?」
「うっ。悪かった。どれもこれも似合うと思ったらつい」
エスコートしてくれているレオン団長は、今日も騎士の正装だ。なかなか私服を拝む機会はないが、おそらく何を着ても似合うのだろう。
(いい。今度、私も山ほど紳士服を送りつける)
アイリーンとマダムシシリーに、声をかけよう。きっと喜んで相談に乗ってくれるに違いない。
私服に身を包んだレオン団長と、もらった服を着て歩いている姿をリリアは想像してみる。それだけでも、とても楽しい気分になった。
「リリア殿、レオン殿。お待ちしていました」
やはり爽やかな好青年という印象のディアス団長が2人を迎えに来た。
「まあ、招待したのはリリア殿だけだったのですが」
「団長として、貴重な癒し手を引き抜こうとでもされたら困るからな」
「レオン団長が、彼女にご執心という噂は、あまりに有名ですからね」
「……」
こんなところまで、噂が広がっているのかとリリアは項垂れた。
「しかし、この可憐さ、癒し手としての優秀さ。それも理解できるというものです。改めまして、リリア殿。第一騎士団団長ディアスと申します」
再びディアスはリリアの手に口づけを落とした。
(うわ。いつか読んだ物語の中の騎士が今ここに?!)
ディアス団長は、木下くんに貸してもらったラノベに出てきた騎士団長そのものだった。
(なんていう本だったかな。……あれ?何かが引っかかるような?)
ふと、視線を感じて見上げるとレオン団長と目があった。レオン団長は、いつも訓練中に見せているような少し冷たい印象の表情をしていた。
「……それで、ご用件というのは?まさか、リリアに会いたいがためだけに、王命まで使って呼んだわけではないでしょう」
「ここでする話でもない。部屋を用意してもらっている、行こう?」
今日も見えない火花が2人の間に散っているようだ。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「急に呼び出して悪かったな」
案内された部屋には、将軍閣下が待っていた。
「このタヌキ……」
レオン団長が、呟いた一言にリリアは冷たい汗を背中に感じながら、聞こえてませんようにと願った。
「レオン、あまり機嫌が良くないようだな?単刀直入に言おう。リリアを一週間、第一騎士団に借り受けたい」
第一騎士団は、魔獣の討伐の他に災害からの復興も担っている。しかし、今回のドラゴンや飛竜発生の被害のせいで、癒し手の数が足りないそうなのだ。
飛竜討伐時の死者ゼロという実績や高い光魔法の能力から、リリアに打診が来たというわけだ。
(この世界の災害復興。参加してみたい)
そう思ったリリアが、レオン団長の方を見上げると、やはりその表情は冷たい印象の仕事中のものだった。
「依頼内容はわかりました。ところでこれは、命令なのでしょうか?」
「……第二騎士団としても、癒し手が貴重なのは理解している。選択権はそちらにある。明日までに返事をもらえるか?」
「そういうことでしたら。……明朝返事させていただきます。これで失礼しても?」
「ああ、良い返事を待っている」
リリアとレオンは、王宮を後にした。
✳︎ ✳︎ ✳︎
帰りの馬車の中、レオン団長は下を向いて、何かを思案しているかのように黙っていた。一緒にいるのに珍しい静かさに耐えられずリリアが口を開いた。
「レオン団長?」
「……リリアは、行きたいんだよな?」
顔を上げたレオン団長が、ポツリといった。
「迷ってる」
そこでようやく、レオン団長がいつもの微笑みをリリアに向けた。
「行って来たほうがいい」
「え?」
「今回の依頼はリリアのやりたいことなんだって、顔に書いてある」
そんな顔していただろうか?とリリアは思う。
そういえば木下くんと同じ大学か、看護学部のある大学に進むかで悩んでいたときにも、やはり木下くんは「七瀬には夢を叶えて笑っていてほしい」と言って背中を押してくれた。
いつも過保護で、リリアや七瀬を大事にしすぎで、時々引いてしまうほどのことをやらかしてしまう、木下くんとレオン団長。
それでも、ここぞという時、絶対背中を押してくれる。
(……やっぱり、好きだな)
ドキドキとうるさい胸に手を当てて、リリアはそんなふうに、自分の気持ちを再認識した。
ふわりふわり。歩くたびにドレスのスカートが揺れ、すれ違った人たちが思わず振り返る。
「やっぱり目立ちすぎじゃない?このドレス??」
「まずい、リリアが可愛すぎて今回も王宮中の人間が恋に落ちる」
リリアは、別に騎士服でも良かった。あんなに贈り物をもらっては、逆に気が引けてしまう。
「あ、今回は受け取ったけど次あんなに贈ってきたら、もう一緒に買い物行かないからね?」
「うっ。悪かった。どれもこれも似合うと思ったらつい」
エスコートしてくれているレオン団長は、今日も騎士の正装だ。なかなか私服を拝む機会はないが、おそらく何を着ても似合うのだろう。
(いい。今度、私も山ほど紳士服を送りつける)
アイリーンとマダムシシリーに、声をかけよう。きっと喜んで相談に乗ってくれるに違いない。
私服に身を包んだレオン団長と、もらった服を着て歩いている姿をリリアは想像してみる。それだけでも、とても楽しい気分になった。
「リリア殿、レオン殿。お待ちしていました」
やはり爽やかな好青年という印象のディアス団長が2人を迎えに来た。
「まあ、招待したのはリリア殿だけだったのですが」
「団長として、貴重な癒し手を引き抜こうとでもされたら困るからな」
「レオン団長が、彼女にご執心という噂は、あまりに有名ですからね」
「……」
こんなところまで、噂が広がっているのかとリリアは項垂れた。
「しかし、この可憐さ、癒し手としての優秀さ。それも理解できるというものです。改めまして、リリア殿。第一騎士団団長ディアスと申します」
再びディアスはリリアの手に口づけを落とした。
(うわ。いつか読んだ物語の中の騎士が今ここに?!)
ディアス団長は、木下くんに貸してもらったラノベに出てきた騎士団長そのものだった。
(なんていう本だったかな。……あれ?何かが引っかかるような?)
ふと、視線を感じて見上げるとレオン団長と目があった。レオン団長は、いつも訓練中に見せているような少し冷たい印象の表情をしていた。
「……それで、ご用件というのは?まさか、リリアに会いたいがためだけに、王命まで使って呼んだわけではないでしょう」
「ここでする話でもない。部屋を用意してもらっている、行こう?」
今日も見えない火花が2人の間に散っているようだ。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「急に呼び出して悪かったな」
案内された部屋には、将軍閣下が待っていた。
「このタヌキ……」
レオン団長が、呟いた一言にリリアは冷たい汗を背中に感じながら、聞こえてませんようにと願った。
「レオン、あまり機嫌が良くないようだな?単刀直入に言おう。リリアを一週間、第一騎士団に借り受けたい」
第一騎士団は、魔獣の討伐の他に災害からの復興も担っている。しかし、今回のドラゴンや飛竜発生の被害のせいで、癒し手の数が足りないそうなのだ。
飛竜討伐時の死者ゼロという実績や高い光魔法の能力から、リリアに打診が来たというわけだ。
(この世界の災害復興。参加してみたい)
そう思ったリリアが、レオン団長の方を見上げると、やはりその表情は冷たい印象の仕事中のものだった。
「依頼内容はわかりました。ところでこれは、命令なのでしょうか?」
「……第二騎士団としても、癒し手が貴重なのは理解している。選択権はそちらにある。明日までに返事をもらえるか?」
「そういうことでしたら。……明朝返事させていただきます。これで失礼しても?」
「ああ、良い返事を待っている」
リリアとレオンは、王宮を後にした。
✳︎ ✳︎ ✳︎
帰りの馬車の中、レオン団長は下を向いて、何かを思案しているかのように黙っていた。一緒にいるのに珍しい静かさに耐えられずリリアが口を開いた。
「レオン団長?」
「……リリアは、行きたいんだよな?」
顔を上げたレオン団長が、ポツリといった。
「迷ってる」
そこでようやく、レオン団長がいつもの微笑みをリリアに向けた。
「行って来たほうがいい」
「え?」
「今回の依頼はリリアのやりたいことなんだって、顔に書いてある」
そんな顔していただろうか?とリリアは思う。
そういえば木下くんと同じ大学か、看護学部のある大学に進むかで悩んでいたときにも、やはり木下くんは「七瀬には夢を叶えて笑っていてほしい」と言って背中を押してくれた。
いつも過保護で、リリアや七瀬を大事にしすぎで、時々引いてしまうほどのことをやらかしてしまう、木下くんとレオン団長。
それでも、ここぞという時、絶対背中を押してくれる。
(……やっぱり、好きだな)
ドキドキとうるさい胸に手を当てて、リリアはそんなふうに、自分の気持ちを再認識した。
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
全力でお手伝いするので、筆頭聖女の役目と婚約者様をセットで引継ぎお願いします!
水無月あん
恋愛
6歳から筆頭聖女として働いてきたルシェルも今や16歳。このままいけば、大聖女様のあとを継ぐことになる。が、それだけは阻止したい。だって、自由にお菓子が食べられないから! ということで、筆頭聖女の役目と婚約者をまるっとお譲りいたします。6歳から神殿で、世間から隔離され、大事に育てられたため、世間知らずで天然のヒロイン。ちなみに、聖女の力はバケモノ級。まわりの溺愛から逃れ、自由になれるのか…。
ゆるっとした設定のお話ですので、お気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。
巻き込まれではなかった、その先で…
みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。
懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………??
❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。
❋主人公以外の他視点のお話もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。
❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
花言葉は「私のものになって」
岬 空弥
恋愛
(婚約者様との会話など必要ありません。)
そうして今日もまた、見目麗しい婚約者様を前に、まるで人形のように微笑み、私は自分の世界に入ってゆくのでした。
その理由は、彼が私を利用して、私の姉を狙っているからなのです。
美しい姉を持つ思い込みの激しいユニーナと、少し考えの足りない美男子アレイドの拗れた恋愛。
青春ならではのちょっぴり恥ずかしい二人の言動を「気持ち悪い!」と吐き捨てる姉の婚約者にもご注目ください。