36 / 96
異世界で幼なじみともう一度
愛剣とドラゴン
✳︎ ✳︎ ✳︎
フワリと淡い黄色のワンピースが風に靡くたび、通行人が振り返る。腰に下げた剣は、服装にはそぐわない。けれど不思議と違和感なく溶け込んでいた。
「レオン団長、この剣、綺麗にしてもらった上に、あんな値段で良かったのかな?安すぎない?」
「まあ、リリア以外には抜くこともできなかったみたいだから、良いんじゃないか?」
綺麗に磨かれた剣は、まるで美術館の装飾品のように品が良く美しい。
「たぶんその刀身、ミスリルだな」
「え?」
「その色、それに軽い。ミスリルの特徴だ」
「じゃ、ますますお高いものなんじゃないの?」
武器屋の店主に、リリアは気に入られてしまったようだ。正当な額を教えてほしいと言って聞かないリリアに、店主は言った。
『武器が人を選んだ時には、商売抜きで渡すことにしている。それが俺の矜持だ。』
その意味は分からなかったが、リリアは確かにこの剣に呼ばれた気がした。
「そのうちリリアの装備を全部ミスリルで作ろう。十分あの店に貢献できるだろ?」
「はあ。それっていったいいくらするんだろうね?」
「いつかリリアと一緒に暮らす家と同じくらいの値段じゃないか?」
「へっ?!」
「いつかリリアと……」
(それ以上聞いたら、心臓が持たない!)
そう思って、リリアは思わずレオン団長の口を塞いでしまった。その手はそのまま、レオン団長の大きな手に包み込まれてしまう。
「積極的だな?」
レオン団長は、ニヤッと意地悪げに笑った。
(しまった、逆に恥ずかしい!)
そのあとは、ランチに誘われてリリア好みの可愛いお皿に盛り付けられたパスタを食べたが、やはり動揺しすぎて味がわからなかった。
✳︎ ✳︎ ✳︎
そのままレオン団長に手を引かれ、女子寮まで帰ってきたが道中の記憶はない。
(あれ?いつのまにか部屋に帰ってきてる?)
「そろそろ帰るよ。今日は楽しかった」
「うん、私も……」
帰ってしまうとなると名残惜しい。つないだ手を離すことができないまま2人が見つめあっていると、ロンがテーブルの下から這い出てきた。
「本当に、お前たち落し子2人は仲が良いなぁ」
どうやら闇の魔法で縛られていたのは、自力で抜け出したらしい。しかし、リリアを見るとモゾモゾしていた動きを止めた。
「ん?その剣……懐かしいな。なんでリリアが持っている?」
「どう言うこと?」
「それは、その昔出会った落とし子の持ち物だ」
(つまり、転生者の……剣?)
「ふーん。その剣に主として認められているのか。まあ、リリアなら当然と言えば当然かな?」
「あの、ロンには転生者の知り合いがいるの?」
「……遠い昔の話だ。少し世話になったが、もういない。そう、アイツも聖女と呼ばれていたな」
(やっぱり、転生者は他にもいるのね)
そう思うリリアの横で、つないだ手に少し力を込めたレオン団長が表情を険しくする。
「それで、その聖女の行く末はどうなった?」
「利用されて騙されたよ。だから人間には関わりたくない」
「……それがわかれば十分だ。ほら、これ土産」
「うおっ。これは、パスタというやつでは?!」
なんだかんだ言って、レオン団長はロンに甘い。そういうリリアも、実は可愛くて仕方ないのだが。
バクバクと勢いよく食べるロンを見るレオン団長は、口元が緩んでいる。
(そういえば木下くんは犬派って言ってたな)
「たまに買ってきてやるから、リリアの魔力を貰うのはほどほどにしろよ?お前、ずるいぞ?」
「土産持ってくるならたまにはレオンもここに遊びに来てもいいぞ?魔力はもちろんもらうがな」
「お前本当に可愛くないな」
ドラゴンと本気で口喧嘩しているレオン団長のことはあまり見ないことにした。
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
全力でお手伝いするので、筆頭聖女の役目と婚約者様をセットで引継ぎお願いします!
水無月あん
恋愛
6歳から筆頭聖女として働いてきたルシェルも今や16歳。このままいけば、大聖女様のあとを継ぐことになる。が、それだけは阻止したい。だって、自由にお菓子が食べられないから! ということで、筆頭聖女の役目と婚約者をまるっとお譲りいたします。6歳から神殿で、世間から隔離され、大事に育てられたため、世間知らずで天然のヒロイン。ちなみに、聖女の力はバケモノ級。まわりの溺愛から逃れ、自由になれるのか…。
ゆるっとした設定のお話ですので、お気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。
巻き込まれではなかった、その先で…
みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。
懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………??
❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。
❋主人公以外の他視点のお話もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。
❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
花言葉は「私のものになって」
岬 空弥
恋愛
(婚約者様との会話など必要ありません。)
そうして今日もまた、見目麗しい婚約者様を前に、まるで人形のように微笑み、私は自分の世界に入ってゆくのでした。
その理由は、彼が私を利用して、私の姉を狙っているからなのです。
美しい姉を持つ思い込みの激しいユニーナと、少し考えの足りない美男子アレイドの拗れた恋愛。
青春ならではのちょっぴり恥ずかしい二人の言動を「気持ち悪い!」と吐き捨てる姉の婚約者にもご注目ください。