消えた幼なじみが騎士団長になっていた

氷雨そら

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異世界で幼なじみともう一度

癒し手前衛に

 ✳︎ ✳︎ ✳︎


「リリア、今日からは基礎訓練だけでなく騎士団の訓練に混ざれ。魔力の残量は意識しなくていい」
「え?いいんですか?!」
「……不服だが。おそらくトーナメントで8位をとったパールと戦ってもいい線いくだろう。参加させない理由がない。不服だが」

(不服って二度言っている……)

 デートの翌日から、リリアは基礎訓練だけでなく騎士団の訓練に参加できるようになった。

「癒し手と言って侮ると、あっという間に追い抜かれるぞ。それでいい奴以外は死ぬ気で頑張るんだな」

 リリアが参加する時に、レオン団長は団員にそんなことを言っていた。一瞬静まり返ったことでリリアの背中を冷たい汗が流れる。

(エリートの騎士達に失礼なのでは)

 しかしそれも杞憂に終わった。

「「やってやるぜぇ!!」」
「「ついでに団長も打ち倒す!」」
「「リリアを我が隊に!」」

 そのあと皆んなの雄叫びが響き、熱気が高まったのを感じる。
 レオン団長の冗談と受け取ったのか不思議な叫びも多かったが、皆んなの士気は高まっていた。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


「さ、リリア。行きましょうか?」
「はい!アイリーン隊長と一緒で嬉しいです」

 訓練には、調査や小規模な討伐など、依頼を兼ねた実践的な内容もある。リリアがどの隊に入るかは、だいぶ検討に時間がかかったようだが、今回はアイリーンの隊に入れてもらえた。

「ふふ。もちろん私もよ。団長と副団長不参加とはいえ、争奪戦勝ち抜くの大変だったんだから。親衛隊の奴ら、ここで新しい戦法をぶつけてきやがったし」

 後半はよく聞こえなかったが、何か問題でもあったのかとリリアは顔を上げた。すると楽しそうに口元が綻んだアイリーンと目があった。

「え?」
「いいのいいの。ふふっ。さ、西の洞窟に出たという魔物調査、行きましょ?」

 アイリーンの隊は、そのスピードから斥候の役目をすることも多く、団長の直属部隊よりもフットワークが軽い。このため、調査や先発隊に指名されることも多いと聞く。

「なあ、魔力がうまい魔物だったら頂いていいか?」
「今日は、調査だけだからアイリーン隊長に確認してからね」
「なんならぜーんぶ倒してやるのに」

 ロンは小さい羽をはためかせながら、何故かここまでついてきた。

(この可愛い見た目からして、あまり戦力になりそうにはないけど?)

 しかし、レオン団長に相談したら連れて行った方がいいと言っていたので、何かしら爪を隠しているのかもしれない。

「リリア殿。大丈夫ですか?」
「ゲオルグさん。大丈夫です。基礎訓練で鍛えられてますし、いざとなったら身体強化使うので」

 アイリーンの隊に所属している騎士達は、隊長の性格に影響を受けているのか皆んな気さくだ。

「アイリーン隊長って、いつもあんな感じなんですね」
「……隊長はいつもあんな感じですよ」

 チラリと見ると、また1匹リリアに引き寄せられたらしいはぐれスライムを倒している姿が見えた。

「リリア!また倒したわよー」

 アイリーンはぶんぶん手を振っているが、ルード副団長がいない今、叱ってくれる人間はいないようだ。

 一瞬、ゲオルクが疲労感を滲ませたが、余計な質問をしたリリアは、笑顔で誤魔化すことにした。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 調査する洞窟は、流石に薄暗かった。

「リリアは、魔物に狙われやすいから私の近くにいてね」
「はい」

 道中のテンションからは信じられないほど、今のアイリーンは真剣な顔をしている。アイリーンなりに、仕事に対する線引きがあるようだ。

 リリアの前に、パタパタと羽ばたきながらロンが出てくる。何かに警戒しているのか尻尾がピンと立っていた。

「おい。リリア、ここかなりの数の魔獣がいる」
「そう、なの?」
「しかもリリアの魔力の香りに惹かれてこっちに出てくるぞ」
「えっ?!大変!」

 洞窟に入る前に、大量の魔物が飛び出してきてしまった。

(私……調査任務は向かないみたい?!)


「ふふっ。楽しくなってきたわ」

 出てきた白い虎の魔獣をまずは、アイリーンが踊るように倒す。一撃で勝負は決まった。

「隊長が指揮する前に突っ込んでどうするんですか!」

 ゲオルグが、リリアを守る姿勢で叫んでいるが、アイリーンは聞こえないかのように魔獣を屠っていく。
 だが、アイリーンが討伐するより早く、魔獣たちが押し寄せてくる。とにかくその数があまりにも多い。

「こんな沸くことあるのか?!」

(うわー。私のせいかもしれない)

 リリアは、手の汗を拭って覚悟を決める。

「戦うと、決めた。もう守られるだけはやめるって約束した」
「え?何言っているんですか?!」

 ゲオルグが止めるより早く、リリアは金色の魔力の尾を靡かせてすれ違いざまに魔獣を倒した。

「もう、迷わない!」

 アイリーンの近くまで駆け寄っていく。その戦い方は、目に焼き付いている。

「私も、戦います」
「……強くなったのね」

 アイリーンの剣は、円を描いて剣舞のように敵を薙いでいく。その横で、金色の軌跡を描きながら、戦うリリア。
 ほんの一瞬、あまりに美しい2人の戦いを眺めていたゲオルグや騎士達も、雄叫びを上げその戦いに加わった。

「あー。リリアのやつ、確かに強いけど、ちょっと飛ばしすぎだ。慣れてないからなぁ。これじゃ、もう少し敵が増えたら持たないぞ?」

 少し離れた位置で、戦いを見ていたロンが呟いた。

「まあ、隷属の魔法は、対象者がいなくなれば解ける。俺としては特に困ることない……けど」

 あと少しのところで、急にリリアの動きが遅くなる。アイリーンが守りに入るが、それで余裕で押していた戦線が崩れかける。

「あー。言わんこっちゃない。……ちっ、リリア!」


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 リリアの目の前に、美しいドラゴンが降り立つ。オレンジ色の体躯にほのかに輝く金色。
 そこにいるだけでわかる圧倒的な強さは、見たものに畏怖を与える。


 ――――グオオオオオ。


 ドラゴンが雄叫びをあげると、魔獣たちの動きがぴたりと止まった。

 そこには、圧倒的な強者と弱者しか存在しない。

 あるものは尻尾を丸め、あるものは耳を倒しながら魔獣たちが、洞窟の中へと駆け戻っていく。


「ちっ。こんな大物まで現れるなんて!」


 アイリーンが、リリアを守ろうと立ちはだかる。


「まって!あの。あなたは……」
「――――リリアは、他にドラゴンの知り合いがいるのか?」

 少し不機嫌そうな声色は、確かにロンだった。

「ロン。助けてくれて、ありがとう」
「ふん。ここで見捨てたら、地の果てまでレオンのやつが追いかけてくるだろうから。仕方なくだ!」
「えっ。ツンデレ尊い」
「……やっぱり普通に褒めてくれ」

 ロンはそれだけ言うと、リリアに背を向けてしまった。

「うん。すごくカッコよかったよ?」
「――――ふんっ」

(尻尾が嬉しそうに、揺れてるよ?)

「あらー。流石に将軍閣下に呼び出され案件よ?たぶん、リリアの初陣にあちらさん注目してるだろうし……」
「我々は、口を割ることはないですが、まあレオン団長ですら、本気でやってリリアに関する情報を握り潰す成功率五分って言ってましたからね」

 アイリーンとゲオルグが、珍しくため息をついている。

(何やってるのレオン団長!?)

 むしろそちらの方が衝撃的だったリリアだが、案の定、翌日には陛下のサイン入りの王宮への招待状がリリアの元に届いた。

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