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異世界で幼なじみともう一度
仕組まれた2人
✳︎ ✳︎ ✳︎
「ドラゴンを従えた、戦場の聖女か……。国民が好きそうな偶像だな」
リリアとレオン団長が、転生者であることを隠しても、どうしてもリリアとレオン団長は、静かに生きることが出来ないようだ。
おそらくリリア一人ならとっくに、国民向けの旗印として担ぎ上げられ、利用されているだろう。
「させない……」
権力にあまり興味がないレオンは、武力のみでのし上がったという評価をする人間が多い。
だが、レオンは誰もが認める力を持つ騎士団長という地位にいながら、英雄として利用されているわけではない。
隣国にもツテを持つし、市井にも協力者は多い。レオンには、この国に留まる条件で王命でさえ断る権限が与えられている。もちろん表沙汰にはしていないが。
その時、ノックの音がした。
「はあ……。ノックの音で彼女の機嫌がわかるなんて、俺も大概だな」
ドアを開けると、そこには少し怒った様子のリリアが立っていた。
「ただいま」
――――トンッ
リリアは、手のひらを握りしめ、口元に当てたままレオン団長の胸に寄りかかった。
「えっ。お帰りなさい?」
リリアの予想外の言葉と行動に、レオン団長に動揺が走る。それだけで、もうだめだった。
元幼なじみは、本当にレオンに隠し事をさせない手腕に長けている。
「ね、私の情報が陛下と閣下に届かないようにしてたって本当?」
「……嫌だった?」
少しレオン団長から離れたリリアが首を振る。
「リリア」
「違う。また、危ない橋渡ったりしてるんでしょ」
それは事実だ。騎士を目指すと決めた時からレオンが歩いてきた道のりに、安全など一度だってなかった。
「最近は、してないよ」
「レオン団長の立場、危ない橋なんていつもだって分かってるつもり」
だれよりも愛しい人がレオンの腕の中で震えた。
ほんの少しだって、悲しませたくないのに。
「……リリア」
「私、結局今回も迷惑かけちゃったね」
「迷惑なんて思った事、一度だってない」
「知ってる。ありがとうって言った方が良いのもわかってる」
レオン団長は、離れかけたリリアの体を抱きしめた。リリアがただの癒し手なんて枠に収まるはずがないことは、レオン団長が一番理解している。
「ありがとう」
「うん」
守ることができたら、それだけでもう十分に幸せなのに。その言葉でだけで、十分すぎるほど報われる。
「それでね」
「うん?」
「お礼の気持ちを形にしてみました」
「んん?」
慌てて廊下に出てみると騎士団長室のドアの前には、山ほどの贈り物の箱。
「ふふっ。飛竜討伐の報奨金も、お給料も。持ってたお金ぜーんぶマダムシシリーに渡して用意してもらっちゃった」
自慢げな表情のリリアに、ますますレオン団長の困惑が深まる。
「え?全部?」
「うん、全部。だからもう、私にこの前みたいに不意打ちで贈るのはやめてね?」
「……調子に乗った俺が悪かったです」
「よろしい」
しかしこの後レオン団長と一緒に箱を開け始めると、リリアまで困惑することになる。
「え?何で私の分まで入ってるの?」
「なんかメッセージカードが入ってるぞ?」
――――親愛なるリリアと団長へ。王宮に着て行ってください。
――――アイリーンより
「全部お揃いだぞ?」
「うん、お揃いだね?」
確かにこれから王宮に招待されている。それは、確定事項だ。
――――トントン
団長室の扉を叩く音。その音で思考が中断される。
「逃げ遅れた」
レオン団長が呟いたが、先手を打たれてしまったようだ。
開いた扉の前には、マダムシシリーと5人のお仕着せを着た女性たち。
「アイリーン様とパール様より、本日のお二人のお召し物と準備を整えるように依頼を受けております」
「俺は自分で着れるし、騎士の正装があるから……」
「今回は逃がさない!」
なおも逃げようとしたレオン団長だが、リリアに腕をつかまれてしまった。
(今度は私だけ置いて行かせない!もみくちゃにされればいいんだわ!)
その結果、薄いグレーを基調に落ち着いた印象ながら、飾りひもや宝石でお互いの瞳の色を取り入れたお揃いの盛装に身を包んだ、おめでたい感じの2人が出来上がる。このまま披露宴ができそうだ。
「ん?レオン団長だけでも逃がすのが正解だったのでは?」
「だから……。いや、これはこれで王宮での虫よけにいいのかもしれない」
「何言って……。本当にこれで行くの?」
「可愛いリリア。このまま結婚式でもいいけど」
リリアの頬に手を添えたレオン団長の笑顔が蕩けている。はっきり言って、想像していた以上に騎士服以外のレオン団長はかっこいい。
「……そういうの、冗談で言うのやめてほしい」
「そっか。今度ちゃんと指輪とバラの花束を用意して言い直すよ」
「……っ」
「さ、行こうか?」
リリアはもう動悸が強すぎて、息が苦しくなっているのに。
(余裕の表情で、ずるい)
すでにレオン団長はリリアを守るため水面下で戦うときの少し冷たい表情に切り替わっている。
リリアも、大きな深呼吸を一つして、気持ちを切り替えることにした。
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