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異世界で幼なじみともう一度

部屋の鍵

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 リリアとレオン団長は、顔を見合わせた。アイリーンはなんというか、赤い薔薇のような人だ。情熱的で激しい。

(そういえば、アイリーン隊長も結婚してないって言ってたな……。)

 嵐が去った静かさの中、リリアはぼんやりそんなことを考えた。そんなリリアをレオン団長が、腰をかがめて覗き込む。

「リリア」
「え?」

 チャリ……ッと、金属の音がした。レオン団長が待っていたのは、可愛らしいハートのキーホルダーについた鍵だった。

「これ、この部屋の鍵。リリアに持っていて欲しい」

(鍵。重要機密があるというこの部屋の……)

――――ゴクリ。

「なに心配してるの?」
「だって、この部屋重要機密があるって前言ってた」
「ああ、そういえばそんなこと言ったな」

 少し意地悪げにレオン団長が微笑む。

「大丈夫。最近の重要機密のほとんどは、ドラゴンに聖女と大事件ばかり起こす俺の大切な人に関することばかりだから」
「へえ?……へっ?!」

(その人って誰ですか……。思い当たることがありすぎるんですけど?)

 なかなか受け取らないリリアの手に鍵を握らせながらレオン団長がいつものように笑う。

「今日も帰ってきた時、おかえりって言ってくれるとうれしいな?」
「あう……」

 リリアは、思い当たる幾多の出来事への申し訳なさと、鍵なんて貰ってしまった衝撃で返事ができなかった。

「行ってきます。リリア」


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 レオン団長は、言いたいことだけ伝えて、なんだか嬉しそうに出かけてしまった。

「……とりあえず、着替えようかな」

 シワになってしまったドレスを脱いで、アイリーンが持ってきてくれた服に着替えようと袋を開ける。

(あれ?こんなの持ってない)

 そこには、大きく背中があいていて首元にリボンを結ぶタイプの赤い少しセクシーなワンピース。

 ――――マダムシシリーの新作です。今度、お揃いのワンピースで出かけましょう。

(う、嬉しいけど。この格好で女子寮まで帰るの?)

 騎士団訓練場の横を通らないと、女子寮には戻れない。それでも昨日と同じドレスで帰るなんて、とても出来ない。

「やっぱり似合うわよー!」

 騎士団員たちが訓練の手を止めて固まっている。リリアはアイリーンに感謝の意を込めて手を振った。

(ありがとう!でも、この格好みんなに見られるの恥ずかしいんだから大きな声をかけないで)

 リリアは光魔法を全開にして、全速力で駆けて行った。金色の光がたなびいて、逆に目立ってしまったことに気づいたのは、女子寮の私室にたどり着いてからだった。

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