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異世界で幼なじみともう一度
聖女の儀式
「聖女の方から聞きますよ」
「まあ、予想がついているだろうからな」
余裕の笑顔の将軍閣下は、やはり交渉の席のレオン団長の表情に似ている。一方、すっかり仮面を剥ぎ取られてしまったレオン団長は、なんだか可愛い。
「聖女襲名の儀式の日が3日後に決定した。通常は、もっと準備に時間がかかるのだが、あちらさん既に準備万端だったようだな」
「……そうでしょうね。あの、ジル大神官殿はリリアにかなり執着してますから」
クッと忍び笑いがした。今日の将軍閣下は、いつもの威厳はあまり感じられず、上機嫌を隠しもしない。
思春期男子だった木下くんのお父さんは、いつも仕事で忙しく、2人の会話を見たことはあまりなかったがこんな感じだったのかも知れない。
「それもあるのだがな。……防音結界は機能しているか?」
「もちろん」
不機嫌そうにしていたレオン団長が、普段の相手の本心を見抜くような表情になる。
「そうか。実はリリアを聖女にすると色々と不都合がある連中が動き出している」
「それは、俺の方でも掴んでいます」
(え。いつのまにそんな大事に)
リリアは、聖女なんて要らないのに、何故こんな事態になってしまったのかと、拳を唇に当てた。
「ああ、だが聖女を襲名してしまえば、おいそれと手は出せまい。そのためにこれだけ早く儀式が設定されたというのもあるだろう」
将軍閣下はひとつ頷くと、リリアの方に目を向けた。
「リリア。こちらでも手配するが、身辺には気をつけるように」
「はい、お気遣い感謝いたします。閣下」
リリアに今、向けられている笑顔は、本当にいつもの厳しいお方と同一人物とは思えない、穏やかで優しいものだった。
「儀式の最中は、神殿関係者しか入ることができない。当日リリアに付き添える資格を持つものは、パールくらいか?」
「ええ、パールだけは光魔法の素質を見出され、その後騎士団を選んだ神殿出身ですから。おそらく許可は降りるかと」
付き添いとしてパールの名前を挙げながらも、2人とも難しい顔をしている。
「パールとリリアの2人で、通常の任務なら十分な戦力だが、不安が残るな」
「心許ないですね。ジル大神官殿は、守護の魔法は一流ですが、それほど武力が高いわけではないようですし」
2人の視線が交差する。しかし、王家と神殿の力関係は微妙なものだ。それを崩すことはできない以上、打てる手は限られていた。
「神殿周囲の警護を、第二騎士団で請け負うことは」
「ああ、既にその申請は通してきた」
「流石ですね。感謝します閣下」
「ふん。大神官殿から、既にお前からも申請を受けていると聞いたがな。やはりリリアは特別か」
また、否定するのかと思っていたのに、何故かレオン団長は真剣な瞳で将軍閣下を見つめ、はっきりとした口調で答えた。
「当たり前です。リリアは俺の特別だ。必ず守ると決めています。」
将軍閣下の瞳が三日月に細められる。
「道は険しいが、そんな変化は嬉しく思うよ」
リリアは、相変わらずその部分は何故かブレないレオン団長を見つめながら、高鳴ってしまった胸を鎮めようと手を当てた。
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