消えた幼なじみが騎士団長になっていた

氷雨そら

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異世界で幼なじみともう一度

看護師の幼なじみ


 ✳︎ ✳︎ ✳︎

「大聖女の再来なんて……」

 その後、2日ほどベットの上で過ごしたリリア。今夜からようやく女子寮の私室に帰ってきている。

 昨日は、そっとベッドを抜け出して鍛錬に行こうとしたレオン団長を捕まえて叱ってみたり、団員たちに助かって良かったと泣かれてしまったり、それなりに忙しかった。

 なんだか、異様に眠い。まだ、いつもなら眠るような時間じゃないのに。

「やっぱり疲れたの、かな……」

 リリアは強い睡魔に襲われ、眠りに落ちていった。

 ✳︎ ✳︎ ✳︎

――――ピッピッピ ビリリリリッビリリリリッ

 規則正しくなっていた心電図モニターが、けたたましいアラームを鳴らし出す。画面の心電図は、波のような形になっている。

「VF!?」

 七瀬は慌てて廊下を走る。普段は廊下を走る後輩に注意する側だが、こんな時は特別だ。

 病室にたどり着くと、やはりベッドサイドモニターも同じ波形を表していた。

「意識……なし。」

 七瀬は気道確保や胸骨圧迫が出来るようヘッドボードを外しベッド位置を整えながら、後ろから走ってきた、後輩のナースに次々と指示を出していく。

「鈴木さんは救急カートと除細動器!田中さんは主治医の林先生をすぐ呼んで!そのあと他の看護師連れてきて」

 ✳︎ ✳︎ ✳︎

「お疲れ様でした。斉藤主任?」
「うん。お疲れ様。無事助かって良かったわ」

 今日も消灯時間。廊下の電気も消えてしまった。

「記録も終わったし、そろそろ帰るわ。田中さんももう帰れる?」
「あと、一人分だけ記録したら帰れまーす」
「そっか。明日は夜勤入りだったわね。では、お先に失礼します」

 ロッカールームで私服に着替えると、やっと七瀬は表情を緩めた。急変があった日は、いつもあの笑顔に会いたくなる。

 思い出すたびに、胸がギュッと締め付けられるほど切なくなるあの笑顔。

「……あれ、木下くん?」
「遅かったな?お疲れ様、七瀬」

 マンションのドアは鍵が開いていた。木下くんは今日は先に仕事が終わったようだ。

「わ、いい香り。ビーフシチューかな?」
「ふふん。タイミングいいな。仕事が早く終わったから、仕込んでおいた。ほら、早く手を洗っておいで」

 木下くんが自慢げだ。確かに木下くんが七瀬よりも料理上手なのは認めざるを得ない。

 手を洗いに洗面所に行った七瀬は、ふたつ並んだカップを見て仄かな違和感を感じた。

(あれ?いつから一緒に暮らしているんだっけ)

「おーい、七瀬?準備できてるぞ、早くおいで」
「はーい」

 それでも、七瀬はとても幸せだ。大好きな木下くんがいる生活。それはずっと夢見てきた理想の未来。

 大人になっても木下くんは、エプロンが似合う。その顔が一瞬だけ違う誰かに見えた気がした。

(……疲れているのかな?)

 七瀬が目を擦ると、やはり目の前には笑顔の木下くんがいた。

 大好きな幼なじみとの幸せな夜が更けていく。

 ✳︎ ✳︎ ✳︎

「七瀬が好きな新刊買ったんだ。遊びに来る?」
「わ、嬉しいな?じゃあ、一回帰ったら行くね」

 大好きな幼なじみ、最近なんとなく大人びてきた七瀬を誘うのはいつも自分だ。それでも、誘えば嬉しそうに返事をしてくれる。可愛い七瀬。

「…………はあ。俺を騙すには、少し七瀬の可愛さが足りないな」
「……」
「さっさと正体を見せろ」
「あは?もうバレちゃったワ。さすが団長さんよネ」

 七瀬が妖艶な女性へと姿を変える。

「まあ、本命はあの子のほうだから構わないワ。団長さんの魔力が少なくなった今しかあの子の夢に入り込めなかったかラ」
「リリアに……何をした」
「幸せな夢を見せてあげてるだけヨ?目を覚ましたくなくなるほどのネ」

 レオン団長の足元から蔦のような魔法が術者に襲いかかった。

「いつものスピードじゃないわネ。サヨナラ」

 急速に夢から覚めていく。

「リリア!」

 ようやく動くようになった体を叱咤すると、レオン団長は走り出した。
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