54 / 96
異世界で幼なじみともう一度
夜の作戦会議
✳︎ ✳︎ ✳︎
店内は落ち着いた装飾とオレンジ色のランプでいかにも大人な雰囲気だった。
しかし、見るからにレオン団長の様子は機嫌が悪くなっている。
「なんでお前らがいる」
「あら、偶然ね?」
そこにはアイリーンと、ルード副団長がいた。
「2人一緒なんて珍しいですね?」
リリアは、訓練や仕事で必要な時以外に2人が一緒にいるのは珍しく感じた。
一緒にいる時は、本当に仲が良く見えるのに、その他の場面ではアイリーンとルード副団長はあまりともにいるところは見ない。
「ふふ。昔はよく2人で来たりもしたんだけどね」
「…………今日は貸切にしてもらってるから、少し作戦会議しよう」
作戦会議。かっこいい響きだ。
「あの、私も参加して良いんですか?」
「いや、むしろリリアのことだから」
「さ、リリアもいらっしゃい?まだ、お酒は飲めなかったわね。ここのジュース、おすすめなのよ」
リリアはアイリーンの隣に、まだ少し不満げなレオン団長はルード副団長の隣に座った。
「まあ、飲め。レオン」
ルード副団長が、レオン団長に勧めたお酒は、見るからにアルコール度数が高そうだ。
リリアは、ココナッツみたいな風味に、フルーツがたくさん飾り付けられているジュースを飲みはじめた。
(うん、美味しい。少し残念だけど)
リリアも本当はお酒を飲みたい。七瀬の頃から仕事後の一杯のために頑張っていたところがある。
それにこの世界では、16歳はもう立派な大人だ。
(だけど、やっぱり元日本人としての倫理観というか、七瀬が許してくれない)
ルード副団長は、珍しく酔っているようだ。アイリーンがリリアの耳元で内緒話をする。
「ルードったら、忙しすぎて限界みたいだから、少し誘ってあげたの。あまり、不満を言わずに溜め込むタイプだから」
「アイリーン隊長は、ルード副団長との付き合いは長いんですよね」
「……幼なじみってやつだわ」
人差し指で髪の毛をクルクル弄びながら呟くアイリーンの表情は憂いを帯びているようで、なんとなくそれ以上を聞くのは憚られた。
「レオン、伯爵位を受けたら領地はどうするんだ。王都にばかりいるわけにもいかないだろう」
「ああ、そうだな」
「ところで、どこが領地になるんだ」
「レーゼベルグ」
アイリーンとルード副団長が、2人揃って瞠目している。
「あの、レーゼベルグか」
「ああ」
「あらあら、また都合良く使われるのね」
リリアだけが、会話についていけていない。どうも、有名な話のようだが。
「魔獣の森レーゼベルグを含む、その領地はたしかに広大だが……」
「ま、領主といっても騎士団団長がやることと変わりないな。魔獣の脅威から王国を守る最前線だ」
レオン団長は、ルード副団長に注がれた一杯を勢いよく呷った。
「たぶん、俺には性に合っている」
「リリアは……どうするんだ」
「……人間の方がよほど危険だ。魔獣の脅威からなら守ってみせる」
いつのまにか、話題の中心はリリアになったようだ。大人びた表情は、いつものレオン団長とは違う。それは苦しみながら這い上がってきた大人のものだ。
「リリアも一緒に来て欲しい。何もない場所だけど」
「誘って、くれるんだ」
リリアは話の途中、危険だから王都にいるように言われるのではないかと構えていた。
「当たり前だろ?いざとなったら、レーゼベルグの森、全ての魔獣をロンのように可愛いペットにしてしまえばいい」
アイリーンも、ルード副団長も、リリアも多分その瞬間、同じことを考えた。
「その存在って名前つけるとしたらなんだと思う?」
聞いてはいけない気がしたが、聞かずにはいられない。喉が渇く。リリアは小さく喉を鳴らした。
「ふふ、魔王降臨だな」
しかしその問いに答えたのは、何故か楽しそうに笑うルード副団長だった。
「ああ、それも良いな。世界の半分やるからルードは俺の配下になれ」
「「ふははは」」
レオン団長は、見た目より酔っているらしい。そして、いつもは止める役割をしてくれているルード副団長は、さらに酔っているようだ。
「あっ、ずるーい。私にも半分ちょうだい!」
「アイリーンにまで半分わけたら、俺に少しも世界が残らないだろ?!」
アイリーンまで加わっているが、こちらはいつものテンションと変わらない。
「作戦会議がカオスだよ!」
一人酔っていないリリアは、会話に乗り切れない。悔しいのでメニューの上から下まで頼んでひたすら食べることに決めた。
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
全力でお手伝いするので、筆頭聖女の役目と婚約者様をセットで引継ぎお願いします!
水無月あん
恋愛
6歳から筆頭聖女として働いてきたルシェルも今や16歳。このままいけば、大聖女様のあとを継ぐことになる。が、それだけは阻止したい。だって、自由にお菓子が食べられないから! ということで、筆頭聖女の役目と婚約者をまるっとお譲りいたします。6歳から神殿で、世間から隔離され、大事に育てられたため、世間知らずで天然のヒロイン。ちなみに、聖女の力はバケモノ級。まわりの溺愛から逃れ、自由になれるのか…。
ゆるっとした設定のお話ですので、お気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。
巻き込まれではなかった、その先で…
みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。
懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………??
❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。
❋主人公以外の他視点のお話もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。
❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
花言葉は「私のものになって」
岬 空弥
恋愛
(婚約者様との会話など必要ありません。)
そうして今日もまた、見目麗しい婚約者様を前に、まるで人形のように微笑み、私は自分の世界に入ってゆくのでした。
その理由は、彼が私を利用して、私の姉を狙っているからなのです。
美しい姉を持つ思い込みの激しいユニーナと、少し考えの足りない美男子アレイドの拗れた恋愛。
青春ならではのちょっぴり恥ずかしい二人の言動を「気持ち悪い!」と吐き捨てる姉の婚約者にもご注目ください。