消えた幼なじみが騎士団長になっていた

氷雨そら

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異世界で幼なじみともう一度

ドレスは戦場仕様で


 ✳︎ ✳︎ ✳︎

 久しぶりに、高級なほうのマダムシシリーのお店に来た。相変わらずきらびやかさが物凄く、リリアは自分が場違いな感じがぬぐえなかった。

「いらっしゃいませ。戦場の聖女様御用達ということでとても話題になっておりますわ。リリア様にはとても感謝しております」
「えっ。恐縮です」

 リリアはレオン団長とともに、今日は伯爵襲名式の盛装選びに訪れている。所狭しと並んでいるドレスはどれも夢の世界のお姫様が着るものに見えてくる。

「どんなドレスがご希望かしら。何かご希望はあって?」
「あの……戦いやすいものが良いです」

 初めて服装に関してマダムシシリーに自分の意見を言ってみたリリア。

 前回の聖女使用の白いドレスは戦いにくかったし裾も破ってしまって申し訳なかった。その注文内容に一瞬だけ瞠目したマダムシシリーだが、すぐに笑顔になった。

「それではフィッシュテールのドレスに致しましょう。前の方が短いので動きやすいですよ。それに
可憐な印象のリリア様にはとてもよくお似合いです。それに今回はレオン様は白い騎士の正装のご予定ですから、やはり白いドレスがいいですわね」

 白がベースのドレスを持ってきたマダムシシリー。袖の部分は短めのパフスリーブに長い手袋。腰回りに六角形の魔石の原石がチェーンで飾られていく。

 前が短くなっている分見えてしまう脚の部分にも、同じ魔石があしらわれたチェーンの飾りがあしらわれた。

「あの……これ、魔石ですよね。こんなにたくさんつけるんですか」
「この間の魔石は一撃で砕け散ったと言っていただろう。たくさんつけているに越したことはない」

「あの、この色見つけるの時間かかるって言ってませんでしたか」

 ついている魔石はすべてピーコックブルーだ。総額いくらになるのか、もうとてもわからない。リリアはそれについては、思考を停止することにした。

「遺憾だが父へ一生に一度の願い事を使ってみた。あとはドラゴンの素材と交換してもらった」
「は……そうですか」

 ドラゴンの素材と聞いてドキリとしたが、ロンは今朝も元気にリリアと同じ朝食を食べてうれしそうにしていた。以前倒したというドラゴンのものだろう。

「ロンもよろこんで爪の一部と以前生え変わった牙を出してくれたよ。婚約祝いだそうだ」

(まさかのロンの素材と交換されたものだった!!)

 いつも、レオン団長の作ったご飯やリリアの魔力を食べてうれしそうなロンの姿がよぎったが、ドラゴンの素材はとてもとても高価だ。

 貰いすぎではないだろうか。リリアはちらりとレオン団長を盗み見る。

「何考えているかわかってしまうのが困るけど、リリアの魔力だって魔獣たちにとっては喉から手が出るほど欲しい価値あるもののようだからな」

(まあ、お互い自分の体から出たものを交換しているのだからいいということにしよう)

 そうしておくことが一番いいと、リリアは自分に言い聞かせることにした。

 ✳︎ ✳︎ ✳︎

 ドレスは当日の朝までに超特急で仕上げて、着付けにも出張してくれるとマダムシシリーが請け負ってくれた。

 もともと人気が高いマダムシシリーの店、最近では半年から年単位で予約が埋まっているという噂を聞いていたリリアは再び恐縮してしまった。

「いいんだよ。最近あの人はリリアを飾り立てるのに命を懸けているところがあるから。ほかの店に頼みでもしたら社会的に何されるかわからない」

 実はレオン団長とマダムシシリーはレオン団長が子どもの頃からの知り合いで、しかも馬車を魔獣から救ったこともあるそうだ。

 恩人に恩返しがしたいという希望をようやくかなえられたということもあるのだろう。

「それに、あの店の服を着たリリアは本当に妖精のように愛らしいから。俺もまた見ることができて幸せだ」
「ひゃ。やめて、そういうの本当に」
「そ?結婚したら朝から晩まで言われるんだから……慣れて?」

 リリアはレオン団長から毎朝毎晩ささやかれる、砂糖菓子よりも甘い台詞を想像してみる。本当に言いそうだ。いや、確実に言う。

「あわわわ」
「はは。まあ、いろいろ考えないといけないことは多いけど。リリアは必ず守って見せる。…………どんな手を使っても」
「うん?!」
「あ、リリアは気にしなくていいことだから」

 さわやかに笑うレオン団長の笑顔。その瞳が少しも笑ってない気がして、リリアの背中を今日も冷たい汗が流れていった。
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