消えた幼なじみが騎士団長になっていた

氷雨そら

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伯爵領レーゼベルグと魔獣の森

甘い空気と乱入


 ✳︎ ✳︎ ✳︎

 レーゼベルグに着いたと言うなら、ここはどこなのか。レオン団長は、銀の竜騒動や領地のことで忙しいのではないのか。

 ここにいて良いのだろうか。いや、良くはないだろう。

「あの、ここはレーゼベルグのどこなの」
「俺たちの屋敷だよ」

?)

「――っ――――?!」
「リリアの部屋だけは、住みやすいように全部揃えておいた。他の部屋はこれから手をつけるけど、リリアの好きにしても良いよ?ちなみに、執務室と繋がってるから。いつでも会えるよ」

 夫婦の寝室同士が繋がっているというのが、普通じゃないのだろうか?いや、まだ夫婦じゃないから繋がっていても困ってしまうのだが。

 つまり、騎士団の団長室の奥にあるプライベートスペースをリリア用に改造してしまったと言うことなのか。

(というより、これは執務室を通らないと出入りできないやつなのでは?)

「――――リリア、いつもそばにいたいのは事実だけど、リリアの安全のためだから?」
「――また、相談もなく」

 安全と言われれば、思い当たることばかりのリリアは黙るしかない。少しだけレオン団長の瞳が真剣なものになる。

「相談しようと思ってたら、寝たまま起きないから。……リリアが好きそうな感じにしてみた」
「……ごめん、また心配かけたね」

 リリアが言ったのは、内装のことではなく部屋の位置のことなのに。
 そして、なぜリリア以上にリリアの好みを理解しているのかという謎は解決しない。

 記憶力……の勝利なのだろうか?

「カナタは寝てるだけだから平気って言ってたけど、もしかしたら、もう、目を覚まさない……かと、思った」

 レオン団長の声が震える。色が変わるほど強く握りしめられたレオン団長の大きな手。

 そっと添えてみるリリアの手は重ねると子どもの手に見えてしまうほどだ。それでも、リリアは小さな両手でレオン団長の手を包み込む。

「リリア。ちゃんといることが分かるように、レオンって、呼んで」
「……レオン」

 それを聞いて、少しだけ切ない溜息のような一呼吸をした、どこか苦しそうな、レオン団長の笑顔。

 抱きしめられて、いつもより少し長くて深い口づけをした。

 レオン団長の手が、そっと抱きしめていたリリアの背中をするりと撫でる。



 ――――バァン!!



「リリアッ起きた?!」

 相変わらず、ノックもせずに唐突なアイリーンの乱入。

 甘い空気は霧散した。
感想 8

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