72 / 96
伯爵領レーゼベルグと魔獣の森
竜騎士団創設
✳︎ ✳︎ ✳︎
リリアが領主の屋敷に着いたところ、飛竜たちは再び地に降りて羽をたたんだ。そのまま動く様子はなく、人が近づいても攻撃してこなくなったそうだ。
「飛竜たち、私が乗っても攻撃してこないの!それどころか擦り寄ってきて可愛いから魔獣の肉で餌付けしてるの!私、竜騎士になることにするわ」
アイリーンは、また無茶なことをしたようだ。だが、レオン団長は頷くとアイリーンに命令を下す。
「では、アイリーン。竜騎士団創設はお前に任せる」
「任せられたわ」
リリアは、信じられない気持ちでレオン団長の方を振り向く。
「大丈夫だ。アイリーンが飛竜程度に遅れをとるはずがない。であれば、やってみるべきと判断した」
真面目な表情のレオン団長。冗談ではないようだ。
『竜騎士に俺はなる』
(んん?いま木下くんの声が脳裏に浮かんだけど?)
「あの……レオン団長?」
「昔の話は今は聞きたくない」
そうだ、木下くんは七瀬が騎士物語の続編の竜騎士物語にハマった時にそんなことを叫んでいた。
「あの、もしやまた七瀬の余計な一言が尾を引いてるんですか?」
「余計じゃない!可愛い七瀬が『竜騎士と一緒に竜の背中に乗ってみたい』と言ったら叶えたいと思うのは当然だ。俺だってリリアに言われたら即実行だ!」
(レオン団長は、騎士団の強さをさらに高めようと言うだけでアイリーンに指令を下したわけではない気がしてきた)
昔の話を自分からしてしまったレオン団長は、少しだけ目元を赤くしてリリアから目線を逸らした。
それに、この世界には本当にドラゴンも飛竜もいる。やると言ったら、レオン団長ならやりかねない。
しかも、リリアの中で七瀬が『竜騎士団最高!』とまたしても騒いでいる気がする。いや、認めよう。リリアも心が沸き立っている。
だって、竜騎士という響き。その響きに抗い難いのは仕方ないと思う。
(ロンなら頼んだら乗せてくれそうだけど)
それにしても、七瀬が読んでいた物語が、魔王とのラブストーリーとかでなくて本当に良かった。
もしかしたら、『魔王様が素敵すぎる』というつぶやきにより、ここにいるのは騎士団長ではなく魔王だったかもしれない。
実際リリアも七瀬も、聖騎士より暗黒騎士派、勇者より魔王様派なのだから。
(だからって流石にそれはない。ない……よね?)
竜騎士団が創設される。でも、これは現状、レオン団長直属、レーゼベルグ伯爵領の私設部隊だ。
「あの、レオン団長?過剰戦力では」
どこと戦おうと言うのか。
「……戦争は嫌いだ。だが、帝国からリリアを守るためなら俺は準備を怠ったりしない。それに、ここは魔獣があふれる最前線であることを忘れるな」
平和に慣れてしまっていると気付かされるリリア。人の生き死にには七瀬として関わってきたが、そこには機材も人手もあった。
リリアが5歳の時に、帝国との和平が結ばれた。リリアは戦争を知らない。その戦争に、今のリリアと同じ、わずか16歳のレオンが参加していたのに。
「そうだね。幸せな毎日に、そんなこと思いもしなかった。私も騎士団の一員なのにね」
「……リリアには、ずっとそのままでいて欲しい。その願いが叶うよう全力を尽くすんだよ」
レオン団長は、飛竜に近づくとその頭をそっと撫でた。
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
全力でお手伝いするので、筆頭聖女の役目と婚約者様をセットで引継ぎお願いします!
水無月あん
恋愛
6歳から筆頭聖女として働いてきたルシェルも今や16歳。このままいけば、大聖女様のあとを継ぐことになる。が、それだけは阻止したい。だって、自由にお菓子が食べられないから! ということで、筆頭聖女の役目と婚約者をまるっとお譲りいたします。6歳から神殿で、世間から隔離され、大事に育てられたため、世間知らずで天然のヒロイン。ちなみに、聖女の力はバケモノ級。まわりの溺愛から逃れ、自由になれるのか…。
ゆるっとした設定のお話ですので、お気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。
巻き込まれではなかった、その先で…
みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。
懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………??
❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。
❋主人公以外の他視点のお話もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。
❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
花言葉は「私のものになって」
岬 空弥
恋愛
(婚約者様との会話など必要ありません。)
そうして今日もまた、見目麗しい婚約者様を前に、まるで人形のように微笑み、私は自分の世界に入ってゆくのでした。
その理由は、彼が私を利用して、私の姉を狙っているからなのです。
美しい姉を持つ思い込みの激しいユニーナと、少し考えの足りない美男子アレイドの拗れた恋愛。
青春ならではのちょっぴり恥ずかしい二人の言動を「気持ち悪い!」と吐き捨てる姉の婚約者にもご注目ください。