消えた幼なじみが騎士団長になっていた

氷雨そら

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伯爵領レーゼベルグと魔獣の森

竜との盟約


「そういえばリリア!ちゃんと銀の竜は倒しておいたから、この森は俺のものになったんだ。仕方ないからレオンも使っていいぞ」

 レオン団長が、目を見開くのをリリアは不思議なものを見るように見つめた。

「それは……つまりレーゼベルグ領として開拓しても構わないと言うことか」
「レオンはバカだなあ。俺は人間のしがらみなんてわかんないよ。でも、お前のこと弟のように、たまに兄のように思ってるんだ。だからここはレオンの土地でもある」

 レーゼベルグ伯の領地は広大だ。でも、それはレーゼベルグの森の安寧があってこそ。今までそれを成し遂げることができた領主はいなかった。

「なあ、リリア」
「なに?」
「もう、ルードも呼んでここに国を造ろうか」
「え……?」

 冗談かと思ったのにレオン団長の瞳は真剣そのものだ。

「どこか遠くで二人だけで暮らせないなら、ここに仲間達と国を造ってしまえばいい」
「…………魔獣を従えた国ってこと?」
「ふっ。そうだな、ルードに世界の半分をやるって約束してしまったからな」

 その国の王様の名前をリリアは知っている。

「魔王の妃は嫌かな?たしか、七瀬は魔王と悪役令嬢のラノベも読んでたよね?」
「魔王……!!」

 レオン団長の黒歴史を暴露しすぎた結果なのか。というより、覚えてないだけで七瀬はやっぱり「魔王様がカッコ良すぎる」とか言ってしまったのだろうか?

 ちらっと、リリアは唯一の常識人かもしれないカナタをすがるように見た。

 だが、目があったカナタは無常にもこう答えた。

「それもいいな。それなら魔王が勇者に倒されるまではそばに居てやるよ」
「ああ、じゃあ永遠に俺の配下だな。カナタは」

 リリアの預かり知らないところで、話は進んでいく。あとは、ルード副団長に止めてもらう以外にない。リリアは奥の手を使うことにした。

「ね?早く王都に帰ろう。私、マダムシシリーの新作の服を着て、レオン団長とお買い物したいな?」
「今日中に出立しよう」

 まあ、ドラゴンを倒したし、領民の方達ともやることがあるだろう。今日中は無理だろうが、あとで一応止めておこう。

 少しだけほっとしたリリア。しかしなんとかしないと、こうなってしまったレオン団長は、そのチート能力で国の一つを作るくらいはやりかねない。

 いつのまにかロンは、元の可愛いミニドラゴンサイズに戻ってレオン団長の肩に掴まった。

「レオンが王様になれば、俺たちも暮らしやすいだろうな。俺が魔獣を統べるから、騎士も聖女も竜も仲良く暮らす国を造ろうぜ?お前たちの子孫まで俺が見守ってやる。そうすれば俺も寂しくない」
「ロン……あなた」

 ロンも長く生きていく中で、レオン団長のように孤独だったのだろうか。

「そうだレオン!あの銀の竜、建国の祝いの品にやるよ。その代わり帰ったら美味い飯食わせろ?」
「銀の竜の素材一頭分なんて、本当に国が一つ出来上がるよ……。はあ、とりあえず全部テオドールに送りつけるか」

 ロンの尻尾が嬉しそうにパタパタと揺れている。

(竜との盟約……七瀬の読んでいた竜騎士物語の国と世界観が似てきていない?)

 レオン団長をチラリと見る。レオン団長が笑顔でこちらを見た。リリアの脳裏に蘇る記憶。

『もし主人公みたいに竜と暮らす王国に行っても、木下くんと一緒なら幸せに暮らせそうな気がする』

(そんなこと木下くんに言っちゃダメ!七瀬――!)

 しかし、七瀬が言ってしまったことを、今さら取り消すのは不可能だ。ましてやもうリリアは七瀬ではない。そんな無邪気な七瀬の言葉をレオン団長はちゃんと覚えていて、今になって実行しようとする。

 目の前で騎士団長になっていることが、全てを証明しているではないか!

「あの……」
「うん。俺もリリアとなら竜との盟約の王国で幸せに暮らせそうな気がしてる」
「……なんで考えてることわかるの?!」
「困ったことにリリアのことなら大体わかる」

 なんだか、七瀬が語った夢物語の方向に二人の運命が流れてく。しかもリリア自身まで、もし王国ができたなら、飛竜たちともロンともずっと一緒にいられると、騎士団の仲間たちともいられるのだと思い始めてしまっている。

「私がしっかりしないと……いや、あとはルード副団長に任せよう」

 リリアはそう呟いた。

 ルード副団長は本人の知らないうちに、大陸を巻き込む建国騒動の鍵を握ることになった。
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