消えた幼なじみが騎士団長になっていた

氷雨そら

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伯爵領レーゼベルグと魔獣の森

新たな領主


 ✳︎ ✳︎ ✳︎

 銀の竜は騎士団が解体して運んでくれている。リリアとレオン団長が領主の館に帰ると、なぜか領民たちが屋敷を囲んでいた。

「……え?」
「リリア、念のため俺の後ろに」

 しかし次の瞬間、領民たちは全員膝をついた。

「英雄にして新領主レオン様と戦場の聖女様歓迎の宴をご用意しました。どうかご参加ください」

 たぶん、この地の偉い人が出て来て言った。後から聞いたら、長くこの地に暮らす一族の長でガラナさんというらしい。

「そうか。感謝する」

 差し出された盃を躊躇いなく煽るレオン団長。毒とか入ってたらどうするのか。

 リリアがハラハラしているとレオン団長が安心させるような笑顔をして、小声で教えてくれた。

「心配してくれるの?闇魔法のせいで毒は効かない。まあ、テオドールのポーションには二回ほどやられたけど」
「うっ」

 それを言われるとリリアも弱いのだ。でも、改めて生きていてくれることに感謝する。

 レオン団長の潔さと自分達への信頼を示した姿に、領民の見る目があっという間に変わる。

 レオン団長は人心を掌握する術に長けている。たとえ毒に耐性がなくてもレオン団長ならこの場面では潔く盃を受けただろうとリリアは思った。

(かっこよすぎて危うい……)

 たぶん、仲間を尊ぶその判断が時にレオン団長を何度も窮地に追い込むのだろう。その時リリアは……。

(ダメだわ!同じようなことをしでかして一緒に窮地に陥ってそうな気がする。……ルード副団長助けて)

 たぶん、この先レーゼベルグ領が生き残るには、ルード副団長の力が不可欠だろう。

 来て、くれるだろうか。絶対来てもらおう。

「俺はこういうの苦手だからそろそろ」
「あっダメ!一緒に食べようカナタさん!」

 カナタが去ろうとしたのを、服の裾を掴んでリリアが引き止める。

「命令……ですか、姫」
「命令じゃないと一緒に食べてくれないんですか?」

 アメジスト色の瞳が、細かに揺れている。何だかこんな風に動揺するカナタは初めて見るかもしれない。

「一緒に食べるって……俺が毒でも入れたらどうするんです」
「え、入れないでしょ?」
「……入れま、せんけど」

 今まで仕えてきた人たちと食事もしたことないのかと、リリアは不思議に思う。仲間……なのに?

「俺に二人とも殺されかけておいて呑気すぎませんか?あんたらすぐ騙されて死にそうですよ」
「ふふっ。カナタさんが守ってくれるから平気」
「本当バカな奴らだなっ。いいよ、一緒に食べればいいんだろ?!」

 レオン団長が苦笑している。

「俺も仲間とはともに食事が摂りたい。あと一つだけいいか?」

 そのあと、カナタの耳元でレオン団長が何かを囁いた。まあ、大方リリア絡みな気がするが。

「……そんなわけあるか!」

 カナタは叫んだがその耳は少し赤かった。
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