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伯爵領レーゼベルグと魔獣の森
宴
宴は夜遅くまで続いた。
何より驚いたのは、この地では金色の竜は人を救う聖獣として崇められていたことだ。
「まあ、特別人と関わってなかったけど、目の前に襲われてる人間がいたら、さすがに助けたこともあったかな」
実にロンらしい理由だとリリアは思う。ついでに初対面の時にリリアを連れ去ろうとしたことを聞いてみたら、それは初めての衝動で戸惑ったのだとロンは言った。
「まあ、気をつけろ?リリアの魔力は俺たちにとって抗い難い魅力を放ってる」
「そんなフラグ立てるのやめようよ……」
「仕方ないから俺が守ってやるよ」
「ありがとう、ロン。頼りにしてる」
そんなふうに言えば、ロンの尻尾がパタパタ揺れる。全くロンは本当に可愛い。
それから、宴の輪に目を向けると、カナタが領民たちにもみくちゃにされて可愛がられていた。
覆面を外して、人の輪に溶け込んでしまえば、カナタは少し不器用な普通の少年にしか見えない。まるで、放っておけない弟のようだとリリアは思う。
(なんで、強い人にしか仕えないなんて決めているんだろ?)
それにあの年で、非情な判断と戦闘力。帝国の皇帝に仕えていたというのも気になる。
「でも、カナタさんはまだ幼いわ……」
「姫、悪いけど俺とあんたはたぶん一、二歳しか違わないからな!」
いつのまにか、宴の輪を抜け出したカナタがリリアの隣に立つ。
それにしても、なんでリリアを姫と呼ぶのか。聞いてみると、首を傾げたカナタはなんでそんなことを聞くのかという顔をした。
「主の婚約者は普通、姫だろ?……それとも奥方とお呼びいたしましょうか?」
「いえっ姫の方で!さらにできればリリアと!」
「あー、それは掟で出来ない。じゃ、姫でいいな?」
(掟……?)
聞きなれない言葉だ。だけどもしかしたら、カナタの少し一般とずれた基準も、強いものにしか仕えないという言葉も、そのことが関係しているのかもしれない。
「じゃあ、そろそろ俺は陰から見てるから。もう十分付き合っただろ。こんなに疲れたのいつぶりかな」
「うん、おやすみ」
「……姫がちゃんと寝たらな?」
そう言って、またいつものようにカナタは消えてしまった。魔法なんだろうか。むしろ忍術に近そうだ。
「リリア……」
(あら?珍しく酔っているのね。顔が少し赤いわ)
いつのまにか宴も終わったようだ。ロンも部屋に帰ってしまい、領民たちも解散して、今はリリアとレオン団長しかいない。
「俺は、本気だ……」
「何が、本気なの?」
「……魔王と呼ばれたって構わない。リリアを守るのに、まだ俺の力が足りないのは痛感した。ここに俺たちの国を造ろう」
「レオン団長……」
少しだけお酒の香りがする。抱きしめてきたレオン団長の体温もいつもより少し熱い。
「自分でもこんなに重い人間なことに嫌気がさす。リリア、嫌いにならないで」
「私がレオン団長を嫌いになるなんてあり得ないよ。何が不安なの」
「リリアの全部が欲しい。リリアを傷つける全てを許したくない。俺のそばでだけ笑っていて欲しい……。こんなリリアにひどく執着する自分が嫌になる」
困ったことに、大好きな人にそこまで思われたらむしろご褒美ではないのかそれは……。
「私もレオンの全てが欲しいよ?」
「――――そんなこと言うと、ますます執着してしまうよ?」
「うん。周りに迷惑かけない程度にほどほどにね」
またも、眉を下げたまま笑うレオン団長が呟いた。
「難しい注文するな……。まあ、そんなリリアのおかげでまだ自分を抑えることが出来るんだけど」
久しぶりに合わせた、今夜の口づけは少しだけ大人の香りがした。
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