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伯爵領レーゼベルグと魔獣の森
ウエディングドレス選びその前に
✳︎ ✳︎ ✳︎
「ま、まあ!まあまあ!」
さっきから、まあ!ばかり言っているマダムシシリー。だけど、その気持ちはわかるとリリアも思った。
今日は、リリアのウエディングドレスの打ち合わせだ。数日前にレーゼベルグを出たという連絡はあったが、レオン団長はたどり着いていないけれど。
チラリと横目に見ると、カナタとヒナギクが完全に固まってしまっている。
ブロンドにアメジストの瞳のカナタ。白い髪にルビーの瞳のヒナギク。すでに白いお揃いの盛装に身を包んでいる二人。
(マダムシシリーの気持ちわかる。これは可愛すぎるでしょ?!)
自分のウエディングドレス選びよりも、心浮き立つものがあるなんて。レオン団長の気持ちがすごくよくわかる。
白が可愛いけれど、不思議の国とか御伽噺っぽい格好も捨てがたい!
「なあ、主と姫が結婚式の服選ぶ間の護衛のつもりだったんだけど……」
「な、何の裏があるの?……あっ、それとも式典中に誰か始末して欲しい人でも?!」
ヒナギクの思考回路が物騒すぎる。「普通に結婚式に参加して欲しい」とリリアが伝えると、ますます動揺したヒナギクが叫ぶ。
「バッ……バカなの?!姿変えられる私はともかく、カナタを表に出したら隠密しにくくなるでしょ?!」
「えっ…………?」
「はっ…………?」
リリアとヒナギクは、お互いに予想外の答えを聞いてしまったかのように固まった。
「あの、聞いてないの?」
「な、なにを?」
ヒナギクはどんな予想をしてしまったのか、青ざめている。
「カナタは明日から第二騎士団所属だよ?」
「は?だって王国の民じゃないのよ私たち」
どうも話が噛み合わない。リリアは小首を傾げる。レオン団長やカナタは、ヒナギクに何も話していないのか。
「え?だって、二人が望むなら今日から王国の民だ。俺に任せておけってレオン団長が言ってたじゃない」
「は?あんな酔った主が言ったことなんて、冗談だと思うに決まってるでしょ?!バカなの?」
どんなに酔っていても、たぶんレオン団長がそういうことを言った時は本気だ。
明日からカナタが騎士団所属ということは、すでに国民登録の手続きは済んでいるに違いない。
むしろ、団長という立場に縛られてない一言だからこそ信憑性があるのではないか。
「ヒナギクを私専属の侍女にするって話は……」
「そんなの聞いてない!得体の知れない人間を真横に置くなんてあり得ない。危機感がなさすぎるわ!」
「そうか?ヒナギクは侍女も似合いそうな気がするけどな」
「えっ?」
見る間にヒナギクが顔を赤らめる。
「バッバカなの?!」
たぶんカナタは無自覚だ。ちょっと、木下くんの無自覚な精神攻撃を思い出してしまうリリア。
でもきっと、ヒナギクとなら上手くやっていけそうな予感がする。
「ヒナギクさん……嫌かな?」
上目遣いに頼むリリアに、カナタもヒナギクもしばし言葉を失う。
「ねえ?これ無自覚……なんだよね?」
「ああ、それが姫の恐ろしいところだ。我が主も、そんな姫のせいであの通りだ」
しばしの沈黙に耐えられなくなったのはヒナギクの方だった。
「わっ、わかったわよ!仕方ないから侍女でも何でもなってあげる!でも、さん付けはやめなさいよね!」
「わあ。嬉しい!ヒナギク、よろしくね?」
無邪気なリリアの様子に、ヒナギクとカナタは自分たちがしっかりしなくてはと決意を固めるのだった。
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