消えた幼なじみが騎士団長になっていた

氷雨そら

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伯爵領レーゼベルグと魔獣の森

いつも誰かを探していた


 その後からレオン団長も女子寮に来た。そして、思うところがあったのだろう。呆然とだだ甘な雰囲気を垂れ流す両親を見つめていた。

 これで少しは普段の自分の行いを反省してくれたらいいとリリアは思う。

(二人きりの時ならいいけど……)

「レオン!立派になって!」
「母上はお変わりなく」

 感動の親子の対面、レオン団長に抱き着いたリーナお母様の姿を見た閣下が、苦虫をかみつぶしたような顔をしている。

(ええ……いつも大人な閣下が、お母様の事になったとたん大人げない)

 そして、閣下の遺伝子は確実にレオン団長に遺伝しているとも思った。

「さ、再会も済んだからさっさと招待状を書き上げてしまいましょう」
「せっかく会えたのにリーナ!家に帰ろう?!」

 少し冷めた目を将軍閣下に向けてリーナお母様が口を開く。

「仕事中ですよね。エディ?」
「仕事なんて君のためなら全てなげうっても構わない!」
「ふふ……夜には帰ります。そこからは貴方だけと過ごしますわ?早く仕事を終わらせて下さいませね?」

 それを少し居た堪れない様子で聞いていたレオン団長が、何か言いたげにリリアを見つめている。

「レオン団長、私も後で団長室に行ってもいいですか?ちゃんとお仕事終わったらですけど」

 その言葉を聞いた二人は、猛ダッシュで仕事へと帰っていった。
 リリアとリーナお母様は顔を見合わせる。見た目で似ているのはその瞳だけなのに、本当にそっくりな親子だ。

「本当に、あの子はリリアさんの前だとあの人にそっくりだわ。もしも、閉じ込められそうになったら私のところに来るのよ?かくまってあげるわ」

 そんなことを言うってことは、閣下に閉じ込められそうになったことがあるのだろうか……。リリアの表情に気が付いたのか、困ったようにリーナお母さまが笑う。

「隣国に帰ろうとしたときに、追いすがってきて少しね……」

 まあ、たしかにあれだけの溺愛で、閣下がリーナお母さまを諦められるとも思えない。

「今日ここに戻るまで、長い間手紙をかかすこともなかったのよ、あの人」
「それでも、帰るっていう選択肢はなかったんですか……?」

 少し踏み込みすぎているかもしれない。それでも、そこまで求めてもらえるならとリリアは不思議に思っていた。

「たぶん私が戻れば、あの人は今の地位を捨ててしまう気がして。将軍と、騎士団長の二人にとっての足かせでしかないと思っていたから」
「じゃあ、なぜ今になって……?ごめんなさい。差し出がましいとは思うのですが」

 再び微笑んだリーナお母さまは、やはり女神のように美しかった。

「リリアさんも聖女として生きて行くなら力になれるかと思って」
「お母様……」

 そう言うとリーナお母様は、美しい金色の魔力をその身に纏った。リリアの魔力よりも少し白銀に近い美しい色。
 誰が見ても光の魔力を持つ者の中でも、一級の能力を持つことがわかるだろう。

「聖女に戻ることも考えたけれど、当時の神殿の上層部は欲に塗れていた。私が戻ったら侯爵家を快く思わない神殿の勢力に利用されてしまうから。レオンが闇の魔力に目覚めて祖国に戻った後、すぐに力が戻ったけど隠していたの」
「お母様……」

 そして小さく息をつくと、リーナお母様はリリアを見つめ愛し気に目を細めた。

「――――レオンが小さい頃、人が多くいる場所ではいつも誰かの姿を探しているみたいだった。きっと貴女の事を探していたのね」

 リリアの青い瞳から涙が零れ落ちた。レオン団長がずっと自分を探していたことは聞いていたけれど、こんな形で改めてリーナお母様の口から聞くとは思わなかったから。

 小さなレオン団長が七瀬を探している姿が目に浮かぶみたいで。

「さ、涙を拭いて。招待状をきちんと出して、みんなに祝福された結婚式をきちんと挙げてほしいわ。レオンの幸せな結婚を夢見ていたから」

 少女のようにリーナお母さまは笑う。その笑顔は、今まで苦労をしてきたことを感じさせないほど明るいものだった。
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