破滅フラグから逃げたくて引きこもり聖女になったのに「たぶんこれも破滅ルートですよね?」

氷雨そら

文字の大きさ
42 / 109

文化祭

しおりを挟む

 ✳︎ ✳︎ ✳︎

 文化祭当日は、いい天気でどこまでも高くて青い秋の空だった。

 生徒会に所属しているから、前日まで調整に走り回っていたけれど、クラスの出し物にはあまり参加できていなかった。

 そしてすれ違う人が、私たちをチラチラ見てくる。その理由、たぶん兄が手を離してくれないからです。

「お兄様、さすがに恥ずかしいですよ」

「知らない人間が多い。リアナは少し自覚を持て、何かあったらどうする」

 今日も兄は過保護すぎる。でも、それを聞いた私は、少しだけ背筋を伸ばした。

「あ!リアナ様……と、フリード様」

 Sクラスの出し物は喫茶店だ。見た目は完全にヒロインなフローラの猫耳メイド服姿に人集りが出来ている。

 それ以上に、メガネと瞳を隠す前髪をやめたマルクくんの猫耳執事姿に恐ろしいほどの人集りが出来ているのが気になる。いや、ヒロインよりも可愛いのダメだろ?でも、絶対あとで注文取って貰いたい。

「なあ、俺なにかフローラの気に障ることしたか?急に距離感がすごい遠くなったんだが」

「たぶん、今のお兄様は何もしてないです」

「今のってなんだよ」

「……気に障ったわけではないと思います」

 たぶん、夢の中でどのルートでも不憫すぎる兄を見てしまい、フローラとしてはどう関わればいいかわからなくなったのだろう。

 フローラの様子から、甘い甘ーいフローラと兄とのハッピーエンドは見てなさそうだが。見てしまったらどうなってしまうのか。

 最近ヒロインぽい言動が散見しているフローラ。いよいよ脳筋ヒロイン返上かと大変興味ある。

『あなたのそばで、あなたの力になりたいから全力を尽くすんだ』

 また思い出してしまった。妹としては居た堪れない兄の甘い台詞!

「リアナ様と……フリード様はこちらに」

「毎回、名前呼ぶ前のその沈黙なんなんだ?」

「――フリード様は、とにかく夜道に気をつけて下さい」

「えっ、そこまで嫌われることしたか俺?!」

 たぶん、フローラは純粋に夜道に気をつけて欲しいだけなのだと思うが、おもしろいので放っておく。

 奥の方に案内されると別にスペースがあって、生徒会のメンバーが集まっていた。

「ディオ様!ランドルフ先輩。ライアス様とレイド先生までなんでお揃いなんですか?」

「俺はここのクラスだろう?」

 そういうライアス様も執事姿だ。何着ても似合いますね?猫耳じゃないのか残念。

「俺はここのクラスの担任だ」

 まあ、それもそうだわ。じゃあ、あとのお二人は?

「リアナに会いたくて」

 ディオ様のそういうの最近だんだんと慣れてきたんですから。……顔赤くなってないよね?

「ディルフィールに会いたくて」

「お兄様に……ですか?」

「いや、普通にリアナ嬢の方にだけど?!」

 そうか、残念。ため息をついていると、兄にも少し睨まれてしまった。

 そのあとは、私も猫耳メイド服で参加した。なぜか遠巻きにすごい人集りが出来ていた。まあ、たしかに王太子の執事服はかっこいいけど遠くから鑑賞。その気持ちは良くわかります。

 楽しい一日は過ぎていった。あれ?そういえば文化祭って何か重要なイベントなかったっけ?

 あれ?兄とフローラが消えた。どこに行ったんだろうか?そっと廊下に出ると、二人は空き教室にいた。

 あっ。文化祭あとの告白イベント!?まさか、兄とフローラが?

「なんで最近避けるんだ?フローラ」

「……避けて、ないです」

「いや、ここ最近の距離感おかしいだろ。何かしたなら謝りたい」

「……じゃ、死なないでください」

 フローラはそれだけ言うと、ポロッと涙をこぼして走り去ってしまった。とても追いつけないスピードで。

「そこにいるのわかってる、リアナ。一体なぜフローラが泣いてたかと、なんで俺が死ぬ前提なのかがわからないんだが」

「お兄様は、もう少し自分の事を大事にすべきだと思います」

「……ますます意味がわからない」

 あとでフローラと、兄を守るための作戦会議でもしようそうしよう。たぶんあの様子だとフローラは世界樹の塔のトレーニングルームにいるはず。

「私、もう少し片付けがあるのと、今日は世界樹の塔に泊まるので先帰って下さい?」

「俺も調べ物があるからちょっと王宮へ行ってくる。また、明日だな?」

「また明日、お兄様」

 片付けが終わり教室から出ると、美しい夕日だった。階段を降りてしまう前に、思わず空き教室に入り窓から夕日を眺める。あれ?誰か来た?

「リアナ、ここにいたんだ。探したよ」

「ディオ様?」

「今日は楽しかった?」

「すごく楽しかったです!」

 ディオ様の影が教室の床に長く伸びている。オレンジ色の光の中、ディオ様が微笑んだ。え?なにこれ。尊すぎて息が止まりそうに苦しい。

「リアナが楽しいと俺も嬉しいな」

「……ディオ様も楽しかったですか?」

「ふふ、可愛かったな。リアナの格好。……楽しかったよ、とても」

 今だけは普通の学生のように。一年目の文化祭は、ディオ様のスチルレベルの光景を目に焼き付けて終わりを迎えた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!

未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます! 会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。 一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、 ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。 このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…? 人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、 魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。 聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、 魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。 魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、 冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく… 聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です! 完結まで書き終わってます。 ※他のサイトにも連載してます

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。

雨宮羽那
恋愛
 聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。  というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。  そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。  残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?  レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。  相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。  しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?  これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。 ◇◇◇◇ お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます! モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪ ※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。 ※完結まで執筆済み ※表紙はAIイラストです ※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜

伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。 ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。 健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。 事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。 気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。 そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。 やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。

「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。 そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。 「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」 こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。 けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。 「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」 夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。 「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」 彼女には、まったく通用しなかった。 「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」 「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」 「い、いや。そうではなく……」 呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。 ──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ! と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。 ※他サイトにも掲載中。

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

処理中です...