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二年生の無双
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一年生達が見守る中、二年生の試合が始まろうとしていた。補助魔法をとにかく極めようと決めた私だが、四天王最弱の名は欲していない。
だからこそ、鍛錬だって手を抜きはしなかった。
兄に倣って鍛錬の最中には、魔獣の群れにも単身突っ込んだ。まあ、気づいたら兄とディオ様がなぜか戦いに合流していたから驚いたけれど。
剣を握る手にも力がこもる。
「リアナ様。最近だんだん魔力が体に馴染んできた気がします。今年は優勝狙っちゃいますよ!」
フローラは、思い通りに瞳を七色にして聖女の力を発揮できるようになった。
だが、基本的には他人の補助をするのは相変わらず苦手らしい。
「補助魔法を使ってた記憶はあるんですけど、実際になるとね。直接触れていないと、調整が難しいんですよ」
そんなことを言っていたが、その結果自分をゴリゴリ強化して戦っているのだろうか。
ちなみに今年のフローラは、ジャージではない。白い聖女の戦闘服。ミニスカートのドレスだ。私もお揃いなのだが、着る人間が違うとここまで変わるものか。
――――恐るべし、ヒロイン品質。
ロイド様に、戦いの教えを乞うための条件として、て、聖女としての立ち居振る舞いを叩き込まれているらしい。
(さすがロイド様、フローラの扱い方をすでに心得ているのね)
妙に納得してしまい、審査員の席を見るとディオ様が座っていた。去年の総合優勝、そして聖騎士として審査を依頼されたそうだ。
あまりのご尊顔の美しさや、聖騎士の白い騎士服が素敵すぎて、登場した時には会場のどよめきがおさまらず、会場は騒然となった。
今となっては私もだいぶ見慣れてしまったが、初めは私も声をかけられるたびに緊張で固まってしまったものだ。
(もう、あれから一年以上経つのね)
ディオ様の周りに、なぜか寄り添うように蠢くドラゴンの呪いの蔦は今日も健在だ。私の心臓で、ザワザワしている呪いの蔦も。
これだけ日に日に締め付けが強くなっていることを考えると、もしかしたら、来年はこの舞台で今のように戦うのは厳しいかもしれない。
これよりひどい状態で、ドラゴンを秒で倒したと言っていたディオ様。やっぱり、強さがバグっているとしか言いようがない。
それに、私のことを信じて、話をしてくれたミルフェルト様のためにも、必ず呪いを解いてみせる。
そう思っているけれど、時間は止まってはくれない。
それでも、どこか諦めて引きこもっていた日々より今の方がずっと良い。
私の名前が呼ばれた。今日、まだ戦うことができるなら全力を出そう。
私は、七色の魔力で身体強化をした。
✳︎ ✳︎ ✳︎
ベスト4は、ライアス様、フローラ、マルクくん、私と去年と変わらない顔ぶれだった。
「まあ、予想通りと言ったところか」
危なげなく勝利してきた、ライアス様。というより、メイン攻略者の本気を見たレベルで強かった。
「今日こそ、ライアス様の俺様っぷりをへし折って見せます!」
フローラは、いつも以上に気合が入っている。そんなフローラに、口の端だけを上げて、ライアス様が微笑む。
「お前にだけは、負けたくない。何があっても」
「むむっ。何でですか!」
「お前にだけは、負ける姿を見せたくない」
「…………え?」
えっ?!ライアス様、その台詞、今度こそ期待してもいいんですか?!頑張ってください!フローラを幸せにしてあげてください!
「ま、俺とお前の決着は決勝戦でだな?マルクに負けるなよ?」
フローラは、蜂蜜色の瞳を見開いたまま動かない。
「…………え?そんなの私だって、ライアス様にだけは見せたくないです」
呆然としたままのフローラは、再びそれだけつぶやいた。
そのあとは、フローラは気持ちを切り替えたのか、闇と光以外の全属性魔法を駆使するマルクくんを下した。
フローラが戦うその姿は、七色の光を放って、どこまでも美しく強かった。聖女の覚醒を、会場にいた誰もがその目に焼き付けた。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「ライアス様、よろしくお願いします」
「ああ、こうやって戦うのは久しぶりだな?」
出し惜しみしても、絶対勝てない。魔力回復の魔法が手に入らなかったのは残念だけど、ここで全力を尽くす。
去年のように瞬殺されるのだけは絶対いや!
そう思ったのだが、ライアス様は先程の宣言通り異様に強く、私は残念ながら瞬殺されてしまった。
「やっぱり、強いですね」
「お前に呪いの影響がなければ、勝てたか分からない」
そんなことはないと思うけど……。俺なら当然だと言っても許されるのに。むしろ、そう言ってもらえたらもっともっと、ときめくのに。
「リアナ、お前は少し自分の実力と価値を理解したほうがいい」
地べたに座り込んでしまっていた私に、手を差し伸べ立たせてくれながら、ライアス様はエメラルドの瞳で私を見つめる。
「……ライアス様?」
「お前を失うわけにはいかない。だからこれからもずっと国のために力を尽くせ」
ライアス様の言葉は、ゲーム内のどの台詞とも違っていた。
「そうですね。まだまだ修行中の身ですが、命ある限り力を尽くします」
たぶん、ライアス様の治世は輝かしいものだろう。そんな予感がする。そんな国で、聖女として役に立つ未来は、とても素敵なものに思えた。
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