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聖女、王宮に招待される 5
* * *
シルビアは、目覚めて異変に気がつく。
寝ていた場所は、部屋の床でも自室のベッドでもない。
なぜか、ライナスの腕の中だ。
それだけではない。
先日よりも装飾が多い、銀とパールに彩られた白いドレスを着ている。
明らかに、なにか大きな儀式に参加するような格好だ。
「あの、ライナス様?」
シルビアが起き上がろうとすると、ライナスの腕が力を強めた。
どうあっても起き上がり、そこから逃れるのは難しそうだ、とシルビアは再び腕の中に収まる。
「……知らないのだろうな」
ささやくようなライナスの言葉は、とても傷ついて、震えているようにすら思える。
「……ライナス様」
約束を守らなかったから、なのだろうか。
こんな声を聞きたかったわけではないのに。
その瞬間、不意に腕の力が緩んで、シルビアとライナスはまっすぐ見つめ合う。
「もう、目覚めないのではないかと、俺がこんなにも怯えていることを」
「眠ってしまうだけです。いつか目が覚めますよ」
「あの人も、眠っているみたいだった」
「あの人?」
「……そう、俺の母上も」
次の瞬間、ライナスはシルビアを抱き上げたままそっとしゃがみ込む。
そのときには、もういつものライナスだった。
「……約束を守らない、困った妻の対処に難儀しているのだが」
「ライナス様」
「シルビアは、よい意見を持っているか?」
「……二度としません」
シルビアは、本当に幼い頃、面影の母がしてくれたように、そっとライナスの頬に口づけた。
そして、今度は自分からライナスの太い首に腕を回す。
「ごめんなさい。ライナス様が、私の行動でそんなに不安になるなら、もうしません」
「……出来ないことを言うなよ。それに、責めているわけではない」
「ライナス様?」
「……よく知っている。俺も、自分の役目を果たさないわけにいかないから」
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そう、ライナスと出会った場所は、隣国だ。
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「……あの」
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「何日、眠っていたと思っている」
「え? 一晩くらいなのでは」
「丸二日だ。今日は、陛下からの招待を受けている。俺たちの結婚を祝う夜会だそうだ」
周囲の揺れが止まる。
それは、馬車が目的地に着いたということなのだった。
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