光の花

橘天音

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手紙

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和膳先生は、真面目な事で出版社からも好かれてきた。だが、売れ行きは良くなく、ずっと売れない作家なのだという。だから、今回書く作品でちゃんとヒットしなかったら小説家を辞めるのだという。

話を受けて、私は速攻宣伝をし始めた。あの表現力を失いたくなかった。内太ふぉーくの名は伊達じゃない。腐っても人気作家だ。その人気作家がハマっている作家と聞いて、読者様が飛びつかないはずがなかった。
私が一言出版社に頼んで、和膳先生の本の帯に私の名前を載せてもらったのだ。
すると、やはりふぉーく効果。
みるみるうちに和膳先生は人気作家になった!…という話でもなかった。
たしかに、売れ行きそして知名度はぐんと上がった。しかし、彼の表現が少し難しいのか、大人の恋愛本として売れるようになった。という感じだった。
少し悔しく思っている中、「影踏みワルツ」を完成させ、新しく「シスターの遺言」を作るようになった。
すると、ある日マネージャーから一通の手紙をもらった。
差出人は和膳先生。手紙に丁寧に牡丹の簪を添えて。
というのも、私が以前マネージャーさんに、武士の道を推しすぎたため、和膳先生にその話をしたらしく、今回、「この簪を渡してください。」と言われたのだそうだ。
私は舞い上がって死にそうだった。そんな牡丹の簪一つだったが、その心遣いがとても嬉しかった。
私がされたいプロポーズNo. 1の事をしてくれたのだ。和膳先生は。
手紙を開けてみると、パソコンで打った文字だったが、丁寧に内容が記されてあった。

内太ふぉーく先生

拝啓       夜空に星が瞬き、花火の火薬の香りが漂う季節になってまいりました。先生は、いかがお過ごしでしょうか。

初めまして。和膳と申します。
人気作家である、内太ふぉーく先生のお目にかかれて光栄です。
この度は、私の著書"武士の道"をご愛読くださり、誠にありがとうございます。
また、出版社の方々に自らご自分の名を私の本の帯に入れて欲しいとおっしゃってくださったという話をお聞きし、お陰様で、どうにか小説家として生き残ることができました。本当にありがとうございます。この感謝の想いはどうしても抑えきれず、 
マネージャーさんと相談したところ、このようにお手紙を書かせていただくと共に、ふぉーく先生の本を全て拝見させていただきました。

拝啓の季節の一文が素晴らしすぎると共に私はドキリとした。和膳先生に読まれたんだ。私の本を。

とても面白いミステリー小説で、自分の作品のことも忘れ読みふけるほどでした。今度是非お茶にでも行きたいものです。これからも応援しております。
最後に、マネージャーさんに伝えて、牡丹の簪もお送りいたしました。貴女様の大好きな武士の道の、娘さんとの結婚することが決まった日の想い出の品ですね。貴女様のますますのご活躍をお祈りしております。                                                                                                        和膳

私はこの手紙がとても美しいと思ってしまい、その場で鼻血が出そうなほど、胸を打たれてしまった。
私はやはり盲目的に恋をしたのだ。この人に。 
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