耳が聞こえない公爵令息と子爵令息の幸せな結婚

竜鳴躍

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【終】幸せな人生

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僕は生まれつき耳が聞こえない。
重い喘息と小麦のアレルギーもあって、体も弱い。


だけど、公爵家に産まれて、お父様もお母様もみんなが愛してくれたから、何不自由なく育った。

お父様が絵の先生を手配してくださって、お城に飾る絵を描く仕事ができるようになったし、学校に行けなくても、お父様お母さまやお兄様たち、家庭教師の先生が勉強を教えてくれて、サザエルのお手伝いができるくらい、読み書きも計算もできる。

大好きな人とも結ばれて、かわいいガブリエルにも出会えた。


僕は本当に、恵まれてる。





施設で育った子のうち、数字が強い子や文章を書くのが得意な子は、試験を受けて、お城の事務官になった。

足が悪くても、手が短くても、関係ない。

お城が積極的に登用することで空気が変わり、段々、障がいがある人がいて当たり前の社会になりつつある。


勉強が苦手だけど力のある子の中には、格闘家になった子もいるし、そのマネージャーは勉強ができる子だ。


施設が経営するパン屋さんや縫製施設で働く子もいる。


ガブリエルには、僕や施設の子、いろんな人たちを見て、偏見のない子に育ってほしい。




僕は貴族の子だし、お兄様は王太子だから、僕に面と向かって意地悪を言う人はいないよ。

だけど、今でも、よく思われていないんだろうな。とか、正当な評価をもらえてないな、ってことはよくある。


大体は僕が気づかないうちにサザエルとかお兄様たちがやり込めてるんだけど、僕以外の人たちは、きっと反論できずにもっともっと悲しい思いをして、そのまんまだと思うの。


サザエルは、世の中はそう簡単に変わらないって。

でも、世の中を変えるきっかけに、僕がなれるんだって。



耳が聞こえなくても、しゃべれなくても。

僕が幸せに生活して、活躍することで、世の中の目が変わる。

そして、それは、施設で学んでいる子や、まだ不遇な扱いを受けている人たちの道しるべになるんだって。



嬉しいなぁ。








「マナ。やっとできたね。」


コクコク、と頷く。


「すごい、でこぼこ、穴が開いてるっ。これで、分かるんだね!」


3歳になったガブリエルが、出来上がった目が見えない人向けの教科書を手に取って、ピョンピョン飛び跳ねた。

去年は、やっと手話が完成した。


僕は唇を読むのに慣れちゃったけど、話したいときは、筆談じゃなくて手話を使うことも増えてきた。


普及してくれたらいいな、と思う。


ガブリエルは元気いっぱいで、僕が見えないところで何かあったらどうしようって心配だけど、本人はちゃんとわかっていて、僕が見えないところにはいかない。

しっかりした息子で助かっちゃう。



「お父さんもお母さんもすごいなぁ。何もないところから作るのはとても大変だって、おじいさまもおばあさまもおっしゃってたもの。」

「作っても、みんなが使ってくれなかったら意味がないんだよ。これを改良したり、皆に使ってもらえるようにしたり。ガブリエルの孫の代くらいまでかかっちゃうかも。」


「ぼく、頑張る!任せて!」


えっへんと胸を張る様子が愛らしい。




「 さ ざえる」


「!マナ!?」


ちょっとだけ、しゃべるのも練習したの。ちゃんと発音できているかしら。


「がぶ りえる」

「はい!」

「だい す き!」

3人で笑って、ぴったりくっついた。


僕は幸せだ。



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