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本物の王子
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「………ッ。まさか、こんなっ。」
王子二人の暴走は、2匹の魔物を怒らせるだけで、最初の咆哮で気絶した彼らは役になど立つはずもない。
スペシャルは情けなくも剣を握りしめたままひっくり返って泡をふき、エクセレントは立ったまま気を失っている。
「マイア、お前まだ動けるか…?」
隣で息も切れ切れのマジー。
長い黒髪は無残にざんばらに焼ききれ、美しい顔立ちに映えた切れ長の黒曜石の左眼は、その顔の左側ごと焼けて爛れて潰れて。
それでもマジーは少しでもみんなを逃がすために防御魔法をかけ続ける。
自分の防御を切り捨てて。
すまない。私に余裕がないばかりに、守れなくて…。
かくいう私も散々だ。
綺麗に切りそろえてセットしているミルクティー色の短髪は、汗と魔物の返り血と傷でぐちゃぐちゃだ。
男前だとご令嬢たちに絶賛されている私の姿は、どこにもない。
洗練された騎士などいない。
ここにいるのは、必死に戦う男だ。
「マジー、私もお前もここが最期かもな。少しでも被害を防ぎ、仲間を逃がすために命の限り闘おう。運が良ければ奴らが巣に戻ってくれるかもしれない…。」
「ああ。向こうが攻撃を緩めてさえくれたら、このあたり一帯ごと結界を張る。領地が減るが、国民の命には代えられない。陛下は分かってくれるさ。王妃と王子達は文句を言うだろうが。」
「これが最後かもしれないから言っておく。愛してる、マジー。」
「ばかか、フラグなんか立てるんじゃない。」
「生き残れたら結婚しよう。」
「生き残っても、顔の半分がないんだぞ?」
これだけの重傷を綺麗に治せる回復術士などこの世にはいないのだから。
「それがどうした。私だって傷だらけだ。」
「ふ、なら娶ってくれ。私もマイアが好きだ。」
「相思相愛だ、嬉しいな。」
私たちは、目の前の2匹の魔物を見つめる。
覚悟をもとに、最後まで抗うまで。
「副団長さま……!!!大丈夫ですか!」
目の前に、ひらりと二つ、舞い落ちる。
その声に我が目と耳を疑った。
随分立派になられた、レジデュー殿下と真っ白な天使がそこにいたから。
「天使…。」
「神さまがいる…。」
団員たちもその姿に見惚れる。
魔物も行動が止まるほどの、圧倒的な存在感。
白い光に包まれたような、輝くばかりの姿。
「ミハイル、怪我人が多い。治療を。」
「オッケー、レジデュー。」
白い麗人の背中には、白い翼がある。
「貴方様は…?」
「貴方は彼を俺のところへ送り届けた騎士だね。俺は彼の婚約者だよ。」
そうか。
彼らは蛮族ではない。
伝承の絵画を思い出して、ストンと胸に落ちた。
いや、たとえ蛮族だとしても、蔑むのは愚かなことだった。
蛮族という言葉が既に愚かだった。
私も結局、奴らに毒されていたらしい。
いや、国ごと、いつの間にか毒されていたのか。
殿下が幸せに……そして、あんなにのびのびとした姿で立派なことに胸がうたれる。
「殿下を幸せに……していただき、ありがとうございます。ですが、どうかお逃げください。あれはもう、対処できるものではありません。」
「まあいいから。うん、範囲が広いな。奥の野営地にもいるのか……。この転がっているのはどうせ悪運だけは強いからどうでもいいとして。」
天使様が指を弾くと、信じられないことが起きる。
周りの傷つき、疲弊した仲間たちが傷を癒され、力を取り戻していく。
私の傷も。
そして、マジーの顔も綺麗に戻る。
「そこの魔術師さんたち、一緒にみんなを守る結界をはるよ?あの2体は彼に任せて!彼の名前は、レジデュー=エントラスト=パラダイス。この国の第4王子で本当の王位継承者。アカデミック王国の最高学府の博士号を取得し、
サラマンダー王国では最強の剣士として、マジョリカ王国では全属性魔法使いとして、SS冒険者として最近話題の大天才さ!」
澄んだよくとおる声は、その場のみんなに届いた。
そして、その声の向こう側で、みんなが見守る中、『本物の王子』は――――――――――
「そうか、南の土地を開拓して汚泥を海に流したことでリヴァイアサンが怒り、住処の山を切り開かれたファイアードラゴンも怒ってしまったんだね。かわいそうだけど、人に危害を加えた魔物は倒さなければならないんだ。だけれど、その代わり、君たちの問題は解決してあげる。君たちの眷族や子どもたちは守ってあげるからね。」
グレイシャス王太子の進めた強硬な開発が原因だったとは。
穏やかで知的な声が響く。
まるで魔物をあやすように。
「痛くないように、倒してあげる。」
ファイアードラゴンの焔を水でかき消し、リヴァイアサンの水ともども大量の水が落ちる前に風で散らして蒸発させる。
そして浮遊魔法で浮き、閃光のような速さで2体の視界が及ばない場所に回り込むと、レジデュー殿下はその剣先に光を纏わせ、そして。
鮮やかな剣技でドラゴンたちの巨大な首を一刀両断に切断したのだった。
王子二人の暴走は、2匹の魔物を怒らせるだけで、最初の咆哮で気絶した彼らは役になど立つはずもない。
スペシャルは情けなくも剣を握りしめたままひっくり返って泡をふき、エクセレントは立ったまま気を失っている。
「マイア、お前まだ動けるか…?」
隣で息も切れ切れのマジー。
長い黒髪は無残にざんばらに焼ききれ、美しい顔立ちに映えた切れ長の黒曜石の左眼は、その顔の左側ごと焼けて爛れて潰れて。
それでもマジーは少しでもみんなを逃がすために防御魔法をかけ続ける。
自分の防御を切り捨てて。
すまない。私に余裕がないばかりに、守れなくて…。
かくいう私も散々だ。
綺麗に切りそろえてセットしているミルクティー色の短髪は、汗と魔物の返り血と傷でぐちゃぐちゃだ。
男前だとご令嬢たちに絶賛されている私の姿は、どこにもない。
洗練された騎士などいない。
ここにいるのは、必死に戦う男だ。
「マジー、私もお前もここが最期かもな。少しでも被害を防ぎ、仲間を逃がすために命の限り闘おう。運が良ければ奴らが巣に戻ってくれるかもしれない…。」
「ああ。向こうが攻撃を緩めてさえくれたら、このあたり一帯ごと結界を張る。領地が減るが、国民の命には代えられない。陛下は分かってくれるさ。王妃と王子達は文句を言うだろうが。」
「これが最後かもしれないから言っておく。愛してる、マジー。」
「ばかか、フラグなんか立てるんじゃない。」
「生き残れたら結婚しよう。」
「生き残っても、顔の半分がないんだぞ?」
これだけの重傷を綺麗に治せる回復術士などこの世にはいないのだから。
「それがどうした。私だって傷だらけだ。」
「ふ、なら娶ってくれ。私もマイアが好きだ。」
「相思相愛だ、嬉しいな。」
私たちは、目の前の2匹の魔物を見つめる。
覚悟をもとに、最後まで抗うまで。
「副団長さま……!!!大丈夫ですか!」
目の前に、ひらりと二つ、舞い落ちる。
その声に我が目と耳を疑った。
随分立派になられた、レジデュー殿下と真っ白な天使がそこにいたから。
「天使…。」
「神さまがいる…。」
団員たちもその姿に見惚れる。
魔物も行動が止まるほどの、圧倒的な存在感。
白い光に包まれたような、輝くばかりの姿。
「ミハイル、怪我人が多い。治療を。」
「オッケー、レジデュー。」
白い麗人の背中には、白い翼がある。
「貴方様は…?」
「貴方は彼を俺のところへ送り届けた騎士だね。俺は彼の婚約者だよ。」
そうか。
彼らは蛮族ではない。
伝承の絵画を思い出して、ストンと胸に落ちた。
いや、たとえ蛮族だとしても、蔑むのは愚かなことだった。
蛮族という言葉が既に愚かだった。
私も結局、奴らに毒されていたらしい。
いや、国ごと、いつの間にか毒されていたのか。
殿下が幸せに……そして、あんなにのびのびとした姿で立派なことに胸がうたれる。
「殿下を幸せに……していただき、ありがとうございます。ですが、どうかお逃げください。あれはもう、対処できるものではありません。」
「まあいいから。うん、範囲が広いな。奥の野営地にもいるのか……。この転がっているのはどうせ悪運だけは強いからどうでもいいとして。」
天使様が指を弾くと、信じられないことが起きる。
周りの傷つき、疲弊した仲間たちが傷を癒され、力を取り戻していく。
私の傷も。
そして、マジーの顔も綺麗に戻る。
「そこの魔術師さんたち、一緒にみんなを守る結界をはるよ?あの2体は彼に任せて!彼の名前は、レジデュー=エントラスト=パラダイス。この国の第4王子で本当の王位継承者。アカデミック王国の最高学府の博士号を取得し、
サラマンダー王国では最強の剣士として、マジョリカ王国では全属性魔法使いとして、SS冒険者として最近話題の大天才さ!」
澄んだよくとおる声は、その場のみんなに届いた。
そして、その声の向こう側で、みんなが見守る中、『本物の王子』は――――――――――
「そうか、南の土地を開拓して汚泥を海に流したことでリヴァイアサンが怒り、住処の山を切り開かれたファイアードラゴンも怒ってしまったんだね。かわいそうだけど、人に危害を加えた魔物は倒さなければならないんだ。だけれど、その代わり、君たちの問題は解決してあげる。君たちの眷族や子どもたちは守ってあげるからね。」
グレイシャス王太子の進めた強硬な開発が原因だったとは。
穏やかで知的な声が響く。
まるで魔物をあやすように。
「痛くないように、倒してあげる。」
ファイアードラゴンの焔を水でかき消し、リヴァイアサンの水ともども大量の水が落ちる前に風で散らして蒸発させる。
そして浮遊魔法で浮き、閃光のような速さで2体の視界が及ばない場所に回り込むと、レジデュー殿下はその剣先に光を纏わせ、そして。
鮮やかな剣技でドラゴンたちの巨大な首を一刀両断に切断したのだった。
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