その玉座、返してもらいます!虐げられた末王子は嫁の愛で下剋上する~婿入り先の辺境の蛮族は真の王家でした~

竜鳴躍

文字の大きさ
14 / 45

本物の王子

しおりを挟む
「………ッ。まさか、こんなっ。」

王子二人の暴走は、2匹の魔物を怒らせるだけで、最初の咆哮で気絶した彼らは役になど立つはずもない。


スペシャルは情けなくも剣を握りしめたままひっくり返って泡をふき、エクセレントは立ったまま気を失っている。



「マイア、お前まだ動けるか…?」

隣で息も切れ切れのマジー。
長い黒髪は無残にざんばらに焼ききれ、美しい顔立ちに映えた切れ長の黒曜石の左眼は、その顔の左側ごと焼けて爛れて潰れて。

それでもマジーは少しでもみんなを逃がすために防御魔法をかけ続ける。
自分の防御を切り捨てて。

すまない。私に余裕がないばかりに、守れなくて…。

かくいう私も散々だ。
綺麗に切りそろえてセットしているミルクティー色の短髪は、汗と魔物の返り血と傷でぐちゃぐちゃだ。
男前だとご令嬢たちに絶賛されている私の姿は、どこにもない。
洗練された騎士などいない。
ここにいるのは、必死に戦う男だ。

「マジー、私もお前もここが最期かもな。少しでも被害を防ぎ、仲間を逃がすために命の限り闘おう。運が良ければ奴らが巣に戻ってくれるかもしれない…。」

「ああ。向こうが攻撃を緩めてさえくれたら、このあたり一帯ごと結界を張る。領地が減るが、国民の命には代えられない。陛下は分かってくれるさ。王妃と王子達は文句を言うだろうが。」


「これが最後かもしれないから言っておく。愛してる、マジー。」

「ばかか、フラグなんか立てるんじゃない。」


「生き残れたら結婚しよう。」

「生き残っても、顔の半分がないんだぞ?」
これだけの重傷を綺麗に治せる回復術士などこの世にはいないのだから。

「それがどうした。私だって傷だらけだ。」

「ふ、なら娶ってくれ。私もマイアが好きだ。」

「相思相愛だ、嬉しいな。」


私たちは、目の前の2匹の魔物を見つめる。
覚悟をもとに、最後まで抗うまで。










「副団長さま……!!!大丈夫ですか!」




目の前に、ひらりと二つ、舞い落ちる。


その声に我が目と耳を疑った。


随分立派になられた、レジデュー殿下と真っ白な天使がそこにいたから。




「天使…。」

「神さまがいる…。」


団員たちもその姿に見惚れる。

魔物も行動が止まるほどの、圧倒的な存在感。
白い光に包まれたような、輝くばかりの姿。



「ミハイル、怪我人が多い。治療を。」

「オッケー、レジデュー。」



白い麗人の背中には、白い翼がある。

「貴方様は…?」
「貴方は彼を俺のところへ送り届けた騎士だね。俺は彼の婚約者だよ。」


そうか。
彼らは蛮族ではない。
伝承の絵画を思い出して、ストンと胸に落ちた。

いや、たとえ蛮族だとしても、蔑むのは愚かなことだった。
蛮族という言葉が既に愚かだった。
私も結局、奴らに毒されていたらしい。
いや、国ごと、いつの間にか毒されていたのか。

殿下が幸せに……そして、あんなにのびのびとした姿で立派なことに胸がうたれる。

「殿下を幸せに……していただき、ありがとうございます。ですが、どうかお逃げください。あれはもう、対処できるものではありません。」

「まあいいから。うん、範囲が広いな。奥の野営地にもいるのか……。この転がっているのはどうせ悪運だけは強いからどうでもいいとして。」

天使様が指を弾くと、信じられないことが起きる。


周りの傷つき、疲弊した仲間たちが傷を癒され、力を取り戻していく。
私の傷も。
そして、マジーの顔も綺麗に戻る。

「そこの魔術師さんたち、一緒にみんなを守る結界をはるよ?あの2体は彼に任せて!彼の名前は、レジデュー=エントラスト=パラダイス。この国の第4王子で本当の王位継承者。アカデミック王国の最高学府の博士号を取得し、
サラマンダー王国では最強の剣士として、マジョリカ王国では全属性魔法使いとして、SS冒険者として最近話題の大天才さ!」

澄んだよくとおる声は、その場のみんなに届いた。


そして、その声の向こう側で、みんなが見守る中、『本物の王子』は――――――――――



「そうか、南の土地を開拓して汚泥を海に流したことでリヴァイアサンが怒り、住処の山を切り開かれたファイアードラゴンも怒ってしまったんだね。かわいそうだけど、人に危害を加えた魔物は倒さなければならないんだ。だけれど、その代わり、君たちの問題は解決してあげる。君たちの眷族や子どもたちは守ってあげるからね。」

グレイシャス王太子の進めた強硬な開発が原因だったとは。

穏やかで知的な声が響く。

まるで魔物をあやすように。

「痛くないように、倒してあげる。」

ファイアードラゴンの焔を水でかき消し、リヴァイアサンの水ともども大量の水が落ちる前に風で散らして蒸発させる。

そして浮遊魔法で浮き、閃光のような速さで2体の視界が及ばない場所に回り込むと、レジデュー殿下はその剣先に光を纏わせ、そして。


鮮やかな剣技でドラゴンたちの巨大な首を一刀両断に切断したのだった。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

【8話完結】勇者の「便利な恋人」を辞めます。~世界を救うより、自分の幸せを守ることにしました~

キノア9g
BL
「君は便利だ」と笑った勇者を捨てたら、彼は全てを失い、私は伝説の魔導師へ。 あらすじ 勇者パーティーの万能魔術師・エリアスには、秘密があった。 それは、勇者ガウルの恋人でありながら、家事・雑用・魔力供給係として「便利な道具」のように扱われていること。 「お前は後ろで魔法撃ってるだけで楽だよな」 「俺のコンディション管理がお前の役目だろ?」 無神経な言葉と、徹夜で装備を直し自らの生命力を削って結界を維持する日々に疲れ果てたエリアスは、ある日ついに愛想を尽かして書き置きを残す。 『辞めます』 エリアスが去った翌日から、勇者パーティーは地獄に落ちた。 不味い飯、腐るアイテム、機能しない防御。 一方、エリアスは隣国の公爵に見初められ、国宝級の魔導師として華麗に転身し、正当な評価と敬意を与えられていた。 これは、自分の価値に気づいた受けが幸せになり、全てを失った攻めがプライドも聖剣も捨てて「狂犬」のような執着を見せるまでの、再構築の物語。 【勇者×魔導師/クズ勇者の転落劇】 ※攻めへのざまぁ要素(曇らせ)がメインの作品です。 ※糖度低め/精神的充足度高め ※最後の最後に、攻めは受けの忠実な「番犬」になります。 全8話。

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない? ☆表紙絵 AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

処理中です...