【完結】元SS冒険者の部隊長は王族に陥落される

本編

学園のアイドル

笑ってごまかし、相槌でごまかし。
やっとお開きの時間になった。

お礼の挨拶をして、場をさろうとする。

その瞬間、飛んできたモノを察して、俺はそれを掴んで止めた。

「ひぃ!」
「何ですの!?　なぜそれが?」

弓矢。


よく見ると、二人が連れてきた護衛が、たじろいでいる。

「二人とも、彼らは最近雇われた護衛でしょうか?」

「そうですが…」
「あの、手は大丈夫ですか?」

「人を雇うときは、腕っぷしだけでなく、身辺を洗うべきだ。これなら、まだ冒険者ギルドに依頼して手配したほうがマシだ。」

どうせ、俺たちをまとめて攫って、夫たちに言う事聞かせようとか、身代金とかそんなんだろ!

そういうと彼らは、紳士然とした仮面を脱ぎ捨てた。

「こうなったら、力ずくだ!」

ひとりが剣を持ち、ひとりが口笛を吹く。

野盗風の男たちが10人、飼いならしたフェンリルが5匹。

「いやぁ…」

キャサリンとアレクサンドラは、侍女と身を寄せ合って震えている。

大丈夫、と微笑んで。
俺はドレスの裾を裂き、侍女から俺の私物を受け取った。
足が心配だから、ヒールのない靴にしてきて良かった。

ふたふりの剣を構え、野盗たちに笑う。

お前ら、運がなかったな?



先ほどまで、美しい女性だとしか思わなかった。
なかなか尻尾をださず、いらつきさえ覚えていた。

たった一人しかいないのに。
まるで閃光のように、攻撃を躱しながら倒していく。

二刀流の剣士。

神速の二刀流。

私達は気づいた。


あれは、クリス=アッシュフォード。
気づかないはずだわ。男性だもの。

いずれ、身を立てると信じていたら、称号を得て、あの人は騎士団の部隊長になった。

ああ、知らないでしょう?

貴方は私たちのアイドルだったのよ?