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新章 溺愛編
不安の種は早めに潰しとかないとね?(アイスとアリス)(挿絵あり)
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「…忌々しい、あの男。やっと殺せると思ったのに…。」
スノーフォレストの女王だった者は、今や完全にモンスターと化した。
クリスに倒されて5年近く。
人間の体は砂と消え、もう元には戻らない。
だが、『影』だけはなんとか残った。
それも、傷つき、わずかに残った体を、少しずつ回復させながら、影から影にうつり、生まれ育った故郷へ戻り。
なぜなら、かつて自分が魔王の研究を株分けしていたからだ。
スノーフォレストの素体はすべて、破壊されてしまった。
だから、故郷に保管されていたものを使うことにした。
故郷はすでになく、全く違う国となって生まれ変わっており、帝<みかど>とよばれる国王も血筋の者ではない。
だが、影となったこの身には、大した問題ではない。
この国の幼い帝の体に憑りついて、この体を人質に、今や国に巣食っている。
黒髪を肩で切りそろえた、5,6歳くらいの幼い帝は、意識の殆どと体の制御を女王に奪われ、泣きながら部下に命令する。
レッドキングダムを討て、と。
宮中の中には、狛犬のモンスターが警備し、空には龍、池にはリヴァイアサン。
誰も、私に逆らえる者などいるものか。
御簾の外。渡り廊下を歩く音がする。
足音は2人。
火の元の管理をしているのだろう。
そう思ってたら、思いもかけない者が現れた。
「…お、おお。」
ーーーーーーーーー愛しの、魔王。
だが、彼とそっくりの幼い子どもが一緒だ。
腰に剣をぶら下げ、魔王の傍で不気味にニコニコとほほ笑んでいる。
あの男との間に生まれた子。
年齢は、今自分が憑りついている帝と同じくらいではないか。
「よく、ここまで来れたものよ。」鼻で笑って、モンスターを呼んだ。
来ない。
「…なぜ?」
子どもが、懐から狛犬の子どもを出し、抱きしめる。
「レッドキングダムで討伐したモンスターの遺伝情報から、いろいろ調べてね。」
命令権を書き換えるお薬、作っちゃったから。
幼い子どもから出る発言とは思えない。
「クリスに何かあるといけないからな。お前がここにいると突き止め、先回りしたわけだ。」
因みに、この国の者は、私たちの味方だよ。
アイスも、女王を睨みつける。
「さぁ、みなさん!頼みましたよ!」
子どもの合図で、出てきた宮中中の者が、光源を持って帝の体を取り囲む。
「…なにっ!」
光を八方からあてられたら、影はやっていけない。
「いまだ、お父様!」
「任せろ!」
女王の本体である影を、小瓶に封じて蓋を締める。あとは、万事明るい場所で保管するだけ。
「だいじょうぶ?」
「…ありがとう。」
女王から解放され、倒れた体を守って、アリスは抱き上げた。
笑顔を向けると、帝が頬を染める。
ーーーーーーー不安の種は早めに潰しとかないとね?
クリスが二人を守ろうとするように。
私たちもクリスを、お母さまを守りたい。
だから、安心して、子どもを産んでもらおう。
瓶の中の女王は、まだあきらめていない。
もしかしたらまだ、何か起きるかもしれない。
それでも、何度でも何度でも、私たちは潰すし。
お前があきらめないほど、残虐になってやる。
スノーフォレストの女王だった者は、今や完全にモンスターと化した。
クリスに倒されて5年近く。
人間の体は砂と消え、もう元には戻らない。
だが、『影』だけはなんとか残った。
それも、傷つき、わずかに残った体を、少しずつ回復させながら、影から影にうつり、生まれ育った故郷へ戻り。
なぜなら、かつて自分が魔王の研究を株分けしていたからだ。
スノーフォレストの素体はすべて、破壊されてしまった。
だから、故郷に保管されていたものを使うことにした。
故郷はすでになく、全く違う国となって生まれ変わっており、帝<みかど>とよばれる国王も血筋の者ではない。
だが、影となったこの身には、大した問題ではない。
この国の幼い帝の体に憑りついて、この体を人質に、今や国に巣食っている。
黒髪を肩で切りそろえた、5,6歳くらいの幼い帝は、意識の殆どと体の制御を女王に奪われ、泣きながら部下に命令する。
レッドキングダムを討て、と。
宮中の中には、狛犬のモンスターが警備し、空には龍、池にはリヴァイアサン。
誰も、私に逆らえる者などいるものか。
御簾の外。渡り廊下を歩く音がする。
足音は2人。
火の元の管理をしているのだろう。
そう思ってたら、思いもかけない者が現れた。
「…お、おお。」
ーーーーーーーーー愛しの、魔王。
だが、彼とそっくりの幼い子どもが一緒だ。
腰に剣をぶら下げ、魔王の傍で不気味にニコニコとほほ笑んでいる。
あの男との間に生まれた子。
年齢は、今自分が憑りついている帝と同じくらいではないか。
「よく、ここまで来れたものよ。」鼻で笑って、モンスターを呼んだ。
来ない。
「…なぜ?」
子どもが、懐から狛犬の子どもを出し、抱きしめる。
「レッドキングダムで討伐したモンスターの遺伝情報から、いろいろ調べてね。」
命令権を書き換えるお薬、作っちゃったから。
幼い子どもから出る発言とは思えない。
「クリスに何かあるといけないからな。お前がここにいると突き止め、先回りしたわけだ。」
因みに、この国の者は、私たちの味方だよ。
アイスも、女王を睨みつける。
「さぁ、みなさん!頼みましたよ!」
子どもの合図で、出てきた宮中中の者が、光源を持って帝の体を取り囲む。
「…なにっ!」
光を八方からあてられたら、影はやっていけない。
「いまだ、お父様!」
「任せろ!」
女王の本体である影を、小瓶に封じて蓋を締める。あとは、万事明るい場所で保管するだけ。
「だいじょうぶ?」
「…ありがとう。」
女王から解放され、倒れた体を守って、アリスは抱き上げた。
笑顔を向けると、帝が頬を染める。
ーーーーーーー不安の種は早めに潰しとかないとね?
クリスが二人を守ろうとするように。
私たちもクリスを、お母さまを守りたい。
だから、安心して、子どもを産んでもらおう。
瓶の中の女王は、まだあきらめていない。
もしかしたらまだ、何か起きるかもしれない。
それでも、何度でも何度でも、私たちは潰すし。
お前があきらめないほど、残虐になってやる。
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