【完結】元SS冒険者の部隊長は王族に陥落される

竜鳴躍

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新章(アリスの結婚編)

花はまた咲く

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翌朝、アイスに付き添われて、産婦人科に行った。

何も考えずにアイスに抱いてもらったけど、あいつは常習的に性を買っていたから、病気の検査をしないといけなかった。

もし、病気をうつされてたらどうしよう。

アイスにまでうつしたかもしれない。


情けなくて、悲しくて、また泣いていたら、アイスに濡れたタオルを押し付けられた。



やさしいおばあちゃん先生が出てきて、びっくりした。


駅であったおばあちゃん。

「忠告してくれたのに…。」


また泣いてしまって、アイスが体を支えてくれた。


「大丈夫、あなたは悪くありませんよ。」


そう言って、俺たちの検査をしてくれた。



「二人とも大丈夫ね。良かったわ。」

ホッとする。

「でも、これを見てちょうだい。」


おばあちゃん先生は、俺のお腹をめくって、クリームを塗ると、画面で見せてくれた。


「分かるわよね。胎嚢ができてるわ。」


体が固まる。

「先日の出来事で胎嚢は見えないわ。間違いなく、ご主人の子ですよ。」


尿検査の結果で、妊娠反応があったのだという。

「妊娠していれば、その期間に次の子を妊娠することはありません。だから、今回のことで妊娠する心配はありませんよ。」



でも。


でも……


体が震える。


「私は産んでほしいよ、クリス。」


「アイスの子じゃないって、思われたら?」

「私たちの子は強いと思うよ。」


「生まれたときから辛い思いをさせる。」




「クリスちゃん。あなた、他の被害者の人たちに会ってみない? ちょうど今日、集まりがあるのよ。」



コクリと頷いて、会議室みたいな場所へ通された。


「クリス、私は待ってるからね。」


アイスは別の場所で待ってるらしい。



部屋の中には、サークル状に配置された椅子に、10代から20代くらいの若くてきれいな女の子たちが座っていた。


性被害者だから、男性に恐怖があるらしく、俺を見てびっくりしていたけど、先生が俺の性別は男だけど、子宮もある人妻で、同じ被害者なのだと紹介してくれた。



「クリス。私は、レイプされて赤ちゃんができたの。時期から、夫の子だと分かってた。夫も産んでほしいって言ってくれたけど、私は堕胎した。赤ちゃんは生きていたのに。後から、夢で見るの。後悔したのよ。でも、取り返しは効かないの。」

あなたは、後悔しないように、よく考えて。


被害者のひとりが、俺にそう言ってくれた。



被害者同士にしか分からない傷がある。

俺は自分で餌になった結果だから、彼女たちとも違う。

俺にだって非はある。

でも、それでも、俺は穢れてないんだって。





「アイスさん。」

別室で待っていると、おばあちゃん先生が来た。


「ありがとうございます。クリスは立ち直るでしょうか。」

「時間はかかるかもしれませんが、大丈夫。あなたがちゃんと愛してあげれば、花はまた咲きますよ。」


アイスは深々と頭を下げた。







レッドキングダムでは、キャッツアイがストーリーを準備した。


レッドキングダムの将来の国母。
これまで数々のモンスターを討伐し、世界中に平和をもたらした騎士団長。
クリス=クレイソン公爵夫人は、若い頃、フルールの第一王子に一方的に好意を寄せられ、2度のストーカー被害にあっていた。

バイオレット=フルールの協力でストーカーは廃嫡され、幽閉先で死亡したが、それを逆恨みした王子の弟が、休暇中にたまたま捜査協力していた夫人を拉致。

夫の子を妊娠している夫人に、幻覚剤を投与して、公爵と誤認させ、復讐と称して身体を奪い、正気に戻った夫人は、悲しみにうちひしがれ、今は夫が支えている。


フルールの王族が、我が国の国母になる人を拉致し暴行した罪は、国をあげて訴える。

今まで私たちのために尽くしてくれた夫人を、今度は私たちが守ろう。



「これで、いかがですか?」

キャッツアイがアリスとミカエルに見せる。


「いいんじゃない?」


アリスは満足したように頷くと、まずは手始めとして、国から賠償と支援の打ち切りを、スノーフォレストも巻き込んで行おうと、考えていた。
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