【完結】元SS冒険者の部隊長は王族に陥落される

竜鳴躍

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終章 魔王と勇者

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夢を見る。


最近になってよく見る夢。



俺は誰かのお嫁さんで、男の人なのにたくさん子どもを産んで、幸せに暮らしている。

旦那さんの顔がよく分からない。


旦那さんは年上で、すごく仲良しだったのに先に死んじゃって、とっても悲しかったけど。

5人も子どもがいて、たくさん孫がいたし、友達もいっぱいいたから生きていけた。


やるべきことをやって、寿命を全うして。

そしたら天国みたいなところで、旦那さんと再会して。

二人で子孫を見守りながら、次に生まれ変わる時が来るのを待っている夢。




「クレッシェンド、りんごが採れたよ。」


天国では、小さな可愛いおうちに二人で住んでいる。

妖精さんが、おうちのお世話をしてくれて、おうちの周りには果樹園と、釣りができる川があって。

何でも必要なものは、イメージすれば出てくるの。不思議。


「やったあ、おいしそう。いいにおい。俺も魚が釣れたよ。」


「じゃあ夕飯のメインは魚にしよう。りんごはパイがいい?」


俺は首を横に振る。

「一緒にケーキを作りたい。楽しかったから。昔、アリスが小さい時。3人で作ったじゃない。」

子どもが増えて、ジュリエッタがお菓子作りにはまってからは、ジュリエッタと2人で作るんだもん。

「じゃあ、生クリームを塗るのは?」

「俺が担当ね!」

くすくす笑いながら、二人でケーキを焼いて。


夕ご飯の時間までは、露天風呂に入る。


「こっちに来て、しょっちゅう入っているね。」

「うん、お風呂大好き。二人で入るのも大好き。」


ともに入って、クレッシェンドは、アイスシードの胸の中央に触れる。


「俺が刺した傷がある。」

「そうだよ。私は君に殺されたんだから。」

「違う出会い方が出来て、こうなって本当に幸せ。」

「ある意味、君が私の妻になることで、魔王の過ちは繰り返されずに済んだと言っても過言ではない。君の言葉通り、私は君に止められたんだよ。私は君がいないと生きていけない。」

「大げさだなあ。」



「ねえ、生まれ変わったら、俺、アイスのこと忘れちゃうのかな。」


「目印でもつける?」


「…じゃあ、その胸の傷。目印に頂戴。」

「いいよ、たぶんあざか何かになって生まれてくるだろうから。」



後ろから抱きしめて、目元から唇、首筋へ。キスが落ちる。


「…あん。」


この体は男を知らない体だったのに、すっかり敏感になった。


「のぼせちゃう。ベッドに行こ…。」

姫抱きにして指を鳴らせば、体が渇いて、寝所に移動する。


ふわふわのベッドに下ろせば、首に腕が絡んでくる。



「はやく、ちょうだい?」



揺さぶられながら、会話する。


次も、アイスの子どもをたくさん産みたい。

争いのない、平和な時代がいい。

俺は普通の子で。

だから、きっと勇者の頃や、クリスだった頃のようには強くはない。


だから、きっと、早く俺を見つけてね。

俺を守って。









「ん…。もう、朝。」


カーテンから指す光で目が覚める。



そして、夢の内容はきれいさっぱり忘れている。


繰り返し見ている夢を、また見ていたような感覚だけを残して。
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