【完結】元SS冒険者の部隊長は王族に陥落される

終章 魔王と勇者

ケイシーの葛藤

陛下に唆されて、あの人の暴かれた体を前にしたら、たががはずれ、一緒になって傷つけてしまった。

今まで秘めた気持ちが、価値のないものに落ちて、俺にはもう、あの人に愛される資格はない。

陛下はさぞ面白かっただろう。



それでも手放せなくて、

陛下からの命令だからと自分にもあの人にも言い聞かせて、

都合よくあの人の体を貪った。



あの人は、陛下の愛妾と呼ばれ。

俺が愛を囁いても心はくれず。

今更だからと、体を渡した。


あの人にとっては陛下も俺も同じで、俺にとっては愛の行為であっても、犯されているのに違いがない。



ある日、あの人に会いに行くと。

胸に剣を刺して、息絶えていた。



これ程まで追い詰めた一端は俺にある。　

英雄の死に皆が悲しみにくれた。



国王は罷免され、王太子は中継ぎの後、遠縁の王族に国を譲って、王統が変わった。



レッド=キングダム王国の誕生だ。



俺は騎士団をやめて、聖職者になった。

だが、そんなことで罪が消えるはずがない。



許されないことをしたという自責の念はありながらも、

あの人を無理やりにでも自分のものにしたい欲望は消えない。

乖離した心に苛まれ、やり場のない気持ちを暴力で発散する。



俺は、今世では、極道の組長の息子なのだ。


何の因果か、あの陛下が自分の親父なのは笑えるが。





あの人がよりによって、魔王の妻になるなんて許せない。

どうして、何があって、自分が征伐した相手と結ばれているのか訳が分からない。



魔王の手に落ちるくらいなら、自分のこの手に攫ってしまおうと思う。

もう一度、ケイシーとしてあの人と話をして、きちんと謝りたい気持ちもあれば。

奪いたい気持ちもあって、俺の心はかなりバラバラだ。