【完結】元SS冒険者の部隊長は王族に陥落される

竜鳴躍

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終章 魔王と勇者

サークルは入らない。

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サークルは入らないことに決めていた。

リンゴの品種改良も忙しいし、専務から家で学ぶことも多い。

(経営のことや、お茶お花など。)


色んなリスクを冒してまでやりたいか、と言われると、そうではなかったからだ。


サークルには入らなかったが、今日はアイツに会う可能性が高い。

今日の今からやる講義は、1年必修の憲法だから。



アイスと手を繋いで教室に入り、隣の席で同じ机に座る。

そうすると、斜め後ろにアイツは座った。


「また会ったね。結局サークルどうしたの?」

(城島に調べさせたが、分からなかった。)


「ああ、サークルは入らないんだ。」


「ふうん、そうなんだ。奇遇だね、俺も入らないんだよ。」


他愛もない話の時間を切るように、日本国憲法の講義が始まった。




「少し話さないか、ケイシー。」

講義が終わって、俺から呼び止めた。
あいつは、目を丸くして、そして喜んだ。

「はい、団長。」



大学のオープンカフェは、いつの時間も人がいる。

ここへの道も開けていて、出入りがあり、死角が少なく、比較的安全だとふんだ。


「座れ。」


「…嬉しいです。気づいてくれるなんて。あの、団長。昔のこと。本当に申し訳ありませんでした。でも団長、本当に俺はあなたのことを―――」


「謝罪はいい。」

腕を組み、足を組む。

「陛下が悪い、あれは…。だから、お前を憎んでも恨んでもいない。死んだのは、俺が弱かったからだ。」

あの前からずっと俺にお前は愛の告白をしていた。
俺は取り合っていなかったが、お前は本当に俺を欲しがっていたのだと、あの時理解した。

「それでもお前を受け入れなかったのは、俺がお前に対して、部下以上の感情を持てなかったからだ。俺はお前を愛さない。」


「は、はは…。」
乾いた笑いが出る。


「目を覚ませ? お前は今、ケイシーじゃない。俺もそうだ。前世に引きずられ過ぎるのはよせ。」


「それでも。何故、魔王といるんですか!?」


「魔王が本当に悪かったのか、ずっと考えていた。彼は、人間だよ。俺がそうであるように。俺は彼を愛してる。俺が抱かれたいと思って抱かれるのは、昔も今もこの先も、彼だけだ。」

「聞きたくない!」

「思い込むのはお前の悪いところだ。色眼鏡を捨てて、彼を見てほしい。」


「別れてください!」


「お前にそういう権利はない。俺は今の前も、彼と結婚して添い遂げた。俺たちの間には5人も子どもが生まれて。すごく幸せだったよ。」


俺の幸せは彼とともにある。

お前じゃない。


「クッ…。」


「アイス。来ていい。来てくれ。」
スマホで夫を呼ぶ。


「話は済んだ?」

「ちょっと分かりやすく理解してもらおうと思って。」


「!!!!」


「…ン。」

古山の前で、深い情熱的なキスをする。
色っぽく、溶けるような。

見つめ合って唇を離して。古山を見た。


「わかるだろう?」


「……ああ、もう! ちきしょう。前も団長と同じ時代に産まれたかったなあ。」

認めるしかない。

「だが、俺はつきまとうぞ! 団長に相応しいか、納得出来るまでな!」


「臨むところだ!」

二人が宣戦布告するのと同時に、意識は剣に変わる。







古山組。

城島は、報告書がてら、若のために剣の隠し撮り写真を写真集に編纂していた。


そこへ、ガラッと男が入る。


「あ、親分!」


「ほう、それが倅が入れ込んでいるオンナか。」


「はい!」

「なかなかかわいい…」

写真を見て、ひとりごちる。



「クレッシェンド……」


口の端を曲げて、歪んだ笑いを浮かべた。
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