22 / 202
目立つ編入生たち
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二年に編入した騎士団長の令息は、女性の生殖機能を持つ男性。
控えめながら凛として、艶やかな黒猫を思わせる美しい容姿で、成績優秀。
編入した当初は女生徒から嫉妬されていたが、流石、騎士団長の息子。
ちょっとしたイタズラを気にも留めず、スマートに躱し、戦闘術では群を抜いていて、今では男女問わず人気者になっていた。
本人はいまだに他の学生からは、一線を引いているようだったが、見下しているとかではなく、寧ろ逆に『自分なんかが』と思っている節があって、同級生たちは無理に誘えば頬を赤らめながら応じる彼を、引っ張り出すのが日課になっていた。
「今日もサン様ステキねえ。憧れちゃうわ!」
「ケヴィン殿下ともう婚約しちゃったんだよなあ。」
「本当は内々で子どもの頃から決まってらっしゃっていたけど、静養することになって、保留になっていたらしいわよ。」
「サン様たちは、殿下に解消を申し入れたけど、殿下が『いつまでも待つ、私には君だけだから』って仰ったそうなの!!」
「キャアアア♡ステキ! 私も言われてみたいですわあ♡」
本人たちの知らないところで話が独り歩きしていた。
1年に編入した宰相の3男もまた、カッコいいと噂になっていた。
3年生の双子の兄が何かにつけて会いに来るので、余計に目立つ。
「クールで素敵。ぶっきらぼうなところがいい!」
「いつも無表情なのに、サン様やお兄様たちといらっしゃるときだけ崩れる顔が可愛いわ!」
「トロワ様は、剣術を磨くために留学されていたのよね!お兄様たちがお父様の後を継がれるから、将来は騎士団を目指しているらしいわ!」
サンほど優秀ではなかったトロワが、入学にあたって、超短期間に寝る間もないほどのスパルタ教育を受けたとは、誰も知る由はない。
トロワもまた、宰相子息として遜色ないほど成績が良く、また、当然ながら剣術の腕が良かった。
そして、今日編入した、ボヌール。
「ボヌール=リッシュです。今日からよろしくお願いします。」
突然現れた、リッシュ辺境伯の次男。
辺境伯は、サンと同じように、病気で入学が遅れたという設定にしていた。
実際、ボヌールは栄養不足で成長が遅れているし、ずっと娼館に閉じ込められていたから、色も白く、筋力もあまりない。
病弱設定は、信憑性があった。
か弱く、儚い印象で、キラキラした銀髪の美少女にも見える美少年が、上目がちに首を傾げながら挨拶する。
その様子を見て、女生徒はなんだか首を傾げるし、男子生徒も微妙な顔をする。
辺境伯は息子しかいないから、一人くらいは、って娘のように育てたのかしら?
女の子が欲しくて、可愛く生まれた男の子をそのように育ててしまう人もいるって聞いたことがあるけれど。
読み書きはかろうじてできたけど、閉じ込められていたボヌールは、闇夜や街に紛れて諜報や殺しをしていたサンたちのようには、組織で教育を受けてはいない。
卒業した兄は優秀な成績で卒業したらしいけど、勉強はちんぷんかんぷん。
筋力がないから運動もできないし、剣も振り上げられない。
サンやトロワの評判を聞くたびに、自分と比べて、悲しくなる。
お昼は寮の食堂のおばさんが用意してくれたお弁当。
僕は寮に閉じこもっているから、同じ寮の生徒にまだ会っていない。
だから一緒にお昼ご飯を食べる友達がいない。
同じ学年だけど、ちがうクラスのトロワは、自分とは違う世界の人みたいで、話しかけづらい。
上の学年のサンはなおのこと。
「ボヌール! 一緒にランチしよう、来いよ。」
聞き覚えのあるその声に顔をあげると、トロワ。
「トロワさま、ボヌール様はご友人なのですか?」
クラスメイトが近づいてきた。
「ああ、幼馴染なんだ。俺と、2年のサンと、ボヌールは幼馴染なんだよ。」
あっけらかんとトロワが言うと、すんなり納得して去っていった。
「遠慮するなよ、助け合おうぜ。」
ぼそっと、耳元でトロワが囁いた。
「トロワ!ボヌール!」
陽の当たるガーデンテーブルに、サンが待っていた。
トロワ…の、2歳上の双子のお兄さんたちも一緒にいる。
お弁当を広げて、みんなでごはん。
ノース家とサンダルフォン家の料理人が作って持たせてくれたお弁当は、色彩も綺麗で、おいしくて、この二人が受け入れられて、愛されていることがよくわかる。
お兄さんたちも、トロワのことを普通に可愛がっている。
ぽた…。
ぽたっ。
思いがけず、双眸から雫がこぼれ堕ちる。
「ボヌール?」
サンが、僕の涙をぬぐった。
「俺たち、力になるよ。言えることでいいから、少し、俺たちにも荷物を背負わせてくれないかな?」
やっぱり、ブラッキーお兄ちゃんはやさしい。
「勉強は、ついていけてる?」
首を横に振る。
「家庭教師は?」
横に振る。
「リッシュ辺境伯は何を考えてるんだ!?社会復帰を考えればこそ、いきなり学園に入れられても無理だぞ!?」
アンは、ぷんすか怒りを露にした。
「……まあ、本人じゃないかもよ?辺境伯はボヌールを愛してるんだし。あの家は、後妻さんが仕切っているからね。」
デュークは眉をよせて、顎に手をやりながら、何かを考えた。
「放課後、図書室においで。僕らでよければ勉強を教えてあげるよ。周りには、病弱で寝たきりだったから勉強が遅れてるんだって言えばいいよ。」
ニッコリとほほ笑む。
いいの?
この人たちは、僕のこと、汚いって言わないんだ。
きっと、僕が何をしていたか、彼らは知っているはずなのに。
「こいつら、スパルタだぞ~。だが、腕は保障する。」
トロワは渋い顔をした。
控えめながら凛として、艶やかな黒猫を思わせる美しい容姿で、成績優秀。
編入した当初は女生徒から嫉妬されていたが、流石、騎士団長の息子。
ちょっとしたイタズラを気にも留めず、スマートに躱し、戦闘術では群を抜いていて、今では男女問わず人気者になっていた。
本人はいまだに他の学生からは、一線を引いているようだったが、見下しているとかではなく、寧ろ逆に『自分なんかが』と思っている節があって、同級生たちは無理に誘えば頬を赤らめながら応じる彼を、引っ張り出すのが日課になっていた。
「今日もサン様ステキねえ。憧れちゃうわ!」
「ケヴィン殿下ともう婚約しちゃったんだよなあ。」
「本当は内々で子どもの頃から決まってらっしゃっていたけど、静養することになって、保留になっていたらしいわよ。」
「サン様たちは、殿下に解消を申し入れたけど、殿下が『いつまでも待つ、私には君だけだから』って仰ったそうなの!!」
「キャアアア♡ステキ! 私も言われてみたいですわあ♡」
本人たちの知らないところで話が独り歩きしていた。
1年に編入した宰相の3男もまた、カッコいいと噂になっていた。
3年生の双子の兄が何かにつけて会いに来るので、余計に目立つ。
「クールで素敵。ぶっきらぼうなところがいい!」
「いつも無表情なのに、サン様やお兄様たちといらっしゃるときだけ崩れる顔が可愛いわ!」
「トロワ様は、剣術を磨くために留学されていたのよね!お兄様たちがお父様の後を継がれるから、将来は騎士団を目指しているらしいわ!」
サンほど優秀ではなかったトロワが、入学にあたって、超短期間に寝る間もないほどのスパルタ教育を受けたとは、誰も知る由はない。
トロワもまた、宰相子息として遜色ないほど成績が良く、また、当然ながら剣術の腕が良かった。
そして、今日編入した、ボヌール。
「ボヌール=リッシュです。今日からよろしくお願いします。」
突然現れた、リッシュ辺境伯の次男。
辺境伯は、サンと同じように、病気で入学が遅れたという設定にしていた。
実際、ボヌールは栄養不足で成長が遅れているし、ずっと娼館に閉じ込められていたから、色も白く、筋力もあまりない。
病弱設定は、信憑性があった。
か弱く、儚い印象で、キラキラした銀髪の美少女にも見える美少年が、上目がちに首を傾げながら挨拶する。
その様子を見て、女生徒はなんだか首を傾げるし、男子生徒も微妙な顔をする。
辺境伯は息子しかいないから、一人くらいは、って娘のように育てたのかしら?
女の子が欲しくて、可愛く生まれた男の子をそのように育ててしまう人もいるって聞いたことがあるけれど。
読み書きはかろうじてできたけど、閉じ込められていたボヌールは、闇夜や街に紛れて諜報や殺しをしていたサンたちのようには、組織で教育を受けてはいない。
卒業した兄は優秀な成績で卒業したらしいけど、勉強はちんぷんかんぷん。
筋力がないから運動もできないし、剣も振り上げられない。
サンやトロワの評判を聞くたびに、自分と比べて、悲しくなる。
お昼は寮の食堂のおばさんが用意してくれたお弁当。
僕は寮に閉じこもっているから、同じ寮の生徒にまだ会っていない。
だから一緒にお昼ご飯を食べる友達がいない。
同じ学年だけど、ちがうクラスのトロワは、自分とは違う世界の人みたいで、話しかけづらい。
上の学年のサンはなおのこと。
「ボヌール! 一緒にランチしよう、来いよ。」
聞き覚えのあるその声に顔をあげると、トロワ。
「トロワさま、ボヌール様はご友人なのですか?」
クラスメイトが近づいてきた。
「ああ、幼馴染なんだ。俺と、2年のサンと、ボヌールは幼馴染なんだよ。」
あっけらかんとトロワが言うと、すんなり納得して去っていった。
「遠慮するなよ、助け合おうぜ。」
ぼそっと、耳元でトロワが囁いた。
「トロワ!ボヌール!」
陽の当たるガーデンテーブルに、サンが待っていた。
トロワ…の、2歳上の双子のお兄さんたちも一緒にいる。
お弁当を広げて、みんなでごはん。
ノース家とサンダルフォン家の料理人が作って持たせてくれたお弁当は、色彩も綺麗で、おいしくて、この二人が受け入れられて、愛されていることがよくわかる。
お兄さんたちも、トロワのことを普通に可愛がっている。
ぽた…。
ぽたっ。
思いがけず、双眸から雫がこぼれ堕ちる。
「ボヌール?」
サンが、僕の涙をぬぐった。
「俺たち、力になるよ。言えることでいいから、少し、俺たちにも荷物を背負わせてくれないかな?」
やっぱり、ブラッキーお兄ちゃんはやさしい。
「勉強は、ついていけてる?」
首を横に振る。
「家庭教師は?」
横に振る。
「リッシュ辺境伯は何を考えてるんだ!?社会復帰を考えればこそ、いきなり学園に入れられても無理だぞ!?」
アンは、ぷんすか怒りを露にした。
「……まあ、本人じゃないかもよ?辺境伯はボヌールを愛してるんだし。あの家は、後妻さんが仕切っているからね。」
デュークは眉をよせて、顎に手をやりながら、何かを考えた。
「放課後、図書室においで。僕らでよければ勉強を教えてあげるよ。周りには、病弱で寝たきりだったから勉強が遅れてるんだって言えばいいよ。」
ニッコリとほほ笑む。
いいの?
この人たちは、僕のこと、汚いって言わないんだ。
きっと、僕が何をしていたか、彼らは知っているはずなのに。
「こいつら、スパルタだぞ~。だが、腕は保障する。」
トロワは渋い顔をした。
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