何者かになりたかった、だが王子の嫁になりたかったわけじゃない。

竜鳴躍

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王太子の恋と怒り

私はフォール=ハスキー=アルティメット。

このアルティメット王国の王太子である。

陛下である父と母は王族には珍しい恋愛結婚で、たいへん仲が良く、王家によくある側妃もいない。

私には、妹と年の離れた弟がおり、兄弟仲も良好だ。

だが、王家の遠い親戚でもあるアクオス公爵家とその一派が幼少から私に纏わりついてきて迷惑この上なかった…。



あれは私が5歳の時……。



「今日はフォールのお友達を選ぶ場だからね。将来のお嫁さんでもいいよ。」

「はい、おかあさま。」


私たちは変装してお茶会に出席した。
アクオス公爵家とその一派は呼ばずに、王妃主催の無礼講の仮装パーティ。


王家の男は男相手でも子どもをもうけられるため、王妃になるのは男性も多い。
私の母親も男性だ。

綺麗で凛としているカッコイイお母様は、普段は男性とはいえ王妃らしくアクセサリーや刺繍で着飾る。

しかし、今日は身分を隠すため、近衛騎士の装いでお母様は参加していた。
つまり、会場の護衛のフリをしているのだ。

元々、お母様はアクオス公爵家のライバルだったヘリオス公爵家の次男で、お父様の側近の一人だったらしい。
お父様の護衛からお妃になったので、騎士の姿も全く違和感がない。



私は、茶色の鬘を被り、辺境の伯爵家の男の子として出席していた。

王太子として出席すれば、取り繕った姿しか見ることができない。

本当に気心の知れた者を見つけるにはもってこいだった。



隅っこの方では、兄弟らしき3人がお菓子を楽しんでいる。


広いエリアでは、わんぱくそうな男の子が二人、戦いごっこをしている。
一人はおもちゃの剣、もう一人はおもちゃのステッキ。

それを見守るように、眼鏡の男の子が審判の役をしているようだ。


心配そうな女の子たちが様子を窺っている。


私は、彼らの遊びに混ざろうと声をかけた。





どん!!!





突然の衝撃で、私は何が起こったのか理解できなかった。

誰かに強い力で突き飛ばされ、地面に尻もちをついてしまったのだ。




「お前見ない顔だなっ。どこから紛れ込んできたっ!?」


生意気に歪んだ表情。

どうして?ここに呼んでいないのに。

ミルキィ=アクオス公爵令息。



周りの騎士は緊張しているが、子ども同士のけんか。様子を窺っているようだ。


「全く、ここはね、王子様の側近や将来の婚約者を選ぶためのお茶会なんだからね!だからこのボクが呼ばれないなんて手違いなんだから!」


「招待状がないのに来るなんて、礼儀知らずだと思いますよ。」


「郵便事故に決まってるよ!だってボクは公爵家だもん!お前みたいなのはボク知らないよ、ボクが知らない子ってことはお前は爵位の低い家の子だろ!フン、ちょっと可愛い顔をしているかもしれないけど、ボクと比べたら大したことないし、この場には相応しくない!あの子たちと遊ぶなんて身の程知らずだよ!」


「おい、身の程知らずとか決めるのは君じゃないだろう!」

「そうよ、ちゃんと招待をされているんだし、主催者はあなたのお家じゃないでしょう!?」


戦いごっこで遊んでいた子どもたちが、私の周りにやってきて助けてくれる。


「ふーん、そんなこと言っていいの?無礼講かもしれないけどさ、それって建前だってわかんないのかな、馬鹿ばっかだねぇ。そーゆーのを見られてるってわかんない?これはテストなんだよ?王太子に相応しいのはだれか、って……。」


アクオス公爵令息の睨みでぐ、っと子どもたちが黙る。

これは正体を明かすべきなのか………と思ってた時、兄たちとお菓子を楽しんでいた子がこちらにやってきた。



「ねえ、何をそんなに怒っているの?せっかくの場なんだから、みんなで仲よくしようよ。君、だいじょうぶ?」




黒髪黒目の色の白い綺麗な男の子。

兄と思われる二人も綺麗な顔立ちをしているけど、この子が一際輝いている。

スローモーションのようにその子の動きが見える。

頭の中に声が響いてふわふわする。


その子は屈んで、私の手を掴むと、ゆっくりと立ち上がらせてくれて。

洋服の土をパンパンと落としてくれた。



「お洋服、きれいにするね。『クリーン。』」



土汚れが綺麗になる。


「もうだいじょうぶ、きれいになったよ。ねえ、むこうでぼくとあそぼ?」


―――――それがジェニーと私の出会い。

私がジェニーを好きになった瞬間。






私は、ジェニーを婚約者に選ぼうとした。

だが、アクオス公爵家が横やりを入れてくる。

由緒正しい貴族家だが、伯爵家にしかすぎないビューテ伯爵家は、アクオス公爵家に睨まれ、貧乏になっていった。

ビューテ伯爵家を苦しめたくない。
ジェニーに危険を及ぼしたくない。


あいつらのせいで………。あいつらのせいで。





私は婚約を結べないまま、ビューテ伯爵家をそれとなく助けつつ、ジェニーを守った。
そして、少しずつアクオス公爵家以外の勢力をまとめ上げ、アクオス公爵家の力を削ぎつつ、卒業とあわせて婚約を―――――――――。


そう思っていた時に、アクオス公爵家は『媚薬』と『しびれ薬』を作って無理やり私と既成事実を作ろうとしたのだった。




もう許せない!!!!!!





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