何者かになりたかった、だが王子の嫁になりたかったわけじゃない。

竜鳴躍

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街へ行きたい

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外交文書の翻訳をして、貴族からの申請や国民からの陳情に対する回答に、参考資料見つけて写本をつけて私見を添えたメモを重ねて。

なかなか順調だと思う。


きっと妃を辞めても何かしら仕事はもらえそう!


「ははは、王太子妃様のお陰で仕事が捗って助かります。お妃でなければうちで雇いたかったですよ。」

眼鏡のおじ様が柔らかく微笑む。
前の宰相さんで前グリーンフィールド侯爵だ。
引退後は周3で文官の取りまとめだったり指導役をしているらしい。


「そんな、俺なんか。だって俺、文官の試験を受けているのに合格通知もらえなかったのですよ。」

「ははは、合格通知は出したかったのですがね、あまりに妃殿下が文武両道で優秀でいらっしゃるので、騎士団と取り合いになりましてね。なかなか決着がつかなかっただけなんですよ。そうしたら殿下からお妃にすると通達がありましたもので…。」


えっ。


「それって……。俺がここに来たあと……?」


「いえ。それより1か月ほど前だったでしょうか。元々、殿下は妃殿下を妃にと心に決めていたのですね。微笑ましいです。」



へぇ…………。


俺って、そんなにデキナイ子じゃなかったんだね。

あんなに悩んでいたのに…………。


芸能界だって、殿下が手を回してただなんて。



ふぅん……。


そっかぁ。


そうなんだ………


俺の知らないところで昔っから俺を妃にするために根回ししてたんだ…。

だからあんなにお父様は微妙な表情だったんだ。


王家からのお話だなんて断れるわけがないよね。
王家のお陰でアクオス公爵家から嫌われて貧乏になったけど王家のお陰で借金せずに済んでたわけだし。



でもさ、俺は別にお妃になりたかったわけじゃないよ。

自分の能力で認められたかった。

活躍したかった。


殿下はかっこいいとは思うけど、子犬みたいなところは可愛いと思うけど。
嫌いじゃないけど、ちょっと好きだけど、嫌いだよ。




ちょっと、いつか。城を離れたい。





「殿下。街へ行きたいのですが。」

一人で街へ行くと心配されるので、断りを入れる。

子犬のような殿下は尻尾を振ってデートだと喜んだ。


できれば、治安がよくて、一人でのんびりできるところが良いな。


事務仕事でお小遣いを溜めたら、自分の小さな家を買おう。


冒険者をやるのも楽しそうだ。



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