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貴方が欲しい
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「あぁあぁあ、アミュレット、お前はボクをっ。助けてくれるのか、ありがとうっ!そこまで僕を愛してくれていたのに、偽りの愛に騙されて」
「アクセル殿下のことはこれっぽっちも好きじゃないし、もう婚約者じゃない!勘違いしないで!だからといって命を奪われるのは違うって思うだけだから!」
あの綺麗な顔をぐしゃぐしゃにして縋るようなアクセルを俺は一蹴して、目の前の凶人の腕を止めるのに集中する。
なんだ、あの目。
気持悪い…。
「アミュレット様!」
会場の人間を脱出させることはできた。
誘導を終えたシュナイダーが駆けつける。
「アミュレット、僕も加勢するよ!」
城のスタッフや来場者を転移魔法で一先ず避難させたハピネスお兄様。
「僕もできることをしよう!」
そこに、スズナ王国のルシェル殿下もやってきた。
「お兄様、陛下たちは?」
「ここにいるのはアクセルとゴウマン一派だけ。陛下たちも避難させたよ。ブレーキは……、国民を守るために城の外で騎士団と動き出した。」
よかった。
「ああ、アヴァロン兄さま。なんていう善き日だろう、兄さまの生まれ変わりとこうして出会えるなんて。このゴミの婚約者がお兄様だなんて気付かなかったよ。もっと早く気づいてたら、このゴミの体を乗っ取って僕が兄さまの伴侶になれたのに!」
なに?
何を言っているんだろう。この男…。
黒い闇だまりのような眼が爛々と鈍く光り、焦点は真っすぐ粘着質に俺を見つめる。
「アヴァロン様はかつての妖精王、僕たちの先祖。こいつは頭がおかしいのか、それとも…。」
じりじり近寄ってくる男に向けて、お兄様は結界を張ってくれた。
「は、半端な混ざりものが!お兄様の貴き血が人間なんかと混ざったせいで、醜いものだ!お兄様、お兄様は別だよ?」
「俺はアヴァロン様じゃない!お前は何者だ!」
「うふふ、僕はモルヒネ。アヴァロンお兄様の双子の弟だよ。忘れたの?ひどいなぁ。愛しているよ、お兄様。今度こそお兄様はずっとずぅっと僕のもの。永遠に一緒だよ…。」
背筋が寒くなる。
本能が拒絶する。
「……くぅううう!!!!!!」
パリンとモルヒネが結界を突破し、蔦を増やす。
地面が揺れ、城の白い床は歪に割れて植物を生やす。
「双子でも、同じ腹から生まれても、愛しくても、そんなやり方は愛とは呼ばない!」
ルシェル殿下の持つ小さな筒のついた金属の塊が、竜の咆哮のような音をあげ、煙や焦げ臭さとともに何かを打ち込む。
だがその黒い男は――――――――――
それをものともせず突破し、俺の眼前に。
捕まった、と思った瞬間。
その腕は落ちた。
目の前に銀色の糸。
「アミュレット様は渡さない!」
ああ、嬉しい。
シュナイダー。
愛している。
表情に出てしまったのかもしれない。
黒い男は不機嫌そうに眼を冷ややかに細め、そしてシュナイダーを掴んだ。
「また兄さんは人間を選ぶのか!ならば忌々しいこの男を始末してやる!」
「アクセル殿下のことはこれっぽっちも好きじゃないし、もう婚約者じゃない!勘違いしないで!だからといって命を奪われるのは違うって思うだけだから!」
あの綺麗な顔をぐしゃぐしゃにして縋るようなアクセルを俺は一蹴して、目の前の凶人の腕を止めるのに集中する。
なんだ、あの目。
気持悪い…。
「アミュレット様!」
会場の人間を脱出させることはできた。
誘導を終えたシュナイダーが駆けつける。
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よかった。
「ああ、アヴァロン兄さま。なんていう善き日だろう、兄さまの生まれ変わりとこうして出会えるなんて。このゴミの婚約者がお兄様だなんて気付かなかったよ。もっと早く気づいてたら、このゴミの体を乗っ取って僕が兄さまの伴侶になれたのに!」
なに?
何を言っているんだろう。この男…。
黒い闇だまりのような眼が爛々と鈍く光り、焦点は真っすぐ粘着質に俺を見つめる。
「アヴァロン様はかつての妖精王、僕たちの先祖。こいつは頭がおかしいのか、それとも…。」
じりじり近寄ってくる男に向けて、お兄様は結界を張ってくれた。
「は、半端な混ざりものが!お兄様の貴き血が人間なんかと混ざったせいで、醜いものだ!お兄様、お兄様は別だよ?」
「俺はアヴァロン様じゃない!お前は何者だ!」
「うふふ、僕はモルヒネ。アヴァロンお兄様の双子の弟だよ。忘れたの?ひどいなぁ。愛しているよ、お兄様。今度こそお兄様はずっとずぅっと僕のもの。永遠に一緒だよ…。」
背筋が寒くなる。
本能が拒絶する。
「……くぅううう!!!!!!」
パリンとモルヒネが結界を突破し、蔦を増やす。
地面が揺れ、城の白い床は歪に割れて植物を生やす。
「双子でも、同じ腹から生まれても、愛しくても、そんなやり方は愛とは呼ばない!」
ルシェル殿下の持つ小さな筒のついた金属の塊が、竜の咆哮のような音をあげ、煙や焦げ臭さとともに何かを打ち込む。
だがその黒い男は――――――――――
それをものともせず突破し、俺の眼前に。
捕まった、と思った瞬間。
その腕は落ちた。
目の前に銀色の糸。
「アミュレット様は渡さない!」
ああ、嬉しい。
シュナイダー。
愛している。
表情に出てしまったのかもしれない。
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