30 / 42
真夏の夜の夢
しおりを挟む
「アヴァロンお兄様かっこいい!お兄様は凄い!」
アヴァロンお兄様は妖精の王様になれる特別な妖精。
僕たちは同じ神葉樹に生った珍しい双子の実から生まれた。
ペールグリーンの髪は艶やかで、水色の瞳は涼やか。小柄でとても可愛らしく、そして綺麗で。
桃色の髪とアメジストの瞳の僕とは何もかも違う。
そして、癒しや守りの力に特化した他の妖精と違って、いざとなれば外敵を排除するための力を持っていた。
いうなれば、大地や自然の怒りを体現した力を。
もちろん、普通の妖精のように癒しの魔法が使えないわけではないが、他と比べると能力は低かった。
妖精の国に紛れた巨大魔獣を風の刃で仕留めたお兄様は、僕に振り向く。
「凄いって言うけど、モルヒネの方が凄いと思うよ?僕以外の妖精たちは対象が目視できる範囲にいなくても回復させることができるし、転移魔法も使える。でも、モルヒネは本気を出せば世界中の人を癒せるんじゃない?」
「世界中の人をっていうけど、僕は大切な人だけ守れたらいいよ。人間には悪い人もいるっていうよ。森を荒らして、人間同士で醜い戦争なんかして。そういうのが嫌だから僕たちはこの森から出ないんじゃないか。」
「悪い人もいるけど、きっと素敵な人もいると思うけどなぁ。はは、だから私は変わっているのかな。さ、仕留めたこいつを収納してくれないか?命は無駄にできないからね。みんなでいただこう。」
お兄様に言われて、しぶしぶと獲物を厨房に転移させる。
たまにはお肉を食べないと、栄養バランスがとれないからちょうどいい。
「あ!」
お兄様がいきなり声を張るので、驚いて目を凝らした。
僕がそれを見つけるよりすぐ、お兄様はそれに駆け寄る。
汚い、血の塊。
それが、4つ。
「……………ぅ」
「モルヒネ、まだ息がある!回復を!」
「やだよ、それ人間だよ。それにただの傷じゃない。刀傷じゃないか。訳ありでしょ。早く森の外に追い出そうよ。迷い込んだんだろうけど、巻き込まれたくない。」
「…………いいよ、それなら。」
えっ。
攻撃に特化したお兄様が回復魔法、特に瀕死の重傷を治療しようと思ったら普通のやり方では治療できない。
「なんでなんでなんで…っ。お兄様がそこまでやること!」
お兄様の体が光り、その躰から何から抜けていく。
そして、その光が彼らへ。
「……………うぅ」
「よかった!気づきましたか!」
彼らはオオバコ王国に支配された亡国の生き残りの王子とその従者だった。
彼らを救うためにお兄様は妖精の永遠の寿命を失った。
憎い。
憎い。
銀髪に灰色の瞳の元王子の妻にお兄様はなった。
従者たちも元王子も妖精の世界に馴染んでいく。
お兄様は僕のものなのに。
憎しみで力が溢れ、僕は暴走した。
妖精たちは人間に彼らとの間に出来た子を託し、僕を止めようと抗って散った。
そして、お兄様まで僕を―――――――。
神葉樹に排除されるほど闇を深めた僕は、ついに悪魔と化した。
人間なんて滅んでしまえ。
お兄様に匹敵する力を手に入れた。
癒やしの力と引き換えにして。
悪魔の力が馴染んだオオバコ王国に巣食い、戦争を何世紀にもわたって誘導した。
アヴァロンお兄様は妖精の王様になれる特別な妖精。
僕たちは同じ神葉樹に生った珍しい双子の実から生まれた。
ペールグリーンの髪は艶やかで、水色の瞳は涼やか。小柄でとても可愛らしく、そして綺麗で。
桃色の髪とアメジストの瞳の僕とは何もかも違う。
そして、癒しや守りの力に特化した他の妖精と違って、いざとなれば外敵を排除するための力を持っていた。
いうなれば、大地や自然の怒りを体現した力を。
もちろん、普通の妖精のように癒しの魔法が使えないわけではないが、他と比べると能力は低かった。
妖精の国に紛れた巨大魔獣を風の刃で仕留めたお兄様は、僕に振り向く。
「凄いって言うけど、モルヒネの方が凄いと思うよ?僕以外の妖精たちは対象が目視できる範囲にいなくても回復させることができるし、転移魔法も使える。でも、モルヒネは本気を出せば世界中の人を癒せるんじゃない?」
「世界中の人をっていうけど、僕は大切な人だけ守れたらいいよ。人間には悪い人もいるっていうよ。森を荒らして、人間同士で醜い戦争なんかして。そういうのが嫌だから僕たちはこの森から出ないんじゃないか。」
「悪い人もいるけど、きっと素敵な人もいると思うけどなぁ。はは、だから私は変わっているのかな。さ、仕留めたこいつを収納してくれないか?命は無駄にできないからね。みんなでいただこう。」
お兄様に言われて、しぶしぶと獲物を厨房に転移させる。
たまにはお肉を食べないと、栄養バランスがとれないからちょうどいい。
「あ!」
お兄様がいきなり声を張るので、驚いて目を凝らした。
僕がそれを見つけるよりすぐ、お兄様はそれに駆け寄る。
汚い、血の塊。
それが、4つ。
「……………ぅ」
「モルヒネ、まだ息がある!回復を!」
「やだよ、それ人間だよ。それにただの傷じゃない。刀傷じゃないか。訳ありでしょ。早く森の外に追い出そうよ。迷い込んだんだろうけど、巻き込まれたくない。」
「…………いいよ、それなら。」
えっ。
攻撃に特化したお兄様が回復魔法、特に瀕死の重傷を治療しようと思ったら普通のやり方では治療できない。
「なんでなんでなんで…っ。お兄様がそこまでやること!」
お兄様の体が光り、その躰から何から抜けていく。
そして、その光が彼らへ。
「……………うぅ」
「よかった!気づきましたか!」
彼らはオオバコ王国に支配された亡国の生き残りの王子とその従者だった。
彼らを救うためにお兄様は妖精の永遠の寿命を失った。
憎い。
憎い。
銀髪に灰色の瞳の元王子の妻にお兄様はなった。
従者たちも元王子も妖精の世界に馴染んでいく。
お兄様は僕のものなのに。
憎しみで力が溢れ、僕は暴走した。
妖精たちは人間に彼らとの間に出来た子を託し、僕を止めようと抗って散った。
そして、お兄様まで僕を―――――――。
神葉樹に排除されるほど闇を深めた僕は、ついに悪魔と化した。
人間なんて滅んでしまえ。
お兄様に匹敵する力を手に入れた。
癒やしの力と引き換えにして。
悪魔の力が馴染んだオオバコ王国に巣食い、戦争を何世紀にもわたって誘導した。
26
あなたにおすすめの小説
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます
まんまる
BL
メルン伯爵家の次男ナーシュは、10歳の時Ωだと分かる。
するとすぐに18歳のタザキル公爵家の嫡男アランから求婚があり、あっという間に婚約が整う。
初めて会った時からお互い惹かれ合っていると思っていた。
しかしアランにはナーシュが知らない愛する人がいて、それを知ったナーシュはアランに離婚を申し出る。
でもナーシュがアランの愛人だと思っていたのは⋯。
執着系α×天然Ω
年の差夫夫のすれ違い(?)からのハッピーエンドのお話です。
Rシーンは※付けます
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
年下幼馴染アルファの執着〜なかったことにはさせない〜
ひなた翠
BL
一年ぶりの再会。
成長した年下αは、もう"子ども"じゃなかった――。
「海ちゃんから距離を置きたかったのに――」
23歳のΩ・遥は、幼馴染のα・海斗への片思いを諦めるため、一人暮らしを始めた。
モテる海斗が自分なんかを選ぶはずがない。
そう思って逃げ出したのに、ある日突然、18歳になった海斗が「大学のオープンキャンパスに行くから泊めて」と転がり込んできて――。
「俺はずっと好きだったし、離れる気ないけど」
「十八歳になるまで我慢してた」
「なんのためにここから通える大学を探してると思ってるの?」
年下αの、計画的で一途な執着に、逃げ場をなくしていく遥。
夏休み限定の同居は、甘い溺愛の日々――。
年下αの執着は、想像以上に深くて、甘くて、重い。
これは、"なかったこと"にはできない恋だった――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる