あなたがいい~妖精王子は意地悪な婚約者を捨てて強くなり、幼馴染の護衛騎士を選びます~

竜鳴躍

文字の大きさ
29 / 42

愛する人

しおりを挟む
「…………っ、」


視界がだんだんクリアになっていく。




「お目覚めかな?王子様。」

にたりとほほ笑む――――――悪魔。



私の体は鋼の蔦で拘束され、身動きがとれない。


「ここはどこだ。」


見覚えのない白い壁。
カーテンのない窓からは、カラフルな屋根が見える。

……懐かしい。



なんだ。


嫌な予感がする。




「ふふ、わかっているくせに。どう?懐かしいでしょう。」



――――――スズナ王国、か。


「今度はスズナに戦争を起こさせる気か?生憎この国は一筋縄ではいかないぞ?」


「戦争を起こすのは王族だけじゃないでしょう。今回、スズナ王国がオオバコ王国を助けたことで、反発はあるはずだよねぇ?だってこの国の人たち、オオバコがだいっきらいだもの。」


「お前、暴動を―――――――――


ふいにモルヒネが鼻を近づける。



「ふん、まだ匂う。」




私の体、こんな奴に渡しはしない。

愛するアミュレット。


ああ、皆は無事だろうか。












「ブレーキ陛下。」


半壊した城の修理を行っているブレーキは、声の主に振り返り、14歳の少年らしい笑みを浮かべた。

「ハピネス殿下。」

「陛下自ら陣頭指揮をとってらっしゃるのですね。」

「ええ、いつまでもそちらの城にご厄介になっているわけにもいきませんし。この分だと今日中には修繕できるでしょう。幸い城下に被害はありませんでしたし、早く国を動かさないと。」

「えらいですね。それもそうと、昨日の前陛下の演説を聞いて思ったのですが、あれだけの王がどうしてゴウマン侯爵を野放しにしていたのかと。思い切ればもっと早く一掃できたと思いますが。」

「そうなんですが……。おそらく【洗脳】ではなくても、何らかの思考のコントロールは受けていたのかも、と思います。僕も母も何度か進言はしていましたが、侯爵一派の勢力が大きいことから内乱がーとか、それらしい理由をあげては手をこまねいてましたから。」

「成程。そういえば………。陛下は妃を娶るのですか?」


「えっ」



「即位された陛下の側に妃を、と周りは煩いのでは?」


「そ、それは。」


「それはもうやんごとなき身分の綺麗なご令嬢から山ほど届いているのでしょうね。」


かああああと、ブレーキの顔が真っ赤に染まる。



「ま、まだ国がこういう状況でそういうこと、は、その…。それよりハピネス殿下こそ婚約者を決められるのでは??」


そっと一歩、ハピネスはブレーキの隣に立つ。

そして、彼のまだ柔らかさの残る手を握る。


「ブレーキ様。僕は弟とシュナイダーを救出し、あの元凶の悪魔――モルヒネ――を討つためにアミュレットと行きます。危なくなったら転移させるのは僕の役目ですからね。」

「え……。」

「大丈夫。必ず無事に帰ってきますよ。そのために、行くんですから。だから…。4年経ったら、私を妃にしてくれませんか?」

「…………え」

「年上はお嫌でしょうか?私は妖精の末裔ですから、出産可能年齢も純粋な人間より長いので、お世継ぎの出産には問題ないと思うのですが。」


「え、いやいやいやいや。そういうことじゃなく!」

魅力的にハピネスがほほ笑む。

「本当にいいんですか、僕で……。」


「ええ、僕の愛し子。当たり前です。ブレーキは僕に抱かれたかったのでしょうけど、僕が妃になった方がお世継ぎ問題はクリアできるでしょう?」


かああああ、とブレーキは真っ赤になった。


「クローバー王国はどうするんですか…?」

「アミュレットが継げばいいのです。」


妖精王の再来なのだし。

そして、その隣には。王配にはシュナイダーが立つべきだ。



だから、必ずシュナイダーを取り戻さなくては。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます

まんまる
BL
メルン伯爵家の次男ナーシュは、10歳の時Ωだと分かる。 するとすぐに18歳のタザキル公爵家の嫡男アランから求婚があり、あっという間に婚約が整う。 初めて会った時からお互い惹かれ合っていると思っていた。 しかしアランにはナーシュが知らない愛する人がいて、それを知ったナーシュはアランに離婚を申し出る。 でもナーシュがアランの愛人だと思っていたのは⋯。 執着系α×天然Ω 年の差夫夫のすれ違い(?)からのハッピーエンドのお話です。 Rシーンは※付けます

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

前世が教師だった少年は辺境で愛される

結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。 ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。 雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

過労死転生した悪役令息Ωは、冷徹な隣国皇帝陛下の運命の番でした~婚約破棄と断罪からのざまぁ、そして始まる激甘な溺愛生活~

水凪しおん
BL
過労死した平凡な会社員が目を覚ますと、そこは愛読していたBL小説の世界。よりにもよって、義理の家族に虐げられ、最後は婚約者に断罪される「悪役令息」リオンに転生してしまった! 「出来損ないのΩ」と罵られ、食事もろくに与えられない絶望的な日々。破滅フラグしかない運命に抗うため、前世の知識を頼りに生き延びる決意をするリオン。 そんな彼の前に現れたのは、隣国から訪れた「冷徹皇帝」カイゼル。誰もが恐れる圧倒的カリスマを持つ彼に、なぜかリオンは助けられてしまう。カイゼルに触れられた瞬間、走る甘い痺れ。それは、αとΩを引き合わせる「運命の番」の兆しだった。 「お前がいいんだ、リオン」――まっすぐな求婚、惜しみない溺愛。 孤独だった悪役令息が、運命の番である皇帝に見出され、破滅の運命を覆していく。巧妙な罠、仕組まれた断罪劇、そして華麗なるざまぁ。絶望の淵から始まる、極上の逆転シンデレラストーリー!

処理中です...